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member(左から) Joe"JV"Vana ジョー・ヴァナ/ヴォーカル Fergie Frederiksen ファギー・フレデリクセン/ヴォーカル Shannon Forrest シャノン・フォレスト/ドラムス Jimmy Nichols ジミー・ニコルズ/キーボード David Hungate デヴィッド・ハンゲイト/ベース・ギター Mike Aquino マイク・アキーノ/ギター 以前TOTOのことを調べていた時に偶然見つけたのが、このメッカというバンド。TOTO関連のサイトなどではアルバム発売当時かなり話題になっていたらしいが、ほとんどプロモーションもしていないであろうこのバンドの存在について、一般のリスナーにはほとんど伝わっていない。 実は、メンバーも元TOTO出身者が2人いて、プロデュースが元サヴァイヴァー出身者とくれば、何か商業主義的な香りも漂っていたが、ひとまずTOTOファンとしてはコレクションしておこうという動機でCDを手に入れたのだ。 しかしこれが、思わぬ名作で驚いた。しかも聴くほどに味の出る名曲揃い。サウンドはズバリ、メロディアス・ハード。そう、あのフレデリクセン時代のTOTOを連想させる、スマートな中にもエモーションを感じさせるものだ。 資料が少ないので、国内盤のライナー(中田利樹氏)をもとにバイオグラフィーなどを紹介しておくと、そもそもこのバンドはヴォーカルのジョー・ヴァナのデモ・プロジェクトとして1999年に誕生したらしい。ヴァナは当時、元サヴァイヴァーのJim Peterikジム・ピートリック(vo,g)のバンドで活動していたシンガー・ソング・ライターで、ピートリックと共に書いた曲の数々を完全な形にして世に送り出そうという目的でこのプロジェクトを発足させた。 当初はProject Voyagerと名乗っていたこのプロジェクトに、ヴァナがまず呼び寄せたのが、自らのギターの先生であり、曲も一緒に書ける才能の持ち主マイク・アキーノだった。次にピートリックにプロデュースをオファーし快諾を受けると、新たな曲作りも一緒に行うようになった。だが、もともと自分のソロ・アルバムを作るつもりではなかったヴァナは、しだいにアグレッシヴな曲では自分よりもっと適任のヴォーカリストがいるのではないかと考えはじめ、かねてより友人であったフレデリクセンに参加を依頼した。そして、次にヴァナがどうしてもこの音が欲しかったというベースのハンゲイト。彼はTOTO脱退後もポップ、カントリー、ジャズなど幅広いジャンルで活躍する超VIPのセッション・プレイヤーだが、いっしょに仕事をしたことのあるピートリックがメールでバンド参加への打診をしたところ、すぐに承諾し、ドラムのシャノン・フォレストまで紹介してくれたそうだ。最後にピートリックのバンドでプレイしていたカントリー系を得意とするキーボード・プレイヤーのジミー・ニコラスも加えフル・バンドが完成。バンド名もMeccaと改め本格的にレコーディングを開始した。 曲はほぼピートリックとヴァナにフレデリクセンを加えて作られ、ボーナストラックに収録された1曲にのみニコルズも共作している。レコーディング・スタジオには、ジョン&ディノ・エレファンテ兄弟(弟のジョンは元カンサスの2代目ヴォーカリスト)が所有するサウンド・キッチンで行われ2002年に完成。日本のみのボーナストラック付きで、この年のうちに日本先行発売されたが、アメリカでの発売は翌2003年(ボーナスなし)となっている。 さて、完成したアルバム内容の方だが、これが冒頭でも言った通りかなりの名作。まずジャケットだが、Meccaというバンド名はアラビア語のMakkah(Muhammadの出生地でイスラム教の最も神聖な都市)の含みもあるようで、砂漠の中に古びた古代遺跡の時計のようなものが描かれその雰囲気を出している。これはなかなかいい。 そして音の方だが、1曲目からあの懐かしいフレデリクセンのシャウトが全開だ!その歌声は相変わらずパンチの利いたハイトーンが健在で、TOTO時代より少し角が取れ、より情感を深く感じさせる。2曲目のメロウなハードAOR風ナンバーはヴァナがリードヴォーカルをとるが、彼もなかなか上手い。イントロのピアノのメロディーが印象的ですばらしい曲だ。そしてこのアルバムのハイライトとも言える3曲目、なぜフレデリクセンに参加を要請したのかという問いの答えがここにある。この曲ではダブル・リードヴォーカル・スタイルをとり、ヴァナとフレデリクセンが交互に唄うのだが、フレデリクセンの圧倒的なパワーの前にヴァナの声は霞んでしまう。さすがにTOTOが選んだ超一流ヴォーカリスト、格の違いをまざまざと見せつけられる。とはいえヴァナも決して下手ではなくむしろ上手い。そのデリケートな歌声はフレデリクセンが苦手と思われる4曲目のようなバラードでうまく生かされている。また、この曲の後半部分では、ハンゲイトの懐かしい和音のベース・フレーズが飛び出し思わず笑みがこぼれる。後半9曲目のピートリックの曲は、往年のサヴァイヴァー風で、フレデリクセンの熱唱が特にすばらしい。TOTO時代よりもハートにビンビン伝わる説得力は、その後の様々な経験が生かされているのだろうか。 その他の曲もボーナストラックを含め、全曲じっくりと丹念に作り上げられたもので、ヴォーカルが2人いて飽きさせないことも、良い結果へ作用している。売ろうというよりも良い音楽を残したいという作風。メロディアス・ロックを心から愛する人にお薦めしたい逸品だ。 尚、本作発表後は、各メンバーの単独行動を含め、まったくといっていいほど動きがない。ぜひ次作もあることを期待したい。(HINE)2004.5 |
Mecca メッカ 2002年 Avalon/Marquee/Victor |
1.ヴェロシタイズド 2.ウィズアウト・ユー 3.キャント・ストップ・ラヴ 4.サイレンス・オブ・ザ・ハート 5.ユー・スティル・ショック・ミー 6.メッカ |
7.ウィッシング・ウェル 8.クローズ・ザット・ギャップ 9.ブラインデッド・バイ・エモーション 10.フォーリング・ダウン (*ボーナストラック) |