ジャケットの名盤を手がけた著名アーチスト・ファイル

File No.14
STORM THORGERSON ストーム・トーガソン

1944年生まれのイギリス人。ケンブリッジ・ハイスクール・フォー・ボーイズでは、ロジャー・ウォーターズ(元ピンク・フロイド/b)と同級生で、シド・バレット(元ピンク・フロイド/g,vo)とも友人の間柄であった。その後レスター大学で英文学の学士号を受け、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートへも進学。そこでフィルム&テレビの修士号も取得している。その後のヒプノシスでの活躍はFile No.3のページ参照。1983年にヒプノシスを解散後、同じ3人でグリーンバック・フィルムという映像会社を作り、映画会社を目指すが、2年あまりのうちに倒産。その会社では、ピンク・フロイドの他、ロバート・プラント、ポール・ヤング、ニック・カーショウ、イエスなどのミュージック・ビデオを製作していたらしい。会社倒産後、トーガソンはまたカヴァー・アートの仕事に戻り、精力的に活動をつづけている。


Pink Floyd/Delicate Sound Of Thunder
1988年 EMI/Sony

Thunder/Laughing On Judgement Day
1992年 Geffen/東芝EMI

Alan Parsons/Try Anything Once
1993年 Arista

Catherine Wheel/Like Cats And Dogs
1996年 Mercury

Dream Theater/Once In Livetime
1998年 Electra/East West

Phish/Slip Stitch And Pass
1997年 Electra

The Cranberries/Bury The Hatchet
1999年 Island

トーガソンは、1人で仕事を再開した80年代後半にも、カンサスやマイク・オールドフィールドなどのジャケットを手がけているが、どうも精彩を欠いていた。この時期はまだ会社の倒産によるショックから立ち直っていなかったのだろうか?それともLPサイズからCDサイズへの頭の切り替えがうまくいかなかったのか、いずれにしろ、本来の力を発揮するようになったのは90年代に入ってからのことだ。しかしながら、さすがにピンク・フロイドのアルバムだけは、その時期においてもすばらしいものを残している。上のアルバム「光〜パーフェクト・ライヴ」や「鬱(うつ)」がその頃の物だ。
最近では、完全にCDサイズにも慣れたようで、小さくてもはっきりと分かるシンプルなものが多くなった。そういう意味ではヒュー・サイムのものと似てきた印象も受けるが、はっきりとした違いは、トーガソンはあくまでもアナログ人間であり、巨大オブジェなども実際に作って撮影した物が使われているため、どことなくほのぼのとしているところだ。デジタルでは決して出せない、人間的なぬくもりと安心感のような空気が漂っている。また、特筆すべきは、構図の巧みさで、これは今にはじまったことではないが、近年シンプルな構図になったことで、よりいっそう巧さが際だつようになった。
例えば、一番右下にあるクランベリーズのものなどは、人間と目玉のオブジェをわざと隅に配置することで、追いつめられているような空気感を出しているわけだ。また、その隣のフィッシュのものでは、大きな毛糸オブジェを上に配置し不安定にすることで、毛糸が迫ってくる様子を伝え、さらに人間と糸の影を入れることで、飛び跳ねながらすごい勢いで逃げている状況をコミカルに強調している。実際には、太陽の位置はもっと上にあるはずなので、影がこんなに横に出るはずはないのだが(もし太陽の位置がこんなに低ければ夕日か朝日で、空が赤く染まっているはず)、そういった効果を計算に入れた上で、後から影を入れたのだろう。さすがとしかいいようがない!