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Human Racing MCA/Victor |
The Riddle MCA/Victor |
Radio Musicola MCA/Victor |
The Works MCA |
15 minutes Rhino/Rock Records |
ディスコ・グラフィー 1978年 Outlandos D'amour(アウトランドス・ダムール)* |
1.シンクロニシティー I Synchronicity I 2.ウォーキング・イン・ユア・フットステップ 3.オー・マイ・ゴッド 4.マザー 5.ミス・グラデンコ 6.シンクロニシティー II |
7.見つめていたい Every Breath You Take 8.キング・オブ・ペイン 9.アラウンド・ユア・フィンガー 10.サハラ砂漠でお茶を 11.マーダー・バイ・ナンバーズ |
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70年代前半に活躍したほとんどのバンドたちが、どんどん緻密で装飾的なサウンドになっていったのに対し、彼らはどんどん贅肉をそぎ落とし、シンプルなサウンドの中に幅広い音楽のエッセンスを詰め込んだ。今思うと、「ニューウェイヴ」とひとくくりにされては失礼なほど、彼らの音楽は高度で、その後のオルタナ系サウンドをも飲み込んでしまうほど先進的なものであった。 彼らのこれまでのアルバムには、常に実験的要素をもった曲が大半を占め、良作はあっても名盤とまで呼べるようなものはなかったように思う。しかし、このアルバムでは、彼らのそういった試行錯誤の進化の歴史を集大成したような側面もあり、パンクやプログレ、ジャズ、ラテン、アフリカン・ビート、レゲエなどのテイストをちりばめながら、それを実験的なものとして終わらさずに、ポップなメロディーに乗せ、とても聞きやすく仕上げている。いわばポリス・サウンドの完成型とも言えるだろう。 まず1曲目は、ポップでハイテンション、初期からのファンも納得させるノリの良いロック・ナンバー。シングルになっても良さそうな曲だが他に名曲がありすぎてシングル・カットには至っていない。 つづく2.では、うって変わってアフリカの民族音楽っぽい曲調。スティングの哀愁を帯びた歌声もピッタリはまっている。上手い! 3.はソロになってからのスティングを想わせるジャズっぽい曲。後半のサックスもなかなかいい。 4.はアンディ・サマーズの曲で、めずらしく彼自身が唄っている(叫んでる?)のだろうか!?スティングの声ではないようだ。この曲はアルバム中でも一番の異色曲で、まるで気が狂れているかのような唄いっぷりが面白い。 5.は唯一コープランドの作。ラテンっぽい曲調だが、ドラマーの曲らしく普通のリズムではないところがミソ。 つづく6.〜9.は名曲オンパレード。まずは6の「シンクロニシティーII」。1.と曲名は同じだが、共通点はアップ・テンポというだけで、まったくの別メロディー。おそらく歌詞に関連があるのだろう。この曲はサード・シングルとなり、全英17位/全米16位のスマッシュ・ヒットを記録している。 7.は言わずと知れたポリス最大のヒット曲で、全英全米ともに1位、なんと米ビルボード誌に8週も連続でNo.1に居座りつづけた。その時点では、ビートルズの「ヘイジュード」がもつ9週連続No.1に次ぐ2番目の記録だった。 8.は木琴(?)とピアノで静かにリズムを刻む音に始まり、そこへスティングの寂しげな声がこだまする。静寂から一変してディストーションのかかったギターと共にハードなサウンドへと移り変わる。こういった展開は、後のオルタナティヴ系アーチストが好んでよくやる手法だ。この曲もシングル・カットされ、全英17位/全米3位の大ヒット。 まだまだ名曲は続く・・・。9.は個人的に一番大好きな曲。シンプルで繰り返しが多いメロディーだが、スティングのどこか寂しげで乾いた声やコープランドの巧みなドラミングを生かしきった名曲中の名曲だ。英ではセカンド・シングルとして7位まで上昇。米では4th.シングルにも関わらず8位まで上昇するという驚異的な人気を示していた。 終盤残り2曲は、もうほとんどスティングのソロのような印象。非常にシンプルな「骨と皮だけ」のような演奏で、どちらもジャズっぽい。サマーズのギターは、もはや効果音的に使われるだけ。しかし、ラスト11曲目のコープランドのドラムはかっこいい! シンプルな中にも計算し尽くされた構成が光り、メロディーもいい。その昔、ビートルズがオールドウェイヴ的なロックの切り口をすべてやり尽くしてしまったとすれば、ポリスのこのアルバムまでの道のりは、その後現在に至るニュー・ウェイヴ的(グランジやオルタナティウも含む)サウンドをすべてやり尽くしてしまったと言えるのではないだろうか。(HINE) |