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ヘヴィ・メタル・ブーム最後の大物 アメリカと日本やヨーロッパでそれぞれ評価の分かれるバンドはたくさんいる。それは主に活動拠点などからくることが多いのだが、最近では情報網の発達や、日本も含む世界ツアーなどが当たり前になってきているので、そういった状況はかなり解消されてきたことは確かだ。 C.J. Snare C.J.スネア/ヴォーカル、キーボード メロディック・メタルあるいはポップ・メタルと呼ばれる彼らのサウンドは、デビュー前からすでに話題になっていた。それというのも、彼らのデモ・テープを聞いた、あのジョン・ボンジョヴィ(g)がとても気に入り、強力にバックアップしてくれたからである。 アメリカの音楽シーンとの決別 そしてその方向性をより強め、満を持して95年にリリースしたサード・アルバム「3」では、全曲共に素晴らしく、静と動、softとHeavyをうまく使い分けた内容だったにも関わらず、シングルの「Here
For You」と「I Live My Life For You」はスマッシュ・ヒットはしたものの以前のような勢いはなく、アメリカでの評価は低いものだった。 Special Thanks:Madoka A |
Firehouse(輸入盤) Epic Record |
Hold Your Fire Epic/Sony |
3 Epic/Sony |
Category 5 Mystic Music/Pony Canyon |
Bring'em Out Live Spitfire Records/Pony Canyon |
O2 Spitfire Records/Pony Canyon |
ディスコ・グラフィー 1990年 Firehouse(ファイアーハウス)*日本発売は91年。アメリカでデビューとともに爆発ヒットし、ダブル・プラチナムを記録 |
Good Acoustics Firehouse 1996年 Epic/Sony |
1.ユー・アー・マイ・レリジョン You Are My Religion 2.ラヴ・ドント・ケア Love Don't Care 3.イン・ユア・パーフェクト・ワールド In Your Perfect World 4.ノー・ワン・アット・オール No One At All 5.ラヴ・オブ・ア・ライフタイム Love Of A Lifetime 6.オール・シー・ロート All She Wrote 7.ホエン・アイ・ルック・イントゥ・ユア・アイズ When I Look Into Your Eyes 8.ドント・トリート・ミー・バッド Don't Treat Me Bad 9.ヒア・フォー・ユー Here For You 10.アイ・リヴ・マイ・ライフ・フォー・ユー I Live My Life For You 11.セヴン・ブリッジス・ロード Seven Bridges Road |
まあ、よくもアルバム3枚をリリースしただけの間に、これだけの名曲をいっぱい作ったものだ。90年に登場以来ヘヴィメタル・バンドでありながら、楽曲の良さを最優先したサウンド作りを心がけてきたファイアーハウスではあったが、こうして全編アコースティックともなると、そのメロディーの良さがさらに浮き彫りになる。また、全曲を通じて感じられるのは、アメリカ土着のカントリーやブルースといった音楽の香り。彼らの根底には常にそういった音楽の基盤があり、聞く者に安らぎや安堵感を与える。このアルバムに限って言えば、たとえ彼らのファンでなくても、いわゆるアメリカン・ロック好きが聞けばまったく違和感なくすんなりと受け止めることができるだろう。 全編アコースティックといっても、ギター・ソロなどにはエレクトリックも併用していて、無理に何が何でもアコースティック・オンリーというわけでもない。とても自然にアコースティック・サウンドを楽しんでいるといった印象だ。 各曲を聴いてゆくと、ほとんどがそれまで彼らがリリースした3枚のアルバムからのベスト・ソングで、新曲は3曲(1〜3)、イーグルスやリタ・クーリッジもやっていたスティーヴ・ヤング(カントリー・シンガー)の曲を1曲(11)カヴァーしている。過去の発表曲はいずれも、もともとアコースティック・テイストが盛り込まれた曲であったが、本作に入っているのはすべて別アレンジの新録音で、こちらのヴァージョンの方がみな出来が良い。新曲3曲は、どれもが他の曲と同様の完成度を持ち、このアルバムから初めて彼らを聞くリスナーには、まったくどれが新曲なのか区別がつかないことだろう。9曲目、10曲目についてはアルバム「3」に入っていた原曲とほとんどアレンジも変えていないが、本当に名曲なので、変えようがなかったのかもしれない。何度聞いても良いものは良い!彼ら自身そのことはよく心得ているのだろう。 とにかく、いかにもヘヴメタ然としたバンド名は気にせず1度聞いてみて欲しい。ただ単にアンプラグド・ブームに乗って作ったアルバムではなく、彼らが真の実力を持つバンドで、このアルバムは「本物」の名盤であることがわかるはずだ。(HINE) |