NITTY GRITTY DIRT BAND ニッティ・グリッティ・ダート・バンド


カントリーロックの大御所

オールマン・ブラザーズ、ジャクソン・ブラウン、ケニー・ロギンスなどを世に送り出し、66年から現在に至るまで一貫してカントリー・ロックを演奏しつづけるベテラン・バンド“NGDB”
その前身となったのはカリフォルニアで結成された「The Illegitimate Jug Band」でジェフ・ハンナ、ジミー・ファッデン、ラルフ・バー、レス・トンプソン、ブルース・カンケルのメンバーであった。これに一時Jackson Brownジャクソン・ブラウンを加えていたこともある。
1966年このメンバーにジョン・マッキューエンを加え、バンド名をニッティ・グリッティ・ダート・バンド(NGDB)に変えた。オリジナルメンバーは、
Jeff Hanna ジェフ・ハンナ/ギター、ヴォーカル
Jimmie Fadden ジミー・ファッデン/ギター、ハーモニカ、ウォッシュタブ・ベース、ヴォーカル
Ralph Barr ラルフ・バー/ギター、クラリネット、ヴォーカル
Les Thompson レス・トンプソン/ベース・ギター、ギター、ヴォーカル
Bruce Kunkel ブルース・カンケル/ギター、ヴァイオリン、ヴォーカル
John McEuen ジョン・マッキューエン/ギター、フィドル
(ビオール属の弦楽器)、バンジョー、マンドリン、ヴォーカル
彼らはフォーク・カントリー・ロック・バンドの異端児として1967年にアルバム「Nitty Gritty Dirt Band」でデビューすると、いきなり「バイ・フォー・ミー・ザ・レイン」のスマッシュ・ヒットを放った。また、この頃、寝ぐらを共にしながらいっしょにクラブのショーに出演していたデュアン&グレッグ・オールマン兄弟を彼らのマネージャーが気に入り、ロサンゼルスに連れていってレコード・デビューさせている。
ブルー・グラス、R&B、ラグタイム、ケイジャン、オールド・タイム、ブルース、ロックンロールなどあらゆるアメリカン・ミュージックを取り入れ、デビュー当時こそ話題になった彼らだが、ビートルズがサージェントペパーズ〜をリリースして以来、ロック界にはしだいにサイケデリック・ブームの波が押し寄せてきた。
彼らも次のセカンドアルバムではドラッグのことを唄ったり、ジャケットもソレ風にするなど、一応サイケを意識したアプローチを見せたが失敗に終わってしまった。その後も泣かず飛ばずで、69年にはついに一度解散してしまう。
しかし、すぐに70年メンバーも新たに再結成を果たし、素晴らしいアルバムとともにロック界にカンバックしてきた。
Jeff Hanna ジェフ・ハンナ/ギター、ヴォーカル、ドラムス、ウォッシュボード(洗濯板みたいな楽器)、パーカッション
Jimmie Fadden ジミー・ファッデン/ギター、ハーモニカ、ヴォーカル
Les Thompson レス・トンプソン/ベース・ギター、ギター、ヴォーカル、マンドリン
John McEuen ジョン・マッキューエン/ギター、フィドル、バンジョー、マンドリン、アコーディオン、ヴォーカル
Jimmy Ibbotson ジミー・イボットソン/ギター、キーボード、ドラムス、アコーディオン、ヴォーカル
この彼らの通算4作目のアルバム「アンクル・チャーリーと愛犬テディ」では、以前から曲を提供してくれていたジャクソン・ブラウンに代え、若き日のKenny Logginsケニー・ロギンスの曲を採用。サウンド的にはむしろ原点回帰してアメリカン・ミュージックのルーツとロックを融合させた“カントリー・ロック”を確立させた。これが当たり「ミスター・ボージャングル」(全米9位)、ロギンスの曲「プー横町の家」も大ヒット。
アルバムはプラチナ・ディスクに輝き、グラミー賞の2部門にノミネートされるなど、一躍彼らはビッグ・スターの仲間入りを果たしたのである。
その後も順調に活動をつづけ、72年には初来日。74年ベースのレス・トンプソンが脱退し、一時4人編成となるが、76年にはジミー・イボットソンが抜けた代わりにJohn Cableジョン・ケーブル(g,b,vo)とJackie Clarkジャッキー・クラーク(b,g)の2人を入れ、アメリカン・バンドで初のソビエト(現ロシア)ツアーを敢行して話題になった。
しかし、彼らのサウンドはしだいにカントリーにどっぷり浸かってゆき、人気もそれとともに下降していってしまう。
そこで、78年には心機一転して、大幅にメンバーも入れ替え、バンド名もザ・ダート・バンドに改名。メンバーは、
Jeff Hanna ジェフ・ハンナ/ギター、ヴォーカル、ドラムス、ウォッシュボード、パーカッション
Jimmie Fadden ジミー・ファッデン/ギター、ハーモニカ、ヴォーカル
John McEuen ジョン・マッキューエン/ギター、フィドル、バンジョー、マンドリン、アコーディオン、ヴォーカル
Al Garth /サックス、フィドル、ホーン、キーボード、パーカッション
Merel Bregante /ドラムス、パーカッション
Richard Hathaway /ベース・ギター
Bob Carpenter ボブ・カーペンター/キーボード、アコーディオン、ヴォーカル
そして、79年にはリンダ・ロンシュタットとの共演によるシングル「アメリカン・ドリーム」が全米13位に。80年には「メイク・ア・リトル・マジック」が20位、82年「ダンス・リトル・ジーン」がカントリーチャート10位など単発小ヒットはあったものの、今ひとつパッとしなかった彼らは、全盛期のメンバーであった、ジミー・イボットソンを引き戻し、83年バンド名も元に戻して、アルバム「プレイン・ダート・ファッション」を発表。
ここからのシングル「ロング・ハード・ロード」は見事に彼ら初の全米No.1ヒットをもたらした。またこの年のロサンゼルス・オリンピックでライブ演奏を披露したり、Farm-Aidコンサートを行ったりと、俄然元気を取り戻した。
その後も「フィッシング・イン・ザ・ダーク」や「ゴット・ア・ホールド・オン・ミー」のNo.1ヒットを放ったり、2回目のソビエトや日本も含む世界ツアーを敢行するなど、80年代末まで活躍しつづけるが、90年に入るとパッタリとナリを潜め、ライブ活動もめっきり減った。92年にAspenミュージック・スクールでニッティ・グリッティ・ダート・バンド奨学金をスタートさせる以外、これといった話題もなかった。
だが、最近またマイペースでの活動を再開し、99年には久しぶりに、通常のNGDBらしいアルバムをリリースしている。現在はジェフ・ハンナ、ジミー・ファッデン、ジム・イボットソン、ボブ・カーペンターの4人で活動中。相変わらず、陽気で楽しいカントリー・ロックを聞かせてくれる。(HINE)
 2000.10



Nitty Gritty Dirt Band
Liberty/東芝EMI

Ricochet
Liberty/東芝EMI

All The Good Times
United Artists/東芝EMI

Will the Circle Be Unbroken
Liberty/東芝EMI

Dirt Silver and Gold
United Artists/東芝EMI

The Dirt Band
United Artists/東芝EMI

An American Dream
United Artists/東芝EMI

ディスコ・グラフィー

1967年 Nitty Gritty Dirt Band (ニッティ・グリッティ・ダート・バンド)*「バイ・フォー・ミー・ザ・レイン」がスマッシュ・ヒット。
1967年 Ricochet 
*サイケ風を試みるもサウンド自体は変わらず融合に失敗
1968年 Rare Junk 
*ブルースが脱退し、Chris Darrow(g.,fiddle)が加入。
1969年 Alive 
*67〜68年のライブ寄せ集め。廃盤
1970年 Uncle Charlie(アンクル・チャーリーと愛犬テディ)
*「ミスター・ボージャングル」や「プー横町の家」を含む彼らの最高傑作
1971年 All The Good Times(オール・ザ・グッド・タイムス)
*レイドバック・サウンドとカントリー、フォークの合体を成功させた
1972年 Will the Circle Be Unbroken(永遠の絆)
*カントリー・ミュージック史上最大のイベントと騒がれたセッション2枚組
1974年 Stars and Stripes Forever 
*ライブとスタジオ録音がミックスされたアルバム
1975年 Dream (aka Symphonian Dream) *彼らが初めて本格的にスタジオ録音したアルバム。リンダ・ロンシュタットやレオン・ラッセルもゲスト参加
1976年 Dirt Silver and Gold *ソビエト・ツアーのライブ3枚組
1978年 The Dirt Band *バンド名を変え心機一転をはかった
1979年 An American Dream(アメリカン・ドリーム)
*リンダ・ロンシュタットと共演してヒットした「アメリカン・ドリーム」を収録
1980年 Make a Little Magic 
*タイトル同名曲は全米20位のヒット。廃盤
1981年 Jealousy 
*廃盤
1982年 Let's Go 
*「ダンス・リトル・ジーン」がカントリー・チャート10位に。ひさびさにケニー・ロギンスの曲も聞ける。廃盤
1984年 Plain Dirt Fashion 
*彼ら初の全米No.1ヒット「ロング・ハード・ロード」を収録。廃盤
1985年 Partners Brothers and Friends 
*ブルース・スプリングスティーンの曲もみられる。廃盤
1986年 Twenty Years of Dirt 
*結成20周年を記念したベスト盤
1987年 Hold On 
*全米1位の「フィシング・イン・ザ・ダーク」と「ベイビーズ・ゴット・ア・ホールド・オン・ミー」を収録
1988年 Workin' Band
1989年 More Great Dirt 
*ワーナー時代のヒットを含むベスト盤
1989年 Will the Circle Be Unbroken Vol.II 
*ブルース・ホースビー、エミルー・ハリスなど多彩なゲストを迎えたセッション3枚組
1991年 Live Two Five 
*近年のライブ
1991年 The Rest of the Dream *ブルース・スプリングスティーンが1曲提供している
1992年 Not Fade Away 
1994年 Acoustic 
*彼らの原点であるアコースティックなカントリー・ミュージックにせまった作品
1997年 The Christmas Album 
*オールド・クリスマス・ソングを唄った企画もの
1999年 Bang! Bang! Bang! 
*久しぶりに普通のNGDBサウンドに戻った



Make a Little Magic
United Artists

Let's Go
Liberty

Plain Dirt Fashion
Warner

Partners Brothers and Friends
Warner

Hold On
Warner

Acoustic
Liberty

Bang! Bang! Bang!
Dreamworks/ビクター



★★★★★名盤PICK UP★★★★★

アンクル・チャーリーと愛犬テディ
UNCLE CHARLIE AND HIS DOG TEDDY

NITTY GRITTY DIRT BAND

1970年Liberty/東芝EMI

1.サム・オブ・シェリーズ・ブルース
 Some Of Shelly's Blues
2.放蕩息子の帰郷
 Prodigal's Return
3.治療
 The Cure
4.トラベリ・ムード〜チッキン・リール
 Travelin' Mood〜Chicken Reel
5.ユーコン鉄道
 Yukon Railroad
6.リビン・ウィズアウト・ユー
〜クリンチ・マウンテン・バック・ステップ
 Livin' Without You〜Clinch Mountain Back Step
7.レイヴ・オン
 Rave On
8.ビリー・イン・ザ・ロウ・グラウンド
 Billy In The Low Ground
9.ジェシー・ジェームス
〜アンクル・チャーリー・インタビュー
 Jesse James〜Uncle Charlie Interview
10.ミスター・ボージャングル
 Mr.Bojangles
11.作品36番・クレメンティ
 Opus 36,Clementi(John)
12.サンタ・ローザ
 Santa Rosa
13.近親
 Propinquity
14.アンクル・チャーリー
〜ランディ・リン・ラグ
 Uncle Charlie〜Randy Lynn Rag
15.プー横丁の家
 House At Pooh Corner
16.スワニー・リバー
〜アンクル・チャーリー・インタビュー#2
〜ジ・エンド
〜スパニッシュ・ファンダンゴ
 Awanee River〜Uncle Charlie Interview #2〜The End〜Spanish Fandango
アメリカン・ロックの中で、後にも先にもこんなに完璧なコンセプト・アルバムは聞いたことがない。
多少音が古かろうが、そんなものまで“味”に換えてしまうほど、とにかく曲と演奏が素晴らしく、これ1枚でカントリー・ロックに対する認識がすっかり変わってしまった。
このアルバムは69年にバンド再編後、70年に5枚目のアルバムとしてリリース。翌71年にシングル・カットされた1曲目の「サム・オブ・シェリーズ・ブルース」がヒットし始め(最高ビルボード64位)、つづく「プー横丁の家」が53位、「ミスター・ボージャングル」が9位と、たてつづけにヒットをとばし、一躍彼らの名前は世界中に轟いた。
またこのアルバムには若き日のケニー・ロギンスが4曲も曲を提供しており、早くもその非凡な才能を発揮している。ヒットしたプー横丁〜は彼のペンによるもの。
演奏の方では、マンドリン、バンジョー、アコーディオン、コンガ、ハーモニカ、ウォシュタブ・ベース、フィドルなどカントリー・ミュージックに欠かせない楽器達を巧みに操りながら、ブルー・グラス、オールド・タイム、ケイジャン、ブルース、ラグタイム、R&B、ロックンロール、フォークそしてカントリーなどアメリカの伝統音楽を全て取り入れている。
途中、チャーリー爺さんの語りが入るというアイデアと演出も、とても新鮮で心を打たれる。
“陽気なアメリカン”という雰囲気を壊さずに、これだけ緻密に計算されつくした音づくりができたというのは、彼らのチームワークの良さに他ならない。(HINE)