イギリスの産業ロック
Brian Connolly ブライアン・コノリー/リード・ヴォーカル
Mick Tucker ミック・タッカー/ドラムス、ヴォーカル
Andy Scot アンディ・スコット/ギター、ヴォーカル
Steve Priest スティーヴ・プリースト/ベース・ギター
80年代アメリカのロック・バンドが売れすぎて“産業ロック”だと皮肉られるずっと以前から、イギリスでは売れすぎて軽視されるバンドが多かった。中でもこのスイートやスージー・クワトロなどは、共にNicky ChinnとMike ChapmanによるChinn
& Chapmanクレジットのヒット曲が多く、非常にポップでビジュアル的にもうけたため、アイドル扱いされセールスとは裏腹に評価が低かった。
しかし、真の実力は彼ら最大のヒット曲「フォックス・オン・ザ・ラン」や「アクション」が自作であったことからも伺い知れる。しかし、音楽ビジネスに惑わされ、最後まで本領を発揮できないまま、リード・ヴォーカルのコノリー(当時はコネリーと紹介されていた)離脱によってバンド自体の勢いを失っていったように思えてならない。
後にディープ・パープルのメンバーとなるイアン・ギラン&ロジャー・グローバーやコノリー&ミックがいっしょに結成したウェインライツ・ジェントルメンというバンドが前身となり、スイートの歴史は始まる。
このバンドは68年にコノリー、ミック、スティーブ、Frank Torpey(g)というメンバーになり、Sweetshopという名に変えていた。彼らは4枚のシングルをリリースしていたが、いずれもまったくヒットしないままフランクが抜け、70年にアンディ・スコットと交代し、RCAレーベルへ移籍した。
RCAで彼らは当時の人気コンポーザー・チームChinn & Chapmanから曲を貰い、ポップ・グループとして売り出されることになった。
これが的中し、71年シングル「ファニー・ファニー」が全英13位のヒットを記録。その後も「Co-Co」「リトル・ウィリー」などが立て続けにヒット。
だが、時代はハードロックが主流で、プロモーター達は今度は彼らを当時流行しはじめたグラム・ロッカーに仕立てようと画策するのであった。
そしてこれがまた大成功し、Chinn & Chapmanの作曲による、「ブロック・バスター」は初の全英No.1に、つづく「ヘル・レイザー」「ロックンロールに恋狂い」「ティーン・エイジ狂騒曲」も大ヒットを記録した。
74年、彼らはセカンド・アルバムをリリースするが、ここではChinn & Chapmanが多忙によりあまり関われなかったので、自らの手でほとんどの曲を制作した。
このアルバムはそれまでの彼らの知名度から27位まで上昇したが、シングル・ヒットも出ず成功とは言えない結果だった。
だが、このアルバムでみせたサウンドは、彼ら独特のハーモニー(クイーンの“天使のハーモニー”に対して“悪魔のハーモニー”と言われた)やエッジの効いたハードなギターなど、その後の彼らのサウンド方向を決定づけるものであった。
そして75年、ついに彼らの魅力が爆発。自ら作曲した「フォックス・オン・ザ・ラン」が今まで以上の大ヒットを記録し、全英2位、アメリカでも5位の大ヒットとなった。日本でもこの曲はかなりヒットし、ちょうどその頃出された「ライヴ&ベスト」はかなり売れたものだ。
この成功により自信をつけた彼らは、Chinn & Chapmanとの決別を決意。76年初めてのオール自作曲アルバム「甘い誘惑」をリリースすると、これがまた爆発的なヒットを記録する。
中でも大ヒット・シングルとなった「アクション」はスピード感とハーモニー、スリリングな曲展開、効果音の使い方など文句の付けようが無いくらい素晴らしく、後にデフ・レパードがカヴァーするなど、後世まで伝えられる名曲だ。
彼らが来日したのもこの頃で、当時日本ではなんとクイーンのライバルとして騒がれていた。
彼らはその後も「愛の炎」「愛が命」などヒットを生み出すが、しだいにまたポップ色が強まりロック・ファンからの支持は弱まっていった。そして79年ヴォーカルのコノリー脱退が決定打となってパッタリ人気は衰えた。
その後残った3人だけで、キーボードを多用したAOR風サウンドのアルバムを3枚リリースするが、いずれもパッとせず、82年ついに解散に追い込まれた。
それから数年が経ち、85年になるとイギリスで突然「It's the Sweet Mix」というスイートのヒット曲をメドレーにしたダンスチューンがヒット。
これに気をよくしたのか、85年コノリーが単独でスイートを再編成。NEWスイートとして活動を始めた。すると86年、アンディもミックを誘い、別のスイートを一時的に再結成しツアーを行った。こちらの音源は89年に「Live
at the Marquee」としてリリースされている。
コノリーの新生スイートは87年まで活動したが、成功を収めぬまま解体した。
そして91年、アンディ・スコットが新しいメンバーで新生スイートを結成、翌92年にはアルバム「A」も発表し話題なった。このAndy'sスイート、95年にもオリジナル・アルバムを出している他、往年のスイートの曲をカヴァーしたりして現在も活動中らしい。それに対しコノリーもまた95年Connolly's スイートを結成し、一時は2つのスイートが誕生するという異常事態となったが、本人達は共演したり、かなり友好的だったもよう。この後、もしかしたらオリジナル・メンバーでの再結成が見られるのではと密かに期待したが、97年コノリーが他界し僅かな期待も夢と消えた。
スイート、現存の音源事情
残念なことに、彼らはプロモーター達にさんざん利用されたため、単発のシングル曲が多かった。そのため初期のアルバムではChinn
& Chapmanのポップな曲と彼ら本来のサウンド(ハードロック)が混在し、どれもまとまりがない。
また、ヒット曲がいろんなアルバムでダブっていたり、アルバムに収められていない曲があったりと、アルバム購入にあたってはかなり迷うところだ。
お薦めはやはり、「フォックス・オン・ザ・ラン」「アクション」「恋はだましあい」が入っているアルバム「甘い誘惑」だが、他にもたくさんの名曲があり、シングル・ヒットをすべて押さえるにはベスト盤しかない。
だが、これはいっぱい出ているわりに重要曲が抜けていたり、なかなか選定に苦しむ。イチオシは「The Best of Sweet」と「Electric
Landlady」の組み合わせがダブリが少なく比較的どこでも手に入る。いずれにしろUS盤とUK盤、日本盤で内容が違うものが多いので、曲目をよく確認した方がいいだろう。
もう1つ付け加えておくと、90年代にアンディを中心とした新生スイートやコノリーの新生スイートが、往年の曲をカヴァーしたアルバムなどを何枚か出している。安価だと思って見たこともないアルバムに手を出すと、コレの可能性があるので、コアなファン以外は注意が必要だ。(HINE) 2001.6
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