懲りない面々
このバンドは元ミラー・ブルース・バンド(スティーブ・ミラー・バンドの前身)〜エレクトリック・フラッグのバリー・ゴールドバーグ(kb)とポール・バターフィールド・ブルース・バンドを脱退後、アル・クーパーとのスーパー・セッションやエレクトリック・フラッグを結成と精力的に活動していたものの、しだいにドラッグに溺れボロボロになっていたマイク・ブルームフィールドがエレクトリック・フラッグ再結成に向け準備していたことから始まった。
ここに既にマルチ・セッション・プレイヤーとして活躍していたレイ・ケネディを加えたことからMCAレコードが目を付け、スーパー・グループとして売り込もう目論み他のメンバーを集めていった。
そのメンバーとは、ヴァニラ・ファッジ解散後、カクタス〜ベック・ボガート&アピスと即席グループを渡り歩き、またもやこの即席スーパー・グループの誘いに乗ってしまったドラマーのカーマイン・アピスとブラインド・フェイス〜トラフィック〜ファミリーを渡り歩いたリック・グレッチという迷える大物達だ。
まあこの手の即席スーパーグループは当初から運命の果ては見えていたが、全員がセッション・マンとしても一流であったことから、サウンド的にはなかなかイケている。
こうして1976年に結成された“KGB”のオリジナルメンバーは、
Ray Kennedy レイ・ケネディ/ヴォーカル
Carmine Appice カーマイン・アピス/ドラムス、ヴォーカル
Barry Goldberg バリー・ゴールドバーグ/キーボード、ヴォーカル
Mike Bloomfield マイク・ブルームフィールド/ギター
Rick Gretch リック・グレッチ/ベース・ギター
そもそもMCAレコードが無理矢理一儲けしようという企みによって生まれたバンドなので、レコーディングも悲惨なもので、なんとブルームフィールドのギター・パートは後から別の場所で他の楽器トラックに合わせてオーヴァーダビングする形で録音されている。
しかし、出来上がったファースト・アルバム「KGB」は、一部音がかみ合っていない感じで、ジャズ、ブルース、ロック、どっちつかずの中途半端さだが、ブルームフィールドのスライド・ギターはまずまずの出来で、アメリカではMCAのもくろみ通りシングル「Sail
On Sailor」(ビーチボーイズのカヴァー曲)と共にこのアルバムは50万枚の好セールスを記録した。このセイル・オン・セイラーという曲はもともとビーチボーイズのブライアン・ウィルソンとレイ・ケネディの共作ということもあり、アルバム中1番の出来で、原曲よりもブルージーな感じがなかなかいい。こういう曲を聴かされると、なるほどKGBのメンバー1人1人の技量の巧みさが並でないことがわかる。
この後、バンドはジョー・コッカーと共にツアーに出るが、すでにブルームフィールドの姿はなかった。
同年セカンドアルバム「Motion」もキッスのアルバムで知られるプロデューサーKenny Kernerのもとで制作されリリースするが、この時のメンバーは、
Ray Kennedy レイ・ケネディ/ヴォーカル
Carmine Appice カーマイン・アピス/ドラムス、ヴォーカル
Barry Goldberg バリー・ゴールドバーグ/キーボード、ヴォーカル
Ben Schultz ベン・シュルツ/ギター
Greg Sutton グレッグ・サットン/ベース・ギター
とギターとベースが入れ替わっている。シュルツはバディ・マイルスのアルバムに参加していたことで知られ、サットンはボブ・ディランのバック・バンドを努めていた。このアルバムはまったく売れず、日本にも入ってきたと思われるが、ジャケットも思い出せないような印象の薄いものであった。
このセカンド・アルバム、つい先日入手して聞いてみた感じでは、当然ながら残されたレイ・ケネディとカーマイン・アピス色が強くなり、ファンキーっぽく、ヴォーカルを全面に押し出したサウンドに変化している。
メンバー達の行方
レイ・ケネディはもともとマルチ・プレイヤーであり、いろんなアーチストのアルバムへ、ギター、ベース、キーボード、ドラムなどのプレイヤーとして参加している。また作曲家としてもドン・ヘンリー(ds/イーグルス)に曲を提供したり、過去にはフリートウッド・マックのアルバム・プロデュースやエンジニア、フォトグラファーとしても活躍している。80年には「Ray
Kennedy」、92年には「Guitar Man」というAOR系のソロ・アルバムをリリースしている。
カーマイン・アピスはジャズ・フュージョン界の売れっ子プレイヤー、スタンリー・クラーク(b)のアルバムに2枚つづけて参加したあと、80年にエリック・カルメンのアルバムへ参加、85年にはジェフ・ベックの「フラッシュ」へゲスト参加するなどセッションマン的な活動が多い。99年には日本の代表的ギタリスト“Char”、旧友ティム・ボガート(b)とBBAならぬCBA(チャー・ボガート&アピス)というプロジェクトを組み来日公演も果たしている。そして2000年「Guitar
Zeus Japan」というアルバムをリリース。(ここにはCharもゲスト参加している)
リック・グレッチはこの後77年にジンジャー・ベイカー(ds/元クリーム)のソロ・アルバムに参加した後は、84年にダニー・ペイロネル(元ヘヴィー・メタル・キッズ、UFO/kb)やベイカーといっしょにBANZAIというバンドを結成したぐらいで目立った活動はなく、90年静かにこの世を去っている。
ブルームフィールドはその後ソロ・アルバムを何枚か出すがすでにドラッグにより廃人状態で81年に他界。
ゴールドバーグはその後ザ・バリー・ゴールドバーグズ・リユニオンというブルース・バンドを結成して、今もソロやバンド名義で活動中。
その他のメンバー達はその後目立った活躍はしていない。(HINE) 2001.5更新
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