MAGMA  Written by suma

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いきなり大きな画像を貼ってしまい申し訳ないが、これがフランスを代表するプログレッシヴロックバンド「MAGMA」75年時のメンバーである。
彼らのことを「コバイア星人を名乗るジャズロックオペラグループ」としか知らなかった僕は、ふとネットで見つけた、この圧倒的存在感を放つ写真に衝撃を覚え、彼らに興味を持つことになる。その音楽が、この写真を遥かに凌駕するほどのインパクトを持つものだとは露知らず…

メンバーは左から 
Stella Vander(Vo)・Christian Vander(Dr)・Jean-Pierre Assline(Key)・Didier Lockwood(Violin)
Bernard Paganotti(B)・Benoit Widemann(Key)・Gabriel Federow(G)・Klaus Blasquiz(Vo)


このメンバーで、ロックライブアルバム10傑に入ると言われるほどの名盤、「マグマ・ライブ」が録音されている。

このうち1stアルバムから在籍しているのは、リーダーのクリスチャン・ヴァンデ(Dr)・オペラチックなコバイアコーラスを聴かせる
クロース・ブラスキス(Vo)のみで、他のメンバーは途中参加だったり一作のみで脱退したりと非常に流動的であるが、ヴァンデの奥様で元アイドル(というかアンチアイドル) ステラ・ヴァンデ(Vo)・フランスが誇る狂気のベーシスト、ベルナール・パガノッティ(B)、そして当時一時脱退しており写真には収められていないが、ヴァンデを凌駕するほどの個性的爆音地鳴りベーシストヤニック・トップ(B)は継続的にアルバムに参加し、サウンドに大きく影響を与えたMAGMA史にとって非常に重要な人物であるので記しておきたい。


MAGMAの歴史

MAGMA結成は1969年、ジャズドラマーとしてイタリアを放浪していたクリスチャン・ヴァンデが「神からの啓示」を受け急遽フランスに帰郷、自分の音楽活動を模索していくうちMAGMA結成に至ったというのが始まりらしい。
彼らの始めの二作では、MAGMAの代名詞と言うべき「天から降ってきたコバイア星人の言語」コバイア語によるヴォーカルはすでに行われているが、サウンド的にはジャズロックの域を出ない地味なものであった。

音楽的に変化が現れるのは73年、「天から受信」した「THEUSZ HAMTAAHK 3部作」の第三章、ヤニック・トップとステラ・ヴァンデを迎えて製作された3rdアルバム「Mekanik Destruktiw Kommandoh」(通称M.D.K.)から。
クロースとステラによる反復コバイアコーラス、ヴァンデのダイナミックな超人的ドラムス、そしてトップの地鳴りベースが複雑に絡み合うこのアルバムは彼らのスタジオ最高傑作として名高い。

この「THEUSZ HAMTAAHK 3部作」、少々構成が複雑で、前述の3rdアルバムが第三章、そしてヴァンデのソロとしてリリースされた74年の「Wurdah Itah」が第二章にあたり、第一章の「Theusz Hamtaahk」に至ってはアルバムリリースされておらず、ライブ盤にのみその名前を発見することができる。もし収集するときは混乱のないように。

その後は4th「Kohntarkosz」・5th「MAGMA Live!」・6th「Udu Wudu」と立て続けに名盤をリリースしていくが、この辺りから徐々にファンク路線に傾倒していくようになり、ラストアルバム「Merci」発表前にはMAGMAサウンドの要クロースが脱退、コバイア語も姿を潜め、英詩で歌うポップなMAGMAはファンに衝撃を与え、結局MAGMAは1984年に解散してしまうこととなる。


解散後、ヴァンデは前々から暖めていたプロジェクト「Offering」を始動させる。
「歌うMAGMA」と形容されるOfferingのサウンドは、ラストアルバム「Merci」発表以前から大枠が固まっていたようで、前述したように、このアルバムはMAGMAの作品というよりはOfferingの形に近い、ポップでファンキーな歌メロを中心に据えた作風となっている。
Offeringとして数枚のスタジオアルバムとライブアルバムを発表した後、ヴァンデはソロ活動へと移る。
その他ヤニック・トップやステラ・ヴァンデもソロとして作品を残し、また「マグマライブ」のヴァイオリニスト、ディディエ・ロックウッドは今やフランスジャズ界の巨匠に成り上がり、MAGMA人脈一番の成功者と言われるほどに。

MAGMAとしての活動が再開されるのは1996年。
ヴァンデ夫妻以外のメンバーを全て一新して、決して懐古的でない前向きでパワフルなライブ活動を精力的に続け、1998年には念願の初来日を果たし、その後も2002年に来日。その演奏・勢いは全盛期にもまったく劣らない。

そして2004年の暮れ、念願のMAGMAニューアルバムがリリースされた。
「Merci」以来約20年ぶりとなるそのアルバムの名前は「Kohntarkosz Anteria (KA)」。
74年の作品「Kohntarkosz」の序章的なものに当たるこの組曲は元々71年から72年に渡って書かれたもので、73年に3回ライブで演奏されたのみでお蔵入りとなってしまった言わば幻の曲。
とあるMAGMAコピーバンドが、劣悪なテープからこの曲を再現させることに成功し、これに興味を持ったクリスチャン・ヴァンデが2002年のライブよりK.A.をレパートリーとして加え、徐々にアレンジを練り上げていった。
そして遂に完成形を見たこの曲が、ようやくスタジオ盤としてリリース。まさに往年のMAGMAを思わせるハイテンションで暴力的な演奏・展開は素晴らしいの一言に尽き、ボーカリストとして参加の、元MAGMAベーシスト、ベルナール・パガノッティの子供であるヒミコ・パガノッティとアントワーヌ・パガノッティも非常に良い味を出している。
決して「未発表曲の再録音」では済まされない、まぎれもなくMAGMA傑作のひとつである。

前述したように来日は98年、02年、そしてもうそろそろ3度目の来日があってもいいのでは…?


MAGMAサウンド

彼らのサウンドは比類無き孤高のオリジナリティを持ったものであり、言葉で説明するのが非常に難しい。
無理やりジャンル分けするとすれば、「ヘヴィ・オペラ・ジャズロック」になるだろうか…?
フォロワーとしては、元MAGMAメンバーの率いるZAOなどが見受けられるが、「MAGMAタイプ」のバンドは存在しないといってもいいだろう。
他のバンドに例えるなら暴力的なKing Crimson、一人の絶対的なリーダーが音楽の方向性のイニシアチブを握っているところや、木の根のように深く広い人脈などに共通点が見られるような?
特徴としては、ギターやキーボードが完全に脇役となってしまっているところが挙げられる。
MAGMAサウンドを牽引するのは、ヴァンデの重く手数の多い迫力あるドラミングと、トップ・パガノッティによる地を這うような爆音のベース、この二つのリズムセクションのみである。
(「マグマライブ」においては、若干17歳の天才ヴァイオリニスト ディディエ・ロックウッドが大活躍しているが)
そこにクロース&ステラのオペラ的コバイアコーラスが被さる様は、さながら暗黒宗教音楽のようであり、あまり人前では聴きたくない、非常にテンションの高いダークで重い音楽である。まぁ聴いていただければすぐ分かるかと。


MAGMA音源事情

MAGMAの音源事情には少々厄介なものが付きまとう。
まず発売元レーベル、これにはMAGMAが直接管理するフランスのSeventh Recordsと米英での販売権を持つCharlyレーベルがある。このうちCharlyの出すCDは、販売における利益がまったくMAGMAに還元されない上、音質も直接MAGMAのタッチできるSeventhより劣る代物。特に名盤「マグマライブ」のCharly盤は、Seventh盤では二枚組であったのを編集によりCD1枚に納めており、冒頭の掛け声「ハマタイ!」など様々な聴き所がカットされてしまっているので、このアルバムに限らず、MAGMA関連のCDは極力Seventh盤を入手したい。しかし、日本で広く出回っているビクターの紙ジャケは、Charlyより権利を購入して発売されているもので内容もCharly盤に準じたものとなっている。
リマスターとあるが効果のほどは怪しく、何よりこれも利益がMAGMAに還元されないのだ。現在では、Seventh盤を入手する為にはフランスからの輸入か、キングレコードの旧国内盤を中古で入手するしか方法が無い。「K.A.」のみはSeventh Recordsと契約したキングレコードから国内盤が出ているので安心だが…状況が一刻も早く改善されることを願う。

ちなみにSeventh盤CDの背には、下図のような縞模様が入っているので購入の際に目印にすると良いでしょう。
seventh.jpg(4448 byte)



Discography

やたらたくさん出ているライブアルバムは割愛。

1970 MAGMA
1971 1001゜ CENTIGRADES
1973 MEKANIK DESTRUKTIW KOMMANDOH
1974 WURDAH ITAH  クリスチャン・ヴァンデ名義だが実質MAGMAの作品
1974 KOHNTARKOSZ
1975 MAGMA LIVE!
1976 UDU WUDU
1978 ATTAHK
1984 MERCI
2004 KOHNTARKOSZ ANTERIA

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ALBUM GUIDE

神話と伝説: 第二章
Mythes Et Legendes: 2



マグマ

MAGMA




2006年 Seventh

〜New Disc Revueより転載

昨年5月にフランスで行われた、結成35周年記念のライヴを収めたDVD。全4集予定の第2集が発売になった(輸入盤)。先に発売された第1集も見送っているので当初コレも買うつもりではなかったのだが、曲目リストの中に「De Futura」の文字が見えたのでつい買ってしまった……。


クリスチャン・ヴァンデにしてもヤニック・トップにしてもその動く姿を拝むのはこれが初めてなので、既に御存知の向きからは「ナニを今更」という声が聞こえてきそうだが、本作は衝撃のDVDである。いや、衝撃的なのはMAGMAの存在そのものか。
一体この音楽集団の集中力というものは、何処から来るのだろうか。本作に納められている「WURDAH ITAH」と「MEKANIK DESTRUKTIW KOMMANDOH」は、何れも40分を超える大作である。それを間断なく演奏し続け、ほぼ全員が客席を向いてメンバー間のアイコンタクトも無しで、転調、テンポのアップダウン、コーラスとのバトル……等、全てをやってのける。その姿は既にミュージシャンとしてのそれではなく、闘う修行僧達と云った方がいいだろう。それもトラピスト派やヴェネディクト派の様にビールやワイン作りに砕身していた人達ではなく、「ダ・ヴィンチ・コード」に出て来るオプス・デイに近い。異様でさえある。ドラムセットと対峙するクリスチャン・ヴァンデに至っては鬼気迫るなどというものではなく、正に鬼と化している。自分のリズムについて来られない者がこの中にいるなんて事は微塵も考えず、ただひたすら己が太鼓で驀進する。

おそらく、「曲を覚える」とかいうレベルでは為し得ない演奏である。所謂「身体で覚える」事が実践出来なければ、MAGMAでは生きて行かれないのではないか。この事は楽器組はもとより、コーラス部隊に強く感じる。ステラ・ヴァンデ(クリスチャンのお内儀)を筆頭に、ヒミコ、アントワーヌ等の集中力たるや凄まじいものがある。因みにヒミコとアントワーヌの2人はMAGMAでベース奏者として活躍したベルナール・パガノッティの子供達で(奥方は日本人)、アントワーヌは先頃リシャール・ピナスと共にドラマーとして来日している。
そして一番のハイライトは、後半から登場するヤニック・トップによる「De Futura」だろう。曲中テンポアップして行く最大の見せ場でのクリスチャン&ヤニックは、生き物としての限界に挑んでいるとしか思えない。映像で見る限りあまり大きな小屋だとは思えないが、この限られた空間の中で一体ナニを構築しようとしているのか。……魂を揺さぶられる瞬間である。
このヤニックがソロを取っている時のクリスチャンの目が、また凄い。仲間であるメンバーを見る目ではなく、眼光鋭く、パートも違うのに「ヤツから何かを盗み取ってやる」といった風情なのだ。恐ろしいくらいのものだ。

今月中には国内盤がリリースされるそうなので、買うのならソチラの方がイイかも知れない。ナンでもロング・インタビューがライナーに掲載されるとか……。(買うのをはやまったかも知れない/鷹&虎) 2006.12