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“サザンロックの雄”誕生
「ママ、僕はヒット・レコードなんか作るつもりはないよ。どこへ行っても同じ曲を演奏しなきゃならないなんていやだ。有名になんかなりたくない。お金も欲しくない。毎日ハラいっぱいの食べ物があって、ギターをかきならすことができるんだったら、それで満足だよ」 弟グレッグと兄デュアンはまだローカル・バンドで、セントルイスのクラブに出演していた頃、たまたまコンサートでやってきたニッティ・グリッティ・ダート・バンド(彼らも1曲ヒットを放っていたが、まだまだ無名であった)のマネージャーに気に入られ、ロサンゼルスに渡り、アワーグラスというバンド名で1967年にアルバムをリリースした。 悲運と引き替えの名声 リーダーがいなくなったバンドは、もはや解散かと思われたが、ブラザーとしての結束は堅く、デュアンの意志を継いですぐに活動を再開した。 デュアン・オールマンが一躍脚光を浴びるようになった当時、まだ小学生高学年で、ちょうど「愛しのレイラ」を聞いてロックに目覚めた頃だった。子供心にもデュアンのボトルネック奏法はカッコイイな〜と思えたが、オールマン・ブラザーズ・バンドの大人っぽいサウンドは当然理解できるはずもなく、近頃聞き返してみて、改めてその凄さを発見した。 |
The Allman Brothers Band Atco/PolyGram |
Live At Fillmore East Capricorn/PolyGram |
Eat A Peach Capricorn/PolyGram |
Brothers And Sisters Capricorn/PolyGram |
Win, Lose, Or Draw Polydor/PolyGram |
Wipe The Windows-Check The Oil-Dollar Gas Polydor/PolyGram |
Enlightened Rogues Polydor/PolyGram |
ディスコ・グラフィー 1969年 The Allman Brothers Band (オールマン・ブラザーズ・バンド)*カプリコーン・レーベル第1号となったデビュー作 |
Reach For The Sky Arista/BMG |
Brothers Of The Road Arista/BMG |
Seven Turns Epic/Sony |
Shades Of Two Worlds Epic/Sony |
An Evening With The Allman Brothers-1st Set Epic/Sony |
Where It All Begins Epic/Sony |
Peakin' At The Beacon Epic/Sony |
1.リヴァイヴァル 2.キープ・ミー・ワンダリン 3.ミッドナイト・ライダー 4.エリザベス・リードの追憶 5.フーチー・クーチー・マン 6.プリーズ・コール・ホーム 7.マイ・ブルース・アット・ホーム |
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アメリカ版ウイッシュボーン・アッシュとでも言いたくなるような、ツイン・リードが印象的な1曲目のイントロ。その後をソウルフルなグレッグのヴォーカルとR&B調のリズムが追う。1970年というロックの草創期にこれだけのクロスオーヴァー・サウンドをやっていたとは驚くべきことだ。また、ファースト・アルバムから、このセカンドのレコーディングの間まで、メンバー達はドラムのジェイモの影響でみなジャズを聴きだし、早くもそのフィーリングを取り入れることに成功している。名曲「エリザベス・リードの追憶」などは、今聞くとどうみてもフュージョンだ。 一般的にABBの代表作というと、「フィルモア・イースト・ライヴ」や「イート・ア・ピーチ」をあげる人も多いであろう。確かにデュアン・オールマンの凄さが分かるのはライヴであり、その2枚のアルバムで聴けるデュアンのプレイは実にすばらしい。しかし、ひとつのアルバムとして見た場合、このアルバムの方が断然完成度が高い。 ここでの彼らは最初にも触れたR&Bやジャズの他に、持って生まれたカントリーやブルース、はたまた南部のスワンプ・ミュージック(土着音楽)などの基礎があり、すでに驚くべき高い音楽性を発揮している。それでいて、どれも一生懸命学んだというよりは、知らずに身に付いていたという感じで、とても自然体なのだ。これには、さしものクラプトンも衝撃を受けずにはいられなかったというのも頷ける。また、このアルバムからディッキー・ベッツも曲作りに参加し、さっそく2曲を提供しているが、早くもコンポーザーとしての高い資質を覗かせている。1.と4.は彼のペンによるものだ。3.はグレッグの曲で、後にソロ・アルバムでも再録音し全米19位を記録。ウィリー・ネルソンもこの曲をカヴァーし、カントリー・チャートで6位のヒットを記録している名曲だ。5.は唯一ベリー・オークレーがヴォーカルをとる、ブルースの巨匠マディ・ウォーターズの曲で、ボトルネックをはめたままスライドと通常の弾き方を併用するデュアンのスーパー・プレイが光る。これは、クラプトンも驚いた、ノーマル・チューニングのままボトルネックを使いこなしているからこそ出来る技だ。6.はグレッグの枯れた味わいのヴォーカルがなんともいい感じだ。しかし、デュアンという男は・・・普通これだけ有名なギタリストであれば、常に前面に出たがり、ギターを弾きまくりそうなものだが、ちゃんと曲のバランスを考えながら、グレッグの声が引き立つように弾いている。さすがにセッションマンとしても数々の名演を残してきただけのことはある。本当に感心させられる。 全7曲、まったく無駄がない名盤。また、これだけバラエティに富んだサウンドを違和感無く1つのアルバムに仕上げた名プロデューサー、トム・ダウドの仕事ぶりも見逃すことは出来ない。(HINE) |