Rock Princess

...AND JUSTICE FOR ALL
(邦題:メタル・ジャスティス)



(1988年発表) (全英チャート:4位)(全米チャート:6位)
(SONY:25DP-5178)



1,Blackened
2,...And Justice For All
3,Eye Of The Beholder
4,One
5,The Shortest Straw
6,Harvester Of Sorrow
7,The Frayed Ends Of Sanity
8,To Live Is To Die
9,Dyers Eve
10,The Prince(日本盤のみ)



 前作のミニ・アルバムでジェイソンはプレイしたものの、正式なアルバムとしては初めての作品である。だが、結果として彼のベースはほとんど聞こえない、、、、、。

 いかに、クリフの存在が大きかったかという証明にもなっている訳だが、そんな理由よりバンドのイニシアチブを完全にラーズとジェイムズが握っていたのである。当初、この作品のプロデュースはマイク・クリンク(GUNS&ROSES,MEGADETH等で有名)があたっていたのだが、うまく進めることが出来ずに土壇場でフレミング・ラスムッセンに依頼している。「別に途中から参加するのは構わなかったんだ。ただ、クリフの死後バンドがどうなっているのかが心配だった。で、スタジオに入ってみたらラーズとジェイムズが仕切っていたんだ。」(フレミング)
 リリース当時、あまりのサウンドの起伏のなさにファンから指摘を受けた。まったく聴こえないベース、まるでブリキの太鼓のように軽いスネア、逆に異常に鼓膜に響くバスドラetc。
 だが、このアルバムのコンセプトを考えると「無味乾燥」としたサウンドで似合っていたのかもしれない。
 タイトルは米独立宣言の最後の言葉である。このアルバムのコンセプトである「不正」に対する逆説的な言葉である。「全ては正義のもとに...」だが、ジャケの女神は目隠しされ、身体は縛られ、手にした秤はバランスを崩している、、、、。
 (1)は環境破壊について苦言を呈している。(余談だがタモリの「空耳アワー」でイントロの出だしが「水かけろ〜バケツリレー」と紹介されたw)
 (2)は10分近いタイトル曲。ライヴでは、この曲の演奏中に背景の女神が爆発と共にバラバラになっていた。
 (4)で初めてのビデオクリップが制作された。映画「ジョニーは戦場へ行った」のシーンを混ぜながらバンドの演奏が写っているのだが、内容がシリアスであり考えさせられるものになっている。この曲でバンドはグラミー賞を獲得することになる。(もっとも、グラミーのHM部門なぞクソみたいなものだがw)
 (6)は「普通の家庭を持った男が、突然キレて人を殺しまくる内容の曲」だが、このアルバムでも異色のノリを持つ曲が次作へのヒントとなることに。
 (8)は、クリフの葬儀の時、クリフの姉からジェイムズが受け取ったデモテープに入っていた曲を元にしている。
 (9)では子供が両親にあてた手紙のような歌詞である。「この曲は基本的に、成長期の間中両親の手で現実から隠されて育った子供のことなんだ。子供は社会でうまくやっていけず自殺を考えるようになる。何故、自分に社会を見せてくれなかったんだ?という問いかけなんだよ」(ラーズ)

 結果としてメタリカのバックカタログ中、浮いたような存在なのだが、キャリアとしては重要な作品になった。リリース前から始まったアメリカ版「モンスターズ・オブ・ロック」に参加。新曲もまじえたライヴは評判を呼び、トリのヴァン・ヘイレンを食ってしまうほどだった。その結果、アルバムは初めてビルボードのトップ10に食い込む。世界が「メタリカ」を必要としはじめたのだ。

 そして、その「世界の欲求」は次作に集中する、、、。

(FIXX)



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