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私事ではあるが、サンダーを初めて聴いたとき、このサイトを立ち上げて本当に良かったと実感した。 1975年から同じバンドで活動を共にしていたダニーとルークは、北ロンドンの学校の同級生で10代からの親友でもあった。その後長い長い下積み生活を送ったのち、80年代に入りようやく地元で多少の知名度を得るようになる。その時のバンドはテラプレーンと言い、85年に「ブラック&ホワイト」、87年に「ムーヴィング・ターゲット」と2枚のアルバムもリリースしていた。テラプレーンはイギリスのクラブ・シーンではけっこう名を知られるまでに成長したが、サウンドがポップで、あまり将来は期待されてはいなかったようだ。 Daniel 'Don' Bowes ダニエル・ボウズ(ダニー)/ヴォーカル サンダーは89年シングル「シーズ・ソー・ファイン」でデビュー、その後すぐにアイルランドから全英ツアーをスタートさせる。この途中、幸運にもエアロスミスのオープニング・アクトを務める機会があり、彼らをいたく気に入ったスティーヴン・タイラー(vo)が、バックステージに招待してダニーをグレイト・シンガーだと絶賛したらしい。 音源提供・情報協力:フロアさん |
Backstreet Symphony EMI/東芝EMI |
Laughing on Judgement Day EMI/東芝EMI |
The Thrill Of It All Castle/ビクター |
Live Eagle/ビクター |
Giving The Game Away Thunder/ビクター |
ディスコ・グラフィー 1990年 Backstreet Symphony(バックストリート・シンフォニー)*70年代ブリティッシュ・ハードの伝統を継承する名作 (Luke Morley) (Daniel Bowes & Luke
Moeley) |
Rare The Raw And The Rest 東芝EMI |
Open The Window-Close The Door Thunder/ビクター |
Gimme Some EMI/Gold |
Live At Donington Monsters Of Rock 1990 EMI/東芝EMI |
They Think It's All Acoustic papillion |
Behind Closed Doors THunder |
1 . モス・トゥ・ザ・フレイム 2 . フライ・オン・ザ・ウォール 3 . アイル・ビー・ウェイティング 4 . リヴァー・オブ・ペイン 5 . フューチュア・トレイン 6 . ティル・ザ・リヴァー・ランズ・トライ 7 . スタンド・アップ 8 . プリーチング・フロム・ア・チュア 9 . キャッスル・イン・ザ・サンド 10.トゥ・スケアド 11.ボール・アンド・チェイン 12.イット・ハプンド・イン・ディス・タウン <BONUS Track> |
このCD時代には数少ない、手抜き一切無しの素晴らしいアルバムを届けてくれたのが、90年代に登場したブリティッシュ・ハードの継承者サンダーだ。ピーター・カーズンと共作という形ではあるが、ストーム・トーガソン(元ヒプノシスの中心人物)のデザインしたジャケットもなかなかいい。このサード・アルバムは限りなく完璧に近い。ファースト&セカンド・アルバムもなかなかの名盤であったが、特にこのサードでは作曲面で群を抜く完成度を誇っている。曲が本当に良いのだ! 曲のアレンジやプロデュース面では、アンディ・テイラー(元デュラン・デュラン)が加わっていた1st.&2nd.には及ばないものの、そのブリティッシュ独特の重苦しい雰囲気(良い意味での重厚感)は継承しつつ、新たな実験的要素を取り入れているところは、往年のツェッペリンをも思い起こさせる。もし、ツェッペリンがあのまま解散せずにやっていたら、きっといつかはこういったブラス&ファンキー・アプローチもしていたはずだ。自分など、70年代ハードロックにどっぷり浸かっていたリスナーにとっては、パンクによって衰退を余儀なくされた様式美追求型ハードロックの、夢にまで見た続編のようで、涙が出るほどうれしい。他にもツェッペリン似のバンドはいくつもあるが、ほとんどはクローンまたはコピーといった感じで、新鮮さがまるでない。ヘヴィ・メタルとは、もともとそういう音楽なのだと言えばそれまでだが、やはりオリジナルの70年代をリアルタイムで聞いてしまったリスナーとしてはどこか物足りない。しかし、このサンダーは違う。70年代ロックを完全に消化しつつ新たな前進意欲が感じられる、紛れもない本物のハードロックなのだ。 さて、曲紹介に入る前に、もう1つ付け加えておくことがある。それはこのアルバムが、前作から約3年もブランクをおいているということだ。この間には、ルーク・モーリー(g)のホワイトスネイク引き抜き話など、さまざまな問題があったのだが、それが充電期間として良い方向へ作用した。特に曲の良さは、じっくりと作られただけあって、サンダーのアルバム中、文句無く最高だと言える。 1曲目は、6人目のメンバーのような存在アンディ・テイラーも曲作りに参加している。もちろん、そのせいもあって、1st.&2nd.アルバムで聴かせた独特のサンダー・サウンドを一番残している曲でもある。ルーク自身の曲紹介では、ブラック・サバスに影響されたと書いてあったが、どうもツェッペリンの「カシミール」あたりの、インド音楽っぽい影響の方が強いようだ。2.は大胆にブラス(ホーン系の楽器)を使ったファンキー調の曲。ブラス自体は前作でも取り上げられていたが、その時はエアロスミス風な使い方で、あくまでもリズムは"ROCK"していた。ところがここでは、ハード・ファンキー・ロックというような感じで、かつてのファンキー路線ディープ・パープルなどよりも完成度は高い。このあたりは彼らの真骨頂といったところか。3はソウル系バラードのような曲で、デイヴィッド・カヴァーデイルにも似たダニエル・ボウズ(vo)の声とブルージーなルークのギターが一番冴えわたっている曲でもある。5は個人的に最も好きな曲。初期のツェッペリンを想わせる、スワンプ・ミュージックやカントリーからの影響が色濃いイントロに、インディアン・ドラムとパーカッションが加わり、いっそうエスニックな雰囲気が漂う。途中から急にハードになる展開もドラマティックだ。10.は、ジェームス・ブラウンばりのファンキーな曲。女性コーラスまで入り、曲前半は本物のファンキー・ミュージックさながらだ。後半のどうにもロックらしいギター・ソロでホッとするのは自分だけだろうか・・・。 尚、ボーナス・トラックには、2nd.アルバムに入っていた「ロウ・ライフ・ハイ・プレイセス」のライヴ・バージョンが収められているが、これもなかなかいい。ベテラン・プレイヤー(実は70年代からプロとして活動していた)達らしく、ライヴでの演奏も盛り上げ方も上手く、確かな実力が十二分に伝わってくる。(HINE) |