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地球に落ちてきた男
60年代後半から現在に至るまで活躍し続ける、天才アーチストBOWIE。・・・そう、ミュージシャンというより、アーチストと呼ぶ方がふさわしい。 バイオグラフィー 1947年1月8日イギリス、ロンドンのスタンスフィールド・ロード生まれ。本名はDAVID
ROBERT JONES。幼年期は両親の離婚問題や母親の連れ子だった兄が精神病院にかつぎ込まれるなど、めぐまれた家庭環境ではなかったようだ。ボウイ自身も喧嘩で左目の視力をほぼ失ったり、ハイスクールを中退してしまうなど、問題児であったらしい。しかし、このハイスクール在学中に父親の影響でジャズに目覚め、サックスをマスターしながらバンドも結成。このメンバーには、なんと後輩ピーター・フランプトン(g)も参加していたという。また、本も片っ端から読みあさり、自ら今の環境に将来性がないことを悟ったボウイは、ハイスクールをやめ、広告会社に就職したが、これも6ヶ月で辞めている。 グラムロックの立て役者 ボウイは、ほとんどの楽器を演奏できるマルチ・プレイヤーであると共に、衣装のデザインやプロデューサーも1人でこなす才人である。しかも他の有能な人材を発掘する能力にも非常に長けていた。 変幻自在なカメレオン・アーチスト ボウイはグラムロックの雄として人気絶頂だったにも関わらず、70年代半ばになると、突然ソウルフルなアメリカ志向のサウンドに一変させ「ヤング・アメリカン」を発表。アメリカでもこのアルバムは大ヒットし、ジョン・レノンと共作したシングル「フェーム」は全米No.1に輝いた。それまで、どちらかというとイギリスのみで売れていたボウイは、このアルバムでアメリカ進出を狙ったと思われるが、まさにドンピシャという感じだった。さらに、次の「ステイション・トゥ・ステイション」では、英・米両方のファンを満足させる素晴らしいサウンドに仕上げ、全英5位/全米3位と、まさに世界のビッグスターと化したのであった。 宇宙人が地球人になった日 80年代に入り、パンク以降のニューウェイヴ達よって、それまでのロックの勢いが衰えると、ポップ界ではユーロビートとディスコ旋風が吹き荒れ、既存のロッカー達もこぞって、禁断のファンキー・ビートに手を染めていった。 |
Space Oddity Ryko/東芝EMI |
The Rise And Fall Of Ziggy Stardust And The Spiders From Mars Ryko/東芝EMI |
Aladdin Sane Ryko/東芝EMI |
Diamond Dogs Ryko/東芝EMI |
Young Americans Ryko/東芝EMI |
Low RCA/東芝EMI |
Heroes Ryko/東芝EMI |
ディスコ・グラフィー 1967年 Love You Till Tuesday(デビット・ボウイ・デビュー)*まったく評価されなかったソロ・デビューアルバム |
Scary Monsters Ryko/東芝EMI |
Let's Dance EMI/東芝EMI |
Tonight EMI/東芝EMI |
Tin Machine Victory/ビクター |
Black Tie White Noise Arista/ビクター |
Earthling Virgin/ビクター |
Hours Virgin/ビクター |
ステイション・トゥ・ステイション David Bowie |
SIDE-A 1.ステイション・トゥ・ステイション 2.ゴールデン・イヤーズ 3.ワード・オン・ア・ウイング SIDE-B 1.TVC 15(ワン・ファイブ) 2.ステイ 3.野性の息吹き |
なかなかつかみ所のないボウイ・サウンドの中で、あえて大きく分けるとすれば、1.初期のグラム・ロック時代、2.70年代後期のソウルフル時代、3.70年代末期〜80年代初期のニュー・ウェイヴ時代、4.80年代半ばのファンキー&ポップ時代、そして5.現在のある意味オルタナティブ的な総合形がある。もちろん、それぞれに名盤が存在するわけだが、1と2は自らの感性から生まれた音楽性を開花させた結果、3以降は他の優秀な才能をを借りての素晴らしいサウンド創りであった。 1の時期の「ジギー・スターダスト」や「アラジン・セイン」、3の時期の「ロウ」や4の時期の「レッツ・ダンス」も確かに素晴らしい。しかしながら、ボウイが自分自身の感性を研ぎ澄まし、それがピークに達したアルバムが、この「ステイション・トゥ・ステイション」だ。またヴォーカリストとしても最高の状態にあったように思う。前のアルバム「ヤング・アメリカン」でソウルフルなアプローチをみせたボウイであったが、このアルバムでは、少しブリティッシュ寄りのサウンドに戻しながらも、ソウルっぽさを自分流に消化し、誰にもマネのできない、いい意味での"不気味なサウンド"を創り上げている。また、この軽快感とシンプルさはすでにニュー・ウェイヴの先駆けと言っても過言ではない。特にタイトル曲では、2部構成で機械的なサウンドからソウルあふれるファンキー・サウンドへと流れ込むように聴かせる演出が最高にかっこいい。シングルとなった「ゴールデン・イヤーズ」もボウイでなければヒットしないような不気味な曲。この曲は最近、映画「ロック・ユー」の挿入歌としても使われていた。レコードではSide-Bの1曲目に収められた「TVC15」はライブではお馴染みのノリの良いファンキー・ナンバー。そして最後は魂を揺さぶるようなボウイのヴォーカルが大きくフューチャーされた「野性の息吹き」。シンガーとしての大きな成長を感じさせる。 次なるアルバム「ロウ」では、ブライアン・イーノという奇才を迎え、まったく違うサウンド・アプローチへと向かってゆく。そういった意味でも、このアルバムはグラム・ロック時代以降のボウイ・サウンドの集大成とも言えるものではないだろうか。この時代の基礎があるからこそ、80年代のファンキー・ブームの中ではいとも簡単に大ヒットを連発できたのであろう。 (HINE) |