ジャケットの名盤を手がけた著名アーティスト・ファイル

File No.21
MICHAEL WHELAN マイケル・ウェラン

 1945年7月6日イギリスのNorth Somerset生まれ。父親が設計や建築計画の仕事で絵を描いていたため、ロドニーも幼い頃から絵を描くことが好きだったようだ。
 学校卒業後、一時父と共にエンジニアとして働くが、旋盤で指を落としそうになるという事故をきっかけに、父の薦めで印刷工場で働くようになる。しかし、それも適職でないと感じたロドニーは、1960年ブリストルの「West of England College of Art」へ入学し、グラフィックやレタリングなどの商業デザインを学ぶことにした。
 大学でロドニーは、しだいに音楽にも興味を持つようになり、芸術と音楽を組み合わせる方法を模索しはじめた。また、自らバンドを結成し演奏するようになると、62年には大学も辞め、広告代理店で働く傍らバンド活動を本格的に始める。この時代、シン・リジィのシングル「New Day」のカヴァーも手がけているが、メインはバンド活動の方であったようだ。70年にはこの広告代理店も辞め、大学時代からの友人でバンド・メイトでもあるテリー・ブレイスと共に「Plastic Dog」という音楽代理店とグラフィック・デザインを兼ねた会社を設立。
 その後、ロドニーはキング・クリムゾン初期のポスターやJ.R.R.トールキンの「指輪物語」の国際的ポスターなどで名を挙げ、徐々に頭角を現す。
 ロドニーが最初に手がけたLPのカヴァーはドイツのプログレ(ジャーマン・ロック)・バンドAmon Düül IIの「Live In London」(1973)のもの。
 70年代後半からはSF作者のマイケル・ムアコックの絵本を、80年代にはTVの静止画アニメーションの仕事も始め、近年ではコンピューター・ゲームのアニメーションを担当するなど、ますます活動の幅は拡がっている。


No Mean City/Nazareth
1978年 A&M

Time Tells No Lies/Playing Mantis
1981年 Arista

Borrowed Time/Diamond Head
1982年 MCA

The Eleventh Hour/Magnum
1983年 Castle/ビクター

Aqua/Asia
1992年 Rhino

Lonesome Crow/Scorpions
2002年 Heavy Metal
(Original 1972 Rhino)

Live In The U.S.A./Uriah Heep
2003年 Classic Rock Legends

The Battle/Allen Lande
2005年 Avalon

 70年代〜80年代には多忙で経費もかさむロジャー・ディーンの代役としてロドニーに依頼することも多かったが、近年ではブック・カヴァーやポスターなどでも名を売り、ロジャー・ディーンと並び称されるほどの人気を集めるようになった。
 ロジャー・ディーンの作品と比べると、そのファンタジックな世界観や色使いは似ているが、線の柔らかさやコントラスト弱めの微妙なグラデーションに差があることが分かる。
 また、ロジャーがイラスト以外にもロゴ・マークやプロダクツ&インテリア・デザインにまで才能を発揮しているのに対し、ロドニーはMAGNUMのバンド名ロゴ以外、商業デザイン的なものではあまりぱっとしない。どちらかというとロジャーよりファイン・アート系の人なのだろうか。
 しかしながら、謎の物体や架空のキャラクターを創るのは得意なようで、立体物を作るのもたいへん上手い。
 ジャケットのカヴァー・アートでは、ロジャーより若い世代のせいか、近年ではLPのような大きなサイズでなくてもはっきり分かるような構図を心がけているようで、CDでも充分迫力が伝わる。コンピューター・グラフィックも駆使し、さらに独自の作風を築きつつある。
 上に載せたカヴァー・アートのうち、エイジアやユーライア・ヒープのものは、ロジャー・ディーンから引き継いだもので、他にも何作かロドニーの作品がある。有名なのはマグナムのカヴァーで、上記の他10作にも及び、ほとんどマグナムのジャケット=ロドニー・マシューズというイメージが定着している。珍しいところでは、上にもあるスコーピオンズのファーストのジャケット。これはUK盤でリイシューして再発売した時に一時使われたものらしい。