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「完璧」という個性 「TOTO」とはラテン語で「すべて、全部」という意味らしい。その名の通り彼らは幅広い音楽性と職人的な演奏技術、優れた作曲能力、すべてを兼ね備え、まったくスキのない完璧なサウンドを生み出す音楽エリート集団だ。 オリジナル・メンバー TOTO結成直接のきっかけは、ボズ・スキャッグスのアルバムへメンバー達が共にセッション・マンとして参加し意気投合したということだが、実は彼らの交流はもっと古くからあったようだ。 追記:2001年TOTOの2代目ヴォーカリストのフレデリクセンとオリジナル・ベーシストのハンゲイトがMECCAというバンドを結成しアルバムも発表。日本でも2002年に同名タイトルでリリースされている。ジョセフ・ウイリアムズはソロに戻り、その後3枚のアルバムをリリースしている。また彼のTOTOに加入前('82)の作品「Joseph Williams」も2002年にデジタル・リマスター紙ジャケ盤で再発されている。(HINE)2004.2 |
TOTO CBS/Sony |
Hydra CBS/Sony |
Turn Back CBS/Sony |
Isolation CBS/Sony |
Fahrenheit CBS/Sony |
ディスコ・グラフィー 1978年 TOTO(宇宙の騎士)*いきなりハイレベルな音楽性と演奏に話題騒然となったデビュー作 |
The Seventh One CBS/Sony |
King Of Desire CBS/Sony |
Tambu CBS/Sony |
TOTO XX<1977-1997> CBS/Sony |
Mindfields Sony |
TOTO IV |
1 . ロザーナ Rosanna 2 . メイク・ビリーヴ Make Believe 3 . ホールド・ユー・バック I Won't Hold You Back 4 . グッド・フォー・ユー Good For You 5 . イッツ・ア・フィーリング It's A Feeling 6 . アフレイド・オブ・ラヴ Afraide Of Love 7 . ラヴァーズ・イン・ザ・ナイト Lovers In The Night 8 . ウイ・メイド・イット We Made It 9 . ユア・ラヴ Waiting For Your Love 10.アフリカ Africa |
ロック・アルバムにおける「完璧」とは、まさにこのアルバムを指すのであろう。もちろん完璧すぎて面白みがないという人も中にはいるかもしれないが、曲、演奏、ヴォーカル&ハーモニー、アレンジ、プロデュースまでまったくスキがない。 また、メンバー達は皆スゴ腕のセッション・プレイヤーでもあるのだが、1人1人にすごい個性が備わっているわけではない。しかし、集まると「パーフェクト」という個性が生まれ、これこそがTOTOサウンドの基本になるのだ。しかたがって、オリジナル・メンバーの1人が欠けても、残念ながらこの個性が弱まってしまう。 このアルバムは、TOTOのオリジナル・メンバーが揃った最後の作品にして最高傑作でもある。以前の3枚のアルバムもみな甲乙付けがたいほど素晴らしかったが、それらをも超越し、もう何びとも踏み込めないようなレベルの領域、「音楽の聖域」にまで達している。まるでこのジャケットに描かれた聖剣のように・・・。 まず、アルバムの「つかみ」部分とも言える1曲目には、いきなり全米No.1を記録した名曲「ロザーナ」で幕を開ける。出だしはジェフ・ポーカロ(ds)が正確なリズムを刻みながら静かに始まる。そこへピアノ、ベース、ギターが同時に入り、つづいてヴォーカルが後を追う・・・これだけでも、もうたまらなくお洒落でカッコイイのだが、ヴォーカルがキンボールへ移行し、キーが一段上がったあたりから徐々に各パートに熱が入り、極めつけに、サビの部分ではホーンを大胆に取り入れたジャズっぽいセンスもチラつかせる・・・もう完全にノックアウトだ!複雑なリズム・パターンを使っていながらも、それをさらりとやってのけるメンバー全員の力量もすごい!これぞTOTOサウンドという代表曲だろう。 2曲目は、出だし部分からヴォーカルのハーモニーが印象的な、シンプルだが味わいのある曲。ピアノを効果的に使ったアレンジはジャーニー・サウンドにも通じるものがある。途中から絡むドライヴのかかったルカサーのギター・ハーモニーもさすがだ。 3.は文句無くすばらしいバラード曲。オーケストレーションの導入によってスケール感もある。問題は、ルカサーが作曲し自らヴォーカルもとり、おまけに泣きのギターまで披露して1人舞台になっているところだ。よく見れば、アルバム中キンボールがリードヴォーカルをとっているのはたったの4曲で、大ヒットした「ロザーナ」と「アフリカ」でもリードをとっていない。このあたりがキンボールの脱退、さらにはTOTOの崩壊につながっていった要因にもなっているのだろう。 6.〜7.はメドレーになっていて、アルバム中もっともハードな2曲だ。ここまで5、6、7とスティーヴ・ポーカロ、ルカサー、ペイチが代わる代わるヴォーカルをとっていたので、8、9でのキンボールの声が、とてもなつかしく感じられる。特に、9.のリー・リトナーが演りそうなフュージョン風の曲では、シンプルな曲調なだけに、ひときわキンボールの声が栄え、リード・ヴォーカリストであることの存在感を大きく示している。 ラストの10曲目はジェフ・ポーカロとペイチの合作で、全米大ヒットを記録した名曲中の名曲。アフリカン・ビートを大胆に取り入れ、メンバー全員が総力を結集して創り上げた結晶のような曲でもある。 TOTOの中で強力なリーダー・シップをとってきたジェフが亡くなってしまった現在、もう二度とこういった名曲が生まれることはないだろう。そしてこのアルバムは、もはや彼ら自身でも越えることは出来ない奇跡の名盤だ。(HINE) |