URIAH HEEP ユーライア・ヒープ


元祖ブリティッシュ・ハード最後の生き残り(?)

1970年代のブリティッシュ・ハードロック全盛期をZEP.、パープル、サバスら御三家と共に生き抜き、頻繁なメンバーチェンジや主要メンバーの他界、レコード会社の倒産などあいつぐアクシデントを乗り越えながら、不死鳥のように蘇って現在もなお活動をつづけるビッグ・バンド、それがユーライア・ヒープだ。
オリジナル・メンバーは、
David Byron デビット・バイロン/リード・ヴォーカル
Ken Hensley ケン・ヘンズレー/キーボード、ギター、ヴォーカル
Mick Box ミック・ボックス/リード・ギター
Paul Newton ポール・ニュートン/ベース・ギター
Nigel Olsson ナイジェル・オルソン/ドラムス、パーカッション


とクレジットされているが、実はファースト・アルバムのうち先に録音された6曲はドラムがAlex Napierで、アルバム製作途中に彼を解雇している。
こういう解雇問題やメンバーチェンジの多さは、すでにバンド発足当初から頻繁に見られ、これがビッグ・バンドでありながら、ハードロック御三家にもう一つとどかなかった原因にもなっている。
71年3枚目のアルバム「対自核」のヒットで頭角を現したヒープは、メンバーチェンジを行い、ベースに
Gary Thain(ゲーリー・セイン)、ドラムにLee Kerslake(リー・カースレイク)の最強メンバーを据え、黄金時代を迎える。
ここで、一気にスターダムへとのし上がるべく、1年に2枚というハイペースでアルバムを製作した彼らであったが、その間に出来た「悪魔と魔法使い」「魔の饗宴」は、短期間で作ったとは思えないほど、完成度の高いトータル・アルバムで、その集中力は見事な限りだ。
その後もライブ盤をはさみ、「スウィート・フリーダム」「不思議の国」と同メンバーで2枚のアルバムを残し、好セールスも記録するが、何故かこの2枚は評論家の間では評判が悪い。ポップなサウンドになった事が、どうもお気に召さないようなのだが、個人的には「スウィート・フリーダム」のタイトル曲などは、とてもお気に入りの曲で、廃盤(日本盤)になった今でもときどき聞き返したりする。
そして、74年衝撃的なニュースがファンの間に飛び込んできた。なんと、ゲーリー・セインが感電事故で再起不能の重傷だというものだ。
しばらくして、もはや演奏不能だと悟った他のメンバー達は75年ゲーリーを解雇し、すぐさま元キング・クリムゾン〜ロキシー・ミュージックのベーシスト
John Wetton(ジョン・ウェットン)を迎え入れた。同年、ゲーリーは事故の後遺症に苦しみ、精神安定剤の大量摂取により他界した。
ヒープの方は、大物ウェットンの加入によって話題となり、アルバム「幻想への回帰」は全英7位と、全アルバム中の最高位をマークさせた。
しかし、つづく「ハイ・アンド・マイティ」の曲をヘンズレーとウェットンだけで作り上げるなど、ウェットンがバンド内での地位を大きくすると、しだいに内部衝突を起こすようになり、ついにはオリジナル・メンバーでもあり、バンドの顔でもあったデビット・バイロンを解雇してしまう。ところが他のメンバーの思惑どおりにはいかず、ジョン・ウェットンも脱退してしまった。
その後は、なんとか新メンバーを捜し、ヘンズレーとミック・ボックスが中心となってバンドを存続させていくが、すでに往年の勢いは感じられず、80年にはケン・ヘンズレーまでもが脱退を表明し、もはやこれまでかと思われた。だが、ただ1人残ったオリジナル・メンバーのミック・ボックスによってバンドは存続され、82年アルバム「魔界再来」で再スタートをきった。
ところが、不運にも今度は所属のレコード会社であるブロンズ・レーベルが倒産し、またまたピンチを迎えた。
ようやくCBSへ移籍し「イクゥエイター」を発表した頃(85年)、元ヴォーカリストであった、デビット・バイロンの訃報でヒープが話題になっていたのは皮肉なものだ。
その後もユーライア・ヒープとして、非常にスローペースではあるが、コンスタントにアルバムは出し続け、今日に至っている。
現在のメンバーは、
Phil Lanzon フィル・ランゾン/キーボード
Bernie Shaw バーニー・ショウ/ヴォーカル
Trevor Bolder トレヴァー・ボルダー/ベース・ギター
Mick Box ミック・ボックス/ギター
Lee Kerslake リー・カースレイク/ドラムス

ヒープ・サウンド分析

ヒープの黄金期でありブリティッシュ・ハード全盛期でもあった70年代前期は、ギタリスト花形時代でもあり、ギタリストのスター・プレイヤーがいないビッグ・バンドは、プログレ・バンドぐらいであったと言っても過言ではない。
そんな中、どちらかというとヘンズレーのキーボードとバイロンのヴォーカルを全面に押し出したヒープ・サウンドは、ハードロック・バンドの中では、とても異色な存在であった。
また、名曲のほとんどは、ケン・ヘンズレーのペンによるもので、ヒープが売れ出したのも、ヘンズレーが本格的に曲を作りだしてからだ。
全体的にプログレ風な味付けとミステリアスな雰囲気が漂うサウンドがヘンズレーの個性でもあり、“悪魔の叫び”と形容された、デビット・バイロンの声によって、その個性がよりいっそう引き立っていた。
バイロンの歌唱力も素晴らしく、アルバムを重ねるごとに巧さを増していった。彼最後のアルバム「ハイ・アンド・マイティ」では、艶やかで透き通る声へと変貌を遂げ、充分に1人でやっていけるだけの力量を感じていたが、何故か脱退後は表舞台にたつことなく、消息も途絶えてしまった。
ジョン・ウェットン加入後はセールス的には好調だったが、ワイルドなバイロンと貴公子のようなウェットンでは馬が合うわけもなく、サウンド的にも消化不良を起こしていた感じだ。バイロン脱退後、もしウェットンが抜けていなかったら、全く違うサウンドを展開し、新たな成功をつかんでいたかもしれないが、2人ともいなくなり、バイロンの存在の大きさを思い知らされる結果となってしまった。(バイロンの方もその後、元ハンブルパイのデイヴ・クレムソンらとラフ・ダイヤモンドを結成するが不発に終わっている)
そして、ヘンズレーが脱退した後のヒープは、もうただの中堅ハードロック・サウンドになりさがってしまった。ミック・ボックスがリーダーであった事自体、皆その時はじめて知ったのではないだろうか・・・。
それでも尚、生き続けるヒープ、その精神力こそが真のロック・スピリットなのだろうか。(HINE)
 2002.2更新




Very'Umble Very'Eavy
Bronze/ビクター

Salisubury
Bronze/ビクター

Look At Yourself
Bronze/ビクター

Demons And Wizards
Bronze/ビクター

Magician's Birthday
Bronze/ビクター

Uriah Heep Live
Bronze/ビクター

Sweet Freedum
Bronze/テイチク

ディスコ・グラフィー

1970年 Very'Umble Very'Eavy(ユーライア・ヒープ・ファースト)
1971年 Salisubury(ソールズベリー)
*ドラムがKeith Bakerに代わっています。ケン・ヘンズレーはこのアルバムから曲を書き出しました。
1971年 Look At Yourself(対自核)
*またもやドラムがIain Clarkeに交代。このアルバムのヒットで一躍有名になる
1972年 Demons And Wizards(悪魔と魔法使い)
*ゲーリー・セインとリー・カースレイクを加えた最強メンバーによる、ヒープの最高傑作。
1972年 Magician's Birthday(魔の饗宴)
*ヒープ出世3部作の最後。名曲「サンライズ」収録
1973年 Uriah Heep Live(ユーライア・ヒープ・ライブ)
*最強メンバーによる2枚組のライブ盤
1973年 Sweet Freedum(スウィート・フリーダム)
*魔術イメージを振り払い、少しポップになった名盤
1974年 Wonderland(不思議の国)
*ツアーの忙しい合間に作ったもので、トータル的にはいまひとつな内容。ゲーリーの遺作となってしまった。
1975年 Return To Fantasy(幻想への回帰)
*ジョン・ウェットンを加え、全英7位を記録した話題作
1976年 High And Mighty(ハイ・アンド・マイティ)
*よりポップなサウンドへ変貌。バイロン最後のアルバム
1977年 Firefly(ファイヤーフライ)
*John Lawton(vo)、Trevor Bolder(元スパイダース・フロム・マース/b)を加え、再スタート
1977年 Innocent Victim(罪なきいけにえ)
1978年 Fallen Angel(堕ちた天使)
*2000年にめでたく再発売!
1980年 Conquest(征服者)
*John Sloman(元ローンスター/vo)、Chris Slade(ds)にメンバーチェンジ。ヘンズレー最後のアルバム
1982年 Abominog(魔界再来)
*ケン・ヘンズレー脱退後、メンバーをPeter Goalby(vo)、Bob Daisley(b)、John Sinclair(元ヘヴィメタルキッズ/kb)に代えてリリース
1983年 Head First(ヘッド・ファースト)
1985年 Equator(イクゥエイター)
*ベースギターに再びトレヴァー・ボルダーを引き戻して録音
1988年 Live In Moscow(ライヴ・イン・モスクワ)*Phil Lanzon(vo)、Bernie Shaw(kb)が新加入。
1989年 Rasing Silence(レイジング・サイレンス)*デビュー・アルバムに似たジャケット。新たなスタートという意味なのだろうか?
1989年 Live In Moscow(ライブ・イン・モスクワ)*87年に旧ソビエト連邦で行われたライブ
1991年 Different World(ディファレント・ワールド)
1995年 Sea Of Light(シー・オブ・ライト)
*ロジャー・ディーンによる「悪魔と魔法使い」風ジャケットのデザイン
1998年 Sonic Origami(ソニック・オリガミ)
*origamiとは「折り紙」のことらしい・・・。
1999年 Spellbinder
2000年 Live In 1979



Wonderland
Bronze/テイチク

Return To Fantasy
Bronze/テイチク

High And Mighty
Bronze/テイチク

Firefly
Bronze/ビクター

Conquest
Bronze/テイチク

Abominog
Essential/テイチク

Rasing Silence
Essential/テイチク