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アイルランドの熱血ギタリスト ぼろぼろに塗装が剥げたストラトキャスター、チェックのダンガリーシャツに色の落ちたジーパン、エフェクターをまったく使わないギター一本の演奏スタイル・・・すべてがソリッドな男だった。 第1期テイスト(1966〜1968) Rory Gallagher ロリー・ギャラガー/ギター、ブルースハープ*、ヴォーカル 第2期テイスト(1968〜1970) Rory Gallagher ロリー・ギャラガー/ギター、ブルースハープ*、ヴォーカル 記憶に残るギタリスト、ロリー・ギャラガー テイスト解散後ソロ名義になったロリーであったが、実際のところ、トリオ編成のバンド形式を保っており、第3期テイストといった感じで71年にソロ・アルバム・デビューを果たしている。ベースはジェリー・マッカヴォイ、ドラムスはウィンガー・キャンベル。 その後、クリサリス・レーベルへ移籍した彼は、よりポップでハードな方向へとサウンドを変化を見せる。中でも76年リリースのアルバム「コーリング・カード」では、ディープ・パープルのロジャー・グローバー(b)をプロデューサーに迎え、ハード・ロックに挑戦した曲「ムーンチャイルド」などで話題を呼んだ。 *ブルースハープ…ブルース・ミュージックで主に使われるハーモニカの一種 (HINE) 2001.3 |
Taste Polydor/ポリドール |
On The Boards Polydor/ポリドール |
Live At Isle Of Wight Polydor/ポリドール |
Rory Gallagher Polydor/アルファ |
Deuce Polydor/アルファ |
Live In Europe Polydor/アルファ |
Blue Print Polydor/アルファ |
ディスコ・グラフィー <TASTE> 1969年 Taste(テイスト)*第2期テイストのデビューアルバム <RORY GALLAGHER> 1971年 Rory Gallagher(ロリー・ギャラガー)*自らプロデュースし、自分のやりたいようにやってみたソロ・デビュー作 |
Tattoo Chrysalis/TDK |
Against The Grain Chrysalis/アルファ |
Calling Card Chrysalis/アルファ |
Photo Finish Chrysalis/アルファ |
Jinx Chrysalis/アルファ |
Diffender Capo/アルファ |
Fresh Evidence IRS |
SIDE-A 1.クレイドル・ロック Cradle Rock 2.アイ・ワンダー・フー I Wonder Who (Who's Gonna Be Your Sweet Man) 3.いれずみの女 Tattoo'd Lady SIDE-B 1.アルコール中毒 Too Much Alcohol 2.鳥が飛ぶように As The Crow Flies 3.100万マイルも離れて A Million Miles Away SIDE-C 1.ウォーク・オン・ホット・コールズ Walk On Hot Coals 2.フーズ・ザット・カミング Who's That Coming SIDE-D 1.ストンピン・グラウンド Back On My (Stompin' Ground) 2.ジャスト・ア・リトル・ビット Just A Little Bit |
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実はこのアルバム、74年(一部73年)にロリーが紛争中の祖国アイルランドで行ったツアーを、映画監督のトニー・パーマーが撮影したドキュメンタリー映画のサントラ盤らしい。映画自体はあまり話題にならず、放映されたのかさえも定かではない。遠い日本にいると、あまりアイルランド紛争のことなどは伝わってこななかったが、このアルバムやウイングスの「アイルランドに平和を」などで知り、ずいぶん長い間紛争がつづいていたんだなと、改めて認識し直したものだ。このアルバムは、そうした状況の中、なんとか一瞬でも悪夢を忘れさせてあげたいという、ロリーの優しい想いと情熱がひしひしと伝わる傑作ライヴと言えるだろう。 ロリーのライヴではいつもそうだが、1曲目からハイテンションだ。この1曲目は途中からボトルネック奏法に切り替わるが、これがまた巧い!ボトルネックをはめたまま、通常のスライド奏法をしたり、はめていない指で、和音や短音を普通に弾いたりと自由自在。名手デュアン・オールマンをも彷彿とさせる。2曲目はマディ・ウォーターズのカヴァー曲で、イントロからピッキング・ハーモニクス奏法とミュート奏法の併せ技がキマるブルース・ナンバー。間奏では、ヴァイオリン奏法も飛び出すなど、エフェクター類をまったく使わず、実に多彩な表現をギター1本で弾き出す。B-2はドブロ・ギターに持ち替えるが、エレクトリック同様、スリリングなギター・プレイが冴え渡る。途中にはブルース・ハープも巧みに吹きこなし、ロリーの1人舞台といったところか・・・。B-3のイントロはアルペジオとオクターヴ奏法から入り、ハーモニクスでしめる。また途中のソロでは、ギター1本で出せる音の限界にチャレンジするかの如く、惜しげもなくあらゆるテクニックを披露。フット・ペダルも使わず、ワウワウ効果をギター側の音質つまみで出すのは、ジェフ・ベックとロリーぐらいなものだろう。C-1は10分を越す大作。ギター・ソロでは、流れるようなミュート奏法の速弾きを披露する。こういった弾き方は、正確なピッキングが要求され、左手だけで弾くことに慣れたヘヴィメタ系のギタリストには、できない芸当だ。また、ピッキング位置も微妙に変えて、トーンを変化させることにより、細かいニュアンスまで伝えようとしているのがわかる。D-1とD-2はセッションによるオマケ・テイクだが、CD盤ではD-2が省略されている。もともとオマケなので無くても大きな影響はないが、やはり元のレコードより曲が少ないというのは寂しい限りだ。1枚に無理矢理詰め込まなくてもよかったのではないだろうか?中途半端に1曲だけ入れるのなら、ヴォルテージが最高潮に達したC-2で終わっていた方が、まだアルバムとしてのまとまりはあったような気がする。CD化に対して、もうひとこと言わせて貰えば、ジャケットがあまりにもお粗末。LPでは地がシルヴァーで印刷されていたが、CDでは、ペラペラの紙にただのグレー印刷。もう少しなんとかならなかったものか・・・・。 いずれにしても、スタジオ・レコーディングでは決して味わうことが出来ない、ロリー本来の魅力を充分に伝えるライヴ・アルバムの傑作。ロリーの音楽には、オーヴァーダビングもエフェクターもまったく必要ない。ありのままを伝えるライヴが一番の演出なのだ。(HINE) |