MAGNUM マグナム




Magnum II

Castle/ビクター

Marauder
Castle/ビクター

The Eleventh Hour
Castle/ビクター

On a Storyteller's Night
Castle/FM

Vigilante
Polydor/ポリドール

Wings of Heaven
Polydor/ポリドール

Goodnight L.A.
Polygram/ポリドール

DISCOGRAPHY

1978年 Kingdom of Madness(狂気同盟)
1979年 Magnum II(マグナム II)

1980年 Marauder(マローダー)

1982年 Chase the Dragon(チェイス・ザ・ドラゴン)

1983年 The Eleventh Hour(ジ・イレヴンス・アワー)

1985年 On a Storyteller's Night 

1986年 Vigilante 

1986年 Vintage Magnum(ヴィンティッジ・マグナム)
1988年 Wings of Heaven(ウイングス・オブ・ヘヴン)

1989年 Invasion Live(インヴェイジョン・マグナム・ライヴ)
1990年 Goodnight L.A.(グッドナイトL.A.)

1992年 Sleepwalking
1994年 Live In London(ライヴ・イン・ロンドン)
1995年 Keeping the Nite Lite
1995年 Rock Art
1996年 The Last Dance(ザ・ラスト・ダンス)
1997年 Stronghold(ストロングホールド〜ライブ〜)
2002年 Days of Wonder
2002年 Breath of Life(ブレス・オブ・ライフ)
2005年 Brand New Morning(ブランド・ニュー・モーニング)



Sleepwalking
Mfn/ ポリドール

Keeping the Nite Lite
Receiver

Rock Art
EMI

The Last Dance
マーキー

Invasion Live
Receiver

Breath of Life
Steamhammer/日本クラウン

Brand New Morning
Majestic Rock

★★★名盤PICK UP★★★

狂気同盟
Kingdom of Madness

マグナム
Magnum


1978年 Jet/Castle/ビクター
 70年代の終わり頃、イギリスにもカンサスやスティクスに劣らぬプログレ・ハードの名バンドがいたというだけで奇跡的だ。その頃といえば、イギリスではパンクとニュー・ウェイヴが花盛りで、今ではクラシック・ロックといわれる部類の正当派ブリティッシュ・ハードはほぼ死滅状態。プログレッシヴ・ロック・バンドまでもが、オールド・ウェイヴの刻印を押されるのを恐れ、よりポップな方向へとはしっていた。
 オールド・ロック・ファンの皆様ならご承知の通り、プログレ・ハードと呼ばれるサウンドは、イギリスのプログレに衝撃を受けたアメリカの新鋭バンド達が自己流にプログレを解釈したもので、精神性や細かいニュアンスより様式美や楽器の使い方など表面上のはっきりそれと分かるものだけを採り入れたものだ。
 しかし、マグナムの場合、だたそれらのアメリカ勢に追従するだけでなく、ブリティッシュ・ハード独特の湿り気を帯びたようなメロディーと細かいニュアンスまでも伝えるボブ・カトレイのヴォーカルを、プラス・アルファの要素として追加することに成功している。
 ところが、惜しくもそれはこのファースト・アルバムと次のセカンド・アルバムだけで、その後は時代に逆行する異端児として、古き良き時代のブリティッシュ・ハードを再現し守りつづけることになる。
 というわけで、このファースト・アルバムは彼らにとっての代表作ではない。だが、その内容の素晴らしさは今聞いても色褪せることはなく(実は初めて聞いたのも2〜3年前なのだ)、むしろ時代の流れに関係なく評価できる今だからこそ、カンサスやスティクス、ボストン、初期のジャーニーといったアメリカン・バンドらの名盤と共に語れるプログレ・ハードの名盤であると分かっていただけることだろう。

 1曲目、「狂気生誕」という邦題が示すとおり、アルバム全体のテーマでもある「狂気」が生まれる歌なのだが、ポップでノリのよいリズム、それにキーボードや効果音がスティクスを想わせる。複雑とは言わないまでも、中間部でバラード調に変化する曲構成やアコースティック・サウンドを随所にちりばめる手法は、いかにもプログレ・ハード風で気持ちがいい。エンディングでは、また元のハイテンポに戻り、メドレー形式で息もつかせず2曲目へと突入する。
 2曲目はさらにノリの良いロックンロール・ナンバーで、これも多重録音や効果音、リズム・パターンの変化などで普通のロックンロールでは終わらせない。エンディングはまたもや次の曲へとつながるメドレー形式だが、3曲目は一転して静かにしっとりと歌い上げるナンバー。
 次の4曲目も、またまたメドレーで始まるが、フルートの音が効果的にプログレ風の雰囲気を醸し出す、アルバムのハイライト・ナンバーでもある。少し湿った感じの曲調で、ユーライア・ヒープを想わせるコーラスなど、これこそがブリティッシュ・プログレ・ハードとでも呼びたくなるマグナムだけのオリジナル・サウンドと言えよう。
 5曲目、この曲から本来LPではB面にあたる。静かでコーラスがきれいなバラードだ。しかし、中間部にはハードなギターが入り、リズム・パターンも普通でないところが、いかにもマグナム風だ。
 6曲目、ハードでポップな曲を複雑な曲構成と複雑なリズム・パターンで表現する手法はまるでカンサスのようだ。
 7曲目、イントロに「狂気同盟」の一節をもってくるあたり、本作がコンセプト・アルバムであるということを強く意識させられる。曲自体はアルバム中もっともハイテンポで、ベース・ラインとコーラスがユーライア・ヒープ風。しかし、スローからハイテンポの曲まで、よくもまあこれだけ次から次へと良いメロディーがポンポン出てくるものだ。
 ここから8曲目へはまたもメドレーで、彼らがフュージョン全盛時代を通過してきたバンドらしく、少しフュージョン的要素もかいま見られる。
 そして、ラストの9曲目へと、静かなピアノの音がかぶさるように入り、メロトロンと再三にわたるヒープ風のコーラス、おまけに多重録音によるツイン・リード・ギターの絡みと翳りのあるメロディー・ライン、ブリティッシュ・ファンには「もうたまりません」という感じだろう。
 全9曲はほとんどメドレーでつながり、あっという間に終わってしまう。これで音質が良ければもっとよいのだが、2,3年後に倒産する弱小レーベルからのリリースなので、いたしかたないところだ。アルバムの内容は文句なく名盤と呼べるものだ。
 尚、本作のジャケットにはUK盤とUS盤の2種類があり、日本盤のオリジナル(LP)はユーモラスなイラストの方が採用されていた。
 廃盤になってからは、輸入盤でしばらく、(左上のジャケ写の上にポインターを持って行くと切り替わる)目玉の暗いジャケットの方しか流通していなかったが、2005年UK盤でデラックスエディションというボーナス・トラック入り2枚組のCDが、日本盤と同じジャケットで登場した。これを機会にぜひこの名盤をジャケットと共にお楽しみいただきたい。(HINE)
1.狂気生誕
 In the Beginning

2.ロック・ミー
 Baby Rock Me

3.ユニバース
 Universe

4.狂気同盟
 Kingdom of Madness

5.真実の掟
 All That Is Real

6.ブリンガー
 The Bringer

7.侵略
 Invasion

8.カオスの神々
 Lords of Chaos

9.オール・カム・トゥゲザー
 All Come Together


[Deluxe EditionのDISC-2]
いずれもアルバム未収録のシングル曲や未発表曲、未発表テイク
1.Sea Bird
2.Stormbringer
3.Slipping Away
4.Captain America
5.Sweet for My Sweet
6.Movin' On
7.Master of Disguise
8.Without Your Love
9.Find the Time
10.Everybody Needs
11.Kingdom of Madness [Alternative Version]



チェイス・ザ・ドラゴン
Chase the Dragon
マグナム
Magnum



1982年 Jet/Castle/ビクター
 本当の意味でマグナムのサウンドが確立されたのはこのアルバムからだろう。ファーストと本作、「On a Storyteller's Night」あたりが最高傑作としてマグナムファンの中でも意見が分かれるところだが、本作が最もマグナムらしい代表作であることは間違いないところではないだろうか。
 はっきりいって80年代初頭において、この「どハードロック」は時代錯誤も甚だしい(笑)。しかし、オールド・ウェイヴの魅力を捨てきれない70年代からのロック・ファンたちからは、きっと影で熱狂的に指示されていたはずだ。残念ながら当時はマグナムの存在すら知らなかったが、もし知っていれば、ニュー・ウェイヴ全盛のご時世、友人には決して言えずとも密かに感動で涙していたことだろう。
 デビュー当初プログレ・ハード路線を歩んでいた彼らが、なぜ時代の潮流にも乗らず、逆行して古典的ブリティッシュ・ハード・サウンドへ行き着いてしまったのだろう。きっと彼らもまた70年代のブリティッシュ・ハード・サウンドを愛してやまないのだ。「売れる」ことを考えればそれは全く時代逆行的。売れようが売れまいが関係なく、自分たちは好きなことを全力でやるだけという姿勢が、このアルバムのサウンドへ行き着いた答えなのかもしれない。
 本作からキーボード・プレイヤーがマーク・スタンウェイに替わっている事も多少は影響しているだろうが、フロント・マン2人、トニー・クラーキン(g)とボブ・カトレイ(vo)の、ブリティッシュ・ハードの失われた伝統を受け継ごうという深い決心がこういった古典的サウンドを生み出すきっかけとなったのだろう。
 そんな彼らだけに、本作全8曲に1曲たりとも捨て曲などあるわけもなく、すべての曲がブリティッシュ・ハードの香りをプンプンさせる名曲ばかりだ。

 アルバム出だしのイントロからもう、宇宙に現れたドラゴンの叫びのような効果音が入る大仰なアレンジで、いやがうえにも気分は高まる。ここから1曲目のイントロ部分の歌い出しフレーズが始まり、本格的に曲が展開していくまでに、既に2分もの時間が経過している。これだけでも如何に大仰かが分かるはずだ。
 ボブ・カトレイのヴォーカルも、この頃からぐっと表現力を増し、「ブリティッシュの至宝」と呼ばれるのにも頷けるほどに成長を遂げている。
 先にも触れたとおり、すべてが良い曲ばかりなのだが、中でも3曲目の「Sprit」、4曲目の「
Sacred Hour」、そして8曲目の「Lights Burned Out」は特にすばらしい。いずれもアコースティック楽器の音色とボブの表情豊かなヴォーカルを生かした名曲だ。とりわけ彼らのテーマ曲とも言える「The Sprit」は、ピアノが奏でるイントロのフレーズを聞いただけでゾクゾクするほどだ。
 また、本作ではロドニー・マシューズによるイラスト・ジャケットも魅力の一つとしてあげておこう。オールド・ウェイヴの香り満点でとてもいい。

 尚、CDのリマスター盤にはボーナス・トラックとして、シングルしかリリースされていなかった「Back to Earth」や「Hold Back Your Love」「Long Days, Black Nights」などが収録されている。いずれも良い曲で、アルバムに元々入っていたとしてもまったく違和感がない雰囲気を持つ曲達だ。さらに2005年リリースのデラックス・エディションでは、2曲のライヴ・ヴァージョンと1曲のアコースティック・ヴァージョンが追加されている。(HINE)
1.ソルジャー・オブ・ザ・ライン
 Soldier of the Line

2.オン・ジ・エッジ・オブ・ザ・ワールド
 On the Edge of the World

3.スピリット
Spirit
     
4.セイクリッド・アワー
 Sacred Hour

5.ウォーキング・ザ・ストレート・ライン
 Walking the Straight Line

6.ウイ・オール・プレイ・ザ・ゲーム
 We All Play the Game
7.ティーチャー
Teacher

8.ライツ・バーンド・アウト
 Lights Burned Out


[Deluxe Editionのボーナス]
9.Back to Earth
10.Hold Back Your Love
11.Soldier of the Line [Live]
12.Sacred Hour [Live]
13.Long Days, Black Nights [Original Version]
(ここまでは通常リマスター盤にも収録)
14.Lights Burned Out [Live]
15.Spirit [Live]
16.Soldier of the Line [Acoustc Version]
(以上3曲は未発表テイク)