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SOME THINGS NEVER CHANGE 冒頭見出しは、彼らの10枚目のスタジオ・アルバムのタイトルにも使われた「何も変わらない」という意味の言葉だが、これこそスーパートランプの歴史を言い表す最適な言葉でもある。 1968年英、ギルバート・オサリバンが在籍したことでも知られる、元リッグズ・ブルースのリチャード・デイヴィスが、ロジャー・ホジソンと出逢って結成したザ・ジョイントがスーパートランプの起源となる。そして69年ラッキーなことに、ドイツのミュンヘン公演で彼らのライヴを見たオランダの大富豪スタンレー・オーガスト・ミエセガエス(通称サム)が、彼らに資金援助し新しいバンドを結成するよう進言したことからスーパートランプが誕生する。 Roger Hodgson ロジャー・ホジソン/ヴォーカル、ギター、ピアノ このメンバーでじっくり時間をかけリハーサルした彼らは、74年、プロデューサーにデヴィッド・ボウイやディーヴォなど異色アーチストを手がける大物、ケン・スコットを迎え、サード・アルバム「クライム・オブ・ザ・センチュリー」を完成させた。 |
Supertramp A&M/ポリドール |
Indelibly Stamped A&M/ポリドール |
Crime Of The Century A&M/ポリドール |
Crisis? What Crisis? A&M/ポリドール |
Even In The Quietest Moments A&M/ポリドール |
Paris A&M/ポリドール |
ディスコ・グラフィー 1970年 Supertramp(スーパートランプ)*すでにブルース、ジャズ、プログレなどを取り入れたバラエティに富む内容。 |
Famous Last Words A&M/ポリドール |
Brother Where You Bound A&M/ポリドール |
Free As A Bird A&M/ポリドール |
Some Things Never Change EMI/Chrysalis/東芝EMI |
Is Everybody Listening? EMI/東芝EMI |
Slow Motion EMI/東芝EMI |
ブレックファスト・イン・アメリカ |
SIDE-A 1.あこがれのハリウッド 2.ロジカル・ソング 3.グッドバイ・ストレンジャー 4..ブレックファスト・イン・アメリカ 5.オー、ダーリン |
SIDE-B 1.ロング・ウェイ・ホーム 2.すべては闇の中 3.神経衰弱を吹き飛ばせ 4.退屈な会話 5.チャイルド・オブ・ヴィジョン |
スーパートランプが本当の意味で世界的に認められたのは、このアルバムが全米1位に輝いた瞬間だろう。それまでどちらかというと、イギリスやヨーロッパでのみ人気があり、日本やアメリカではほとんど話題にもならなかった。それがチャート1位となり、しかも、その1位を6週間もキープしたと聞けば、全米はもとより、日本や諸外国でも騒がれないはずはない。ちなみにこのアルバムのチャート記録は、79年度のベスト3(1位はイーグルスのロングラン、2位はZEP.のインスルージアウトドア)に入るもので、70年代全体でも22位(ZEP.のフィジカルグラフィティやドゥービーブラザーズのミニットバイミニットを上回る)に入る快挙であった。また、シングルでも「ブレックファスト・イン・アメリカ」(全英9位)、「ロジカル・ソング」(全英7位/全米9位)、「グッバイ・ストレンジャー」(全米15位)、「ロング・ウェイ・ホーム」(全米10位)などが連続で大ヒットし、彼らはあっという間に世界的なビッグ・スターとなっていた。 そして、そのアルバムの内容は一般リスナーからコアなファンまでが楽しめる、期待を裏切らない名盤だ。やっていることは基本的に以前からさほど大きく変わったところはないのだが、よりポップでライトな感じを強調したサウンド作りをしたため、非常にわかりやすい印象を受ける。これがアメリカ人好みのサウンドであろうことは、彼らもよく研究したのだろう。名盤というのは、何故かジャケットもまた名作であることが多い。その例に漏れず、このミック・ハガティがデザインしたアートワークも、グラミー賞を受賞したほどすばらしい。一度見たら二度と忘れない強烈なインパクトを放ち、内容と同じようにとてもポップでユーモラスなものに仕上がっている。 また、コアなファンをも納得させる、さらに広がりをみせた音楽性と歌詞。このアルバムでは、彼ら独自の視点でイギリス人から見たアメリカの姿をユーモラスに描き出している。曲のタイトルを見ただけでも、何やら面白そうだというのはお分かりいただけよう。 特にすばらしいのは、LPではA面に当たる1曲目〜5曲目の流れ。それまで以上にホジソンとデイヴィスのボーカルの掛け合いが増え、さまざまな楽器や小道具的SEがこれでもかと飛び出す。まるでミュージカルでも見ているようだ。 一方、B面はじっくりと聴かせる曲が多く、聴き込むほどに味が出る。リリースされた当時聞き逃したロック・ファンも、愛聴していた・スーパートランプ・ファンにも、ぜひ現在のリマスターされた良い音で、もう1度このアルバムをじっくり聞き直していただきたい。(HINE) |