EL&P ディスコグラフィー (HINE)



Tarkus
Wea/ Rhino/ビクター

Trilogy
Wea/ Rhino/ビクター

Ladies & Gentlemen
Wea/Rhino/ビクター

Works, Vol. 1
Wea/Rhino/ビクター

Works, Vol. 2
Wea/ Rhino/ビクター
1970年 Emerson Lake & Palmer(エマーソン、レイク&パーマー)
1971年 Tarkus(タルカス)
1972年 Pictures at an Exhibition(展覧会の絵)
1972年 Trilogy(トリロジー)
1973年 Brain Salad Surgery(恐怖の頭脳改革)
1974年 Ladies & Gentlemen(レディース・アンド・ジェントルメン)
*LP3枚組の超大作ライヴ盤
1977年 Works, Vol. 1(ELP四部作)
*3人のソロに1面づつ使い、最後の1面だけがEL&Pとしての作品。LP2枚組
1977年 Works, Vol. 2(作品第二番)
*シングル曲とアウトテイクの寄せ集め集
1978年 Love Beach(ラヴ・ビーチ)
1979年 Emerson Lake & Palmer In Concert(イン・コンサート)
*77年カナダ、モントリオールでのライヴ
1980年 The Best of Emerson, Lake & Palmer(ベスト・オブ・EL&P)<Atlantic>

1992年 Black Moon(ブラック・ムーン)
*再結成第一弾アルバム
1992年 The Atlantic Years(アトランティック・イヤーズ
*リマスターし、CD2枚組に収めたベスト盤
1992年 Live at the Royal Albert Hall(ライヴ・アット・ロイヤル・アルバート・ホール)
*92年イギリス、ロンドンでのライヴ
1993年 The Return of the Manticore(リターン・オブ・ザ・マンティコア)
*CD4枚組のBOXセット
1993年 Works Live(ワークス・ライヴ)
*「イン・コンサート」に7曲追加し、CD2枚組に収めたもの
1994年 In the Hot Seat(イン・ザ・ホット・シート)
*再結成第二弾。「展覧会の絵」のニュー・ヴァージョン収録。
1994年 The Best of Emerson, Lake & Palmer(ベスト・オブ・EL&P)<Rhino>
*「ブラック・ムーン」までのベスト
1997年 King Biscuit Flower Hour: Greatest Hits Live(キング・ビスケット・ライヴ)
*TV放送された74〜76年のライヴ音源の寄せ集め
1997年 Live at the Isle of Wight Festival 1970(ワイト島ライヴ)
*70年の第3回ワイト島フェスからのライブ音源
1997年 Live in Poland(ライヴ・イン・ポーランド)
*97年初のポーランド公演を収めたライヴ盤
1998年 Then & Now(ゼン&ナウ)
*74年カリフォルニアジャムと97〜98年ワールドツアーからのライブ音源の組み合わせ
2002年 The Original Bootleg Series From Manticore Vaults, Vol. 1
    (オリジナル・ブートレッグ・シリーズ・フロム・ザ・マンティコア・ヴォルツ Vol.1)
*CD7枚組
2002年 The Original Bootleg Series From Manticore Vaults, Vol. 2
    (オリジナル・ブートレッグ・シリーズ・フロム・ザ・マンティコア・ヴォルツ Vol.2)
*CD8枚組
2002年 The Original Bootleg Series From Manticore Vaults, Vol. 3
    (オリジナル・ブートレッグ・シリーズ・フロム・ザ・マンティコア・ヴォルツ Vol.3)
*CD5枚組
     
※Vol.1〜3いずれもブート・ライヴ音源の寄せ集というマニア向けアイテム

<EMERSON, LAKE & POWELL>
1986年 Emerson Lake & Powell(エマーソン・レイク&パウエル)

<3(Three)>
1988年 To The Power Of Three(スリー・トゥ・ザ・パワー)

Love Beach
Wea/Rhino/ビクター

Black Moon
Victory/ビクター

In the Hot Seat
Victory/ビクター

Then & Now
ビクター

Emerson Lake & Powell
Polydor/Mercury


EL&P アルバム・レヴュー Written by ぴー


エマーソン、レイク&パーマー
Emerson Lake & Palmer

1970年 Wea/Rhino/ビクター
Recorded at Advision
Arranged & Directed : Emerson, Lake & Palmer
Production : Greg Lake

1.未開人 The Barbarian {Emerson/Lake/Palmer} (4:33)

2.石をとれ Take A Pebble {Lake} (12:34)

3.ナイフ・エッジ Knife-Edge {Emerson/Lake/Fraser} (5:08)

4.運命の三人の女神 The Three Fates (7:45)
 a.クローソー Clotho {Emerson}
 b.ラキシス Lachesis {Emerson}
 c.アトロポス Atropos {Emerson}

5.タンク Tank {Emerson/Palmer} (6:52)

6.ラッキー・マン Lucky Man {Lake} (4:36)

 バンド名がそのままアルバム・タイトルになった彼等のデビュー・アルバムである。意外な事にシンセ・サウンドは、ほんの一部分にしか導入されておらず、キース・エマーソンは、生ピアノとオルガンを主体としたハイレベルなキーボード・サウンドを披露している。それは、ザ・ナイス時代のプレイ、音楽様式の延長なのだが、EL&Pにおいては、リズム陣が格段に強力になり、思う存分に弾きまくれるという環境が形作られたために、より溌剌とした躍動美に富んだ変幻自在なプレイを聴かせてくれる。この作品は、彼等のアルバムの中で最もシックで、アダルトな魅力に溢れた名盤で、私のお気に入りの1枚である。なかでもグレッグ・レイクの甘く繊細なヴォーカルが魅惑的で、キースのピアノ・サウンドが、エキゾチックな雰囲気を醸し出す“石をとれ”は、初期のEL&Pが生んだ傑作である。
 このアルバムでの彼等のサウンドは、クラッシック、ジャズ、民族音楽、そしてロック、それら全ての要素が見事に調和し、斬新ではあるが、違和感は無く、心地よくスムーズに耳に飛び込んでくる。特筆すべきは、エマーソンのインプロビゼーション・プレイの素晴らしさで、まるで泉のように次々とハイセンスなフレーズが湧き出している。
 このアルバムに対して1つ難を挙げるとすれば、ラスト・ナンバーの“ラッキー・マン”によって、作品の持つコンセプチュアルな要素がもろくも崩れ去ってしまっている事である。別項でも書いたが、後半部のシンセサイザーの音が無ければ、“ラッキー・マン”は、ただのフォーク・ソングである。その後も彼等のアルバムの中に、レイクの創り出すこの類の曲が姿を現すと、私は、キース・エマーソンに成り代わり、軽い後悔の念を抱いてしまう。
 さて、このアルバムには、パーマーのロング・ドラム・ソロまで収録されていて、EL&Pと言うグループ名が示す様に、3人が同格の存在である事を主張しているかのようだ。だが、やはりこのユニットのブレーンはエマーソンである。(ぴー)



展覧会の絵
Pictures At An Exhibition

1971年 Wea/Rhino/ビクター
Recorded Live, Newcastle City Hall,
26 March 1971
Arranged : Keith Emerson
Produced by : Greg Lake

1.プロムナード Promenade {Mussorgsky}(1:58)

2.こびと The Gnome {Mussorgsky/Palmer}(4:18)

3.プロムナード Promenade {Mussorgsky/Lake}(1:23)

4.賢人 The Sage {Lake}(4:42)

5.古い城 The Old Castle {Mussorgsky/Emerson}(2:33)

6.ブルーズ・ヴァリエイション Blues Variations {Emerson/Lake/Palmer}(4:22)

7.プロムナード Promenade {Mussorgsky}(1:29)

8.バーバ・ヤーガの小屋 The Hut Of Baba Yaga {Mussorgsky}(1:12)

9.バーバ・ヤーガの呪い The Curse Of Baba Yaga {Emerson/Lake/Palmer}(4:10)

10.バーバ・ヤーガの小屋 The Hut Of Baba Yaga {Mussorgsky}(1:06)

11.キエフの大門 The Great Gates Of Kiev {Mussorgsky/Lake}(6:37)

12.ナットロッカー The End - Nutrocker {Kim Fowley, arranged by EL&P}(4:26)

 個人差はあると思うが、ロックを初めてめて聴こうとする人が、このアルバムを聴いてしまうと、ロック嫌いになる事があるようだ(特にクラッシック信者の中学生は)。ただ、ロックの魅力に目覚めた人には、是非聴いて頂きたい作品である。原曲は言わずと知れた、クラッシックの名曲であるが、実にバリエーション豊かな、飽きの来ない魅力的なアレンジが成されている。このアルバムがオーバー・ダビングを一切行なっていないライブ盤であるという事で、彼等のごまかしの無い最高級の技術とセンス、そして3人でここまでやってしまえるという事実を確認できる。クラッシック・ミュージックという崇高な芸術と、ロックという最高のエンターテイメントの違いと魅力を理解した上で聴かなければ、そのアニメチックでファンタジックなEL&Pサウンドを受け入れる事は難しいだろう。ただ、ロックが与えてくれる、興奮と感激が己の中に芽生えた者なら、彼らが何故この曲のロック・バージョンをあえてライブ用に創造したのかが理解でき、その素晴らしさを堪能できるはずである。
 もちろん、このアルバム自体推奨盤であるが、この時期の違う日時に収録されたライブ映像も是非見て頂きたい。演奏そのものは、アルバムの方が完璧に近いのだが、映像では、彼らが超極上のエンターテイナーである事を確認できる。まず3人全員が今風に言うところのイケメンである。エマーソンは、ビヨン・ボルグ*(古い?)風のワイルドな雰囲気を持ち、グレッグ・レイクは、実に知的で物静かなナルシスト・タイプ(誉め言葉?)。そして、当時若干19歳のカール・パーマーは、アイドル歌手顔負けの甘いマスクの持主であり、元気はつらつな悪戯っ子風。しかもその3人が、世界最高峰のキーボード・プレイを披露したり、渋くセクシーでハートフルな歌声を聴かせたり、宝石の様にキラキラ光る汗を飛び散らせながら、超高速のドラム・コンビネーションを繰り出したりすれば、若い女性ファンはもちろん、むさくるしい男どもだって、その理想のかっこよさに憧れ、狂喜してしまうのは仕方のないことだ。実にクールでいてクレイジー、そしてパーフェクト!それが、EL&Pが繰り広げる華麗なるロックンロール・ショーである。(ぴー)
*Bjorn Borg 70年代に大活躍したプロ・テニス・プレイヤー



恐怖の頭脳改革
Brain Salad Surgery

1973年 Wea/Rhino/ビクター
Keith Emerson -
Organs, Piano, Harpsichord, Accordion, Custom Built Moog
Synthesizers & Moog Polyphonic Ensemble
Greg Lake -
Vocals, Bass, Zemaitis Electric 6 String & 12 String Guitars
Carl Palmer -
Percussion & Percussion Synthesizers
Produced by Greg Lake at Advision Studios

1.聖地エルサレム Jerusalem {Parry/Blake, arranged by Emerson/Lake/Palmer} (2:44)

2.トッカータ Toccata
 {Ginastera, arranged by Emerson; percussion movement - Carl Palmer} (7:23)

3.スティル・・・ユー・ターン・ミー・オン Still... You Turn Me On {Lake} (2:53)

4.用心棒ベニー Benny The Bouncer {Emerson/Lake/Sinfield} (2:21)

5.悪の教典#9 Karn Evil 9 (1st Impression - Part 1) {Lake} (8:44)
 a)Karn Evil 9 (第1印象 1st Impression - Part 2) {Emerson/Lake} (4:47)
 b)Karn Evil 9 (第2印象 2nd Impression) {Emerson} (7:07)
 c)Karn Evil 9 (第3印象 3rd Impression) {Emerson/Lake/Sinfield} (9:03)

 彼らが設立したマンティコア・レーベルからリリースされたこのアルバムは、EL&Pが追い求めて来たサウンドの完成体であり、彼等の作品の頂点に位置している。彼らが創り出すSF的で幻想的な音のアニメーションは、それを具現化するのに最適な武器であるシンセサイザーの発展によって、より高度でバラエティーに富んだ色彩美を放ちここに確立された。
 1曲目の“聖地エルサレム”は、伝統的な賛美歌をアレンジしたものだが、実に勇壮で溌剌としたEL&Pらしいナンバーであり、そこから始まる超大作のプロローグを飾る、最高のオープニング・テーマ・ソングとなっている。それに引き続き収められている“トッカータ”は、原曲がヒナステラ作曲のピアノ・コンチェルトなのだが、そのヒナステラ本人がこのEL&Pの演奏を聴いて、「理想的なアレンジだ。」とコメントしたらしい。3曲目に現れる“スティル…ユー・ターン・ミー・オン”におけるグレッグ・レイク・ワールドも、このアルバムあたりになると実にEL&P的にこなれてきており、名曲である事を素直に認める事が出来る。でも、やはりアルバムの流れの中では突拍子の無い曲ではある。4曲目に収められているのは、実にユーモラスでいかしたホンキー・トンク調のナンバー“用心棒ベニー”であるが、このおふざけ感覚もEL&Pならではである。
 そしていよいよ、彼等の最高傑作であるロック・シンフォニー、“悪の経典#9”の演奏が始まると、聴く者は次第に興奮と感激の渦の中に、知らず知らず引き込まれて行ってしまう。言わせてもらおう!「この曲に文句が有るやつは束になってかかって来い!」・・・・って、うそうそ!皆で一緒に仲良くこの曲を聴いてその後、アニメ『宇宙戦艦ヤマト』と『幻魔大戦』のビデオでも見ましょうよ。そこに貴重な発見があるはずだ(笑)。(ぴー)



イン・コンサート
Emerson Lake & Palmer In Concert

1979年 Wea/Rhino/ビクター
Recorded at Olympic Stadium, Montreal
Mixed by Keith Emerson at Marko Stusiios, Montreal

1.イントロダクトリー・ファンファーレ Introductory Fanfare {Emerson/Palmer} (0:53)

2.ピーター・ガン Peter Gunn {Henry Mancini} (3:34)

3.孤独なタイガー Tiger In A Spotlight {Emerson/Lake/Palmer/Sinfield} (4:09)

4.セ・ラ・ヴィ C'est La Vie {Lake/Sinfield} (4:15)

5.邪教の神、そして悪の精の踊り The Enemy God Dances With The Black Spirits
 {スキタイ組曲 作品20 第2曲 Prokofiev} (2:47)

6.ナイフ・エッジ Knife Edge
 {adapted from Janacek's "Sinfonietta" by Emerson/Lake/Fraser} (5:03)

7.ピアノ協奏曲第1番 第3楽章:トッカータ・コン・フォコ Piano Concerto No.1
 (Third Movement: Toccata Con Fuoco) {Emerson} (6:42)

8.展覧会の絵 Pictures At An Exhibition {Mussorgsky/Emerson/Lake/Palmer} (15:43)

 フルオー・ケストラと6人のバック・シンガーを率いて行なわれた、77年のツアーの模様を収めたライブ・アルバムである。
 かつては、クラッシック交響曲レベルの高度なロック・ミュージックを、たった3人による演奏で、ライブ盤でもほとんどオーバー・ダビングを行わず聴かせ、世界中のリスナー達を熱狂させる事ができた。それが、彼等のロック・グループとしての最大の存在意義であり、選ばれた者にのみ与えられた使命でもあった。その頃の彼らには、世界チャンピオンを目指すボクサーのようなハングリー精神が宿っていたように思う。何でも願いが叶うスーパー・スターに成り上がり、一流のフル・オーケストラを意のままに操れる権力を持った彼等のそのスタンスに、私は何の魅力も感じない。私は、彼らとオーケストラのジョイントによる『展覧会の絵』を聴くぐらいなら、ズービン・メータがウィーン・フィルを指揮する生粋のクラッシック版『展覧会の絵』を聴きたい。ロック的オリジナリティーを放出しまくっていた、メンバー3人のみによる全盛期のEL&Pのサウンドは、その数十倍の人力を擁して披露された、この77年のツアーの演奏など比べ物に無いくらいパワフルで刺激的であった。それが、キーボード・トリオという構成にこだわった、EL&Pの真の魅力だったと私は思う。結果的に、このツアーにおける予算オーバーが、第1期EL&P解散への近道となってしまう。(ぴー)