|
間違いなく90年代屈指の名バンドでありながら、80年代末期から続く現在の病んだ英米音楽シーンの状況下にあっては、まったく日の目を見ることがなかったバンドがいくつもある。 テラ・ノヴァが結成されたのは1992年のオランダ。少年時代から一緒にバンド活動をしてきたフレッド&ロン・ヘンドリックス兄弟とNINE
LIVESというバンドでフレッドといっしょだったジェスイーノが中心となって活動をスタートさせた。オランダと言えばすぐに思い浮かぶのがフォーカス、オランダで初めて世界的に活躍したプログレ・バンドだった。その影響もあって、あまりオランダにハードロックやヘヴィメタルのイメージはなかったが、近年ロビー・ヴァレンタイン、ヴァレンシアなどの活躍によって徐々にそのイメージは失われつつある。また、このテラ・ノヴァの出現によって、さらにオランダという国のイメージも変わったことだろう。 テラ・ノヴァ解散後、フレッドはソロ・アルバムの準備を進め、他のメンバー達も別々に活動してゆくことを決意し、一旦はちりぢりとなった。ところが、ロンとジェスイーノは、再びフレッドのもとへ舞い戻り、アクイラというバンドを結成することとなった。残念ながらドラムのラーズだけはV-MALEというオランダのバンドですでに活動をはじめていた。このアクイラはよりポップなサウンドになり、アルバム「セイ・イェー」を2001年にリリースしている。2002年にはTENとのジョイント・ライヴのため来日。テラ・ノヴァ時代の曲も披露し、TENとは対照的に好評を博したようだ。 協力:MSG |
Livin' It Up King/ビクター |
Break Away King/ビクター |
Eye To Eye Frontiers |
ディスコ・グラフィー 1996年 Livin'
It Up(リヴィン・イット・アップ)*デビュー・アルバムとは思えないほどの完成度を誇る名作 |
1 . ラヴシック Lovesick 2 . メイク・マイ・デイ Make My Day 3 . アイ・トゥ・アイ Eye To Eye 4 . ヒアズ・トゥ・ユー Here's To You 5 . アノマリー Anomaly 6 . ワイルド・シング Wild Thing 7 . アイ・キャント・ウェイト I Can't Wait 8 . ナッシング Nothing 9 . ホエア・アイ・スタンド Where I Stand 10.アイ・ウィル・ビー・ゼア I Will Be There 11.プロミス・ユー・ウェイト Promise You Wait 12.ハウ How(※終了後に隠しトラックあり) |
|
このアルバムは、オランダが誇るメロディアス・ハードの名バンドであるテラ・ノヴァが放った3作目にしてラスト・アルバムの名盤だ。ファースト・アルバムで既に全曲完成度の高いすばらしい曲を披露していた彼らであったが、つづくセカンド・アルバムでは曲数が多くなったためか、後半もてあまし気味な感じもあった。しかしこのサード・アルバム、3枚目だというのに、いっこうに衰えないメロディセンスの良さ、ますます磨きがかかった演奏力、そして音楽的な幅を持たせ、12曲というボリュームのある曲数をまったく飽きさせない構成。まさに完璧だ!本当に恐ろしいまでの彼らの才能には驚かされる。 テラ・ノヴァと言えばバラードの素晴らしさも定評のあるところだが、このアルバムにも極上のバラード曲「ヒアズ・トゥ・ユー」と「ハウ」が入っている。特に「ヒアズ・トゥ・ユー」は良い意味でいつものテラ・ノヴァ(熱唱系)らしくない、サビの部分が静かに語りかけるようなタイプになっている名曲だ。 その他の注目曲を順に紹介すると、5曲目の彼ら初のインストゥルメンタル・ナンバーは、リード・ギターのジェスイーノがかいた曲で、曲の良さもさることながら、演奏技術の成長ぶりがうかがえる仕上がりだ。ついでに記しておくと、テラ・ノヴァのほとんどの曲を書いているのはヴォーカル&ギターのフレッド・ヘンドリックスで、単独でジェスイーノが曲をかくのは初めてのことだ。 7曲目には、これもめずらしいカントリー調の曲。アコースティック・ギターとコーラスを前面に出し、途中のギター・ソロもカントリー風のフレーズを弾いて曲を盛り上げている。アメリカン・ハードの連中はよくこういったタイプの曲をやるが、彼らほど泥臭い感じはなく、さらっとした明るい曲だ。 また、日本のためにかいたという10曲目の「アイル・ビー・ゼア」は、彼らの全楽曲中でも一番の異色ナンバーで、これがまたすばらしい!3拍子のワルツ・タイプで構成され、バイオリンやアコーディオン、オーボエ(クラリネットかも?)などを使用してノスタルジックな雰囲気を出しながらも、途中にはクイーン風多重録音によるコーラスとギターのハーモニーを思わせるパートが入り、スケールの大きなサウンドを生み出している。 緩急をつけたバランスの良い楽曲。しかもすべてが名曲揃い。そして確かな演奏技術。どれをとっても文句のつけようがない90年代最後の名盤。しかも何故かすでにデジタル・リマスターを施され、日本盤でリリースされている。これを聞かずに21世紀を迎えたメロディアス・ハード&ハード・ポップ・ファンは、即刻CDショップに駆け込もう!(HINE) |