ロッカーズさんが掲示板にカキコミしてくれたデジタル・リマスターに関しての話を発端に、最近のデジタル・オーディオ技術と、「本当に音良くなったの?」という疑問を解き証すべく調査してみました。まずは、発端となったロッカーズさんの発言を抜粋して下に載せておきます。
科学の時間
投稿者:ロッカーズ 投稿日:2003/06/25(Wed) 21:21:52 No.2689
デジリマに関しての記事を見つけました。現行のCDフォーマットは「音声信号の記録・再生を目的とするプロコトルの一種」であり、CDプレーヤーは「音声再生に特化した、16ビット規格のパソコン」と言い換えることができるとの事。マスターテープにはプロ用のフォーマットで記録してあるため、そのままCDへ移しかえることが出来ない。ここで必要になる作業が「マスタリング」である。これをやり直すことが「リマスタリング」になります。近年になって爆発的にデジタル技術専門家が増えたことが品質向上の要因となっているみたいです。CDが出た当時は完璧に思われていましたが、ハード・ソフト共に大幅に改善できることが認められた頃には、CD登場から10年近くが経っていた・・・・。リマスター盤のCDを見てみると20ビットもしくは24ビットと書かれていますね。ここまでくると良く分からない世界になってしまいますが、すでにデジタル録音されているものでも、「リマスタリング」をすれば音質が向上するんです。してないのもありますが・・・。まっちゃんさんが買ったクイーンズ・ライチも発売されてから10年以上も経っていますから、改良の余地はあったわけです。なんとなく分かっていただけたでしょうか?以上!
それでは、上のロッカーズさんが言うところの「良く分からない世界」を少し紐解いてゆきましょう。
ADD
CD(コンパクトディスク)の盤面によくADDという文字が印刷されていますが、これはAnalog(ue)
Recording, Digital Mastering, Digital Mediaの略で、70年代以前はレコーディングもマスタリングもアナログだった(ソニーがデジタル録音技術を開発したのが74年)のでその音源をCD化するとAADでした。これをCD化する際に2CHデジタルレコーダーにトラックダウンしてデジタル・マスターを作ればADDとなり、レコーディングからデジタル録音をしていればDDDとなります。
ですから、現在はすべてDDDとなっているわけですが、60〜80年代半ばの復刻CDではAADが主流で、LP用のマスターを流用しています。こういったCDも原理的にはLPと音質は変わらないはずなのですが、なぜか音がLPより悪くなったとお感じになったことも皆さんおありでしょう。この原因はCDのデジタル音源をアンプなどでアナログに変換する際のD/Aコンバーターの精度が悪いからです。CD自体にはもっと情報がかきこまれていて、本来LPより音が悪いなんてことはないのです。ようするに、かきこまれているすべてのデジタル信号が、きちんとアナログに戻っていないということです。この精度を上げるには、オーディオ・マニアが使っているような超高級アナログ・オーディオ・セットの値段と同等の費用が必要で、手軽に聞けるというCD本来の良さを失ってしまいます。また、AADの場合、アナログ音源をいきなりCDが再生できる16bitに変換しているわけで、音がクリアになった分ノイズや回転ムラも目立ちます。
それに対しADDでは、ミックス・ダウンからやり直すので、その途中で手を加えています(ようするにリミックス)。これでもオーディオを良いものに交換しない限り実際の音はよくなりませんが、ノイズを取り除き音のバランスを整えたり、多少のエフェクト(ディレイなど)もかけられるので、AADよりは音が良くなった感じが得られます。現在の復刻版のデジタル・リマスターもADDには違いないのですが、ここで言うところのADDとはデジタル・リマスターが出てくる(90年前後)以前に使われていた表示で、ほとんどがリミックスしながらデジタル化したものです。
80年代半ば以降のLPは、レコーディングもデジタルに切り替わっているため、CD化されればDDA(普通はこういう表記はしない)だったものがDDDになり、当然音が良くなりそうなものですが、そう簡単にもいきません。やはり再生装置の壁が常に付きまといます。
デジタル・リマスター
ところが、現在のCDやリマスターされたCDを聞くと、かなり音が良くなっている印象を受けますよね。なぜでしょうか?
1つには、全体のボリューム・レベル(音量)が上がっていて、良くなったような気にさせられているということもあります。もう1つは、最近のオーディオ機器のほとんど(普及価格のものでは全てと言ってもいい)が、デジタル対応になっており、超高音域や重低音など広いレンジの音まで拾うように作られているため、それにあわせたミックス・ダウンを行っているからです。これなら安いCDプレイヤーで聞いても、充分音が良くなった気にさせられます。
しかしながら、近年のオーディオ機器の進化で、D/Aコンバーターの性能も上がり、少し高い機器を買うと今度はそういった耳の錯覚では通用しない部分での音の違いが求められるようになってきました。
そこで登場するのがデジタル・リマスター技術です。90年代初頭から盛んに行われるようになったこの技術は、主に20bitでリマスターし、それを16bitに変換するものです。有名なのはVictorのK2マスタリングやSonyのMaster
Soundなどで、さらに最近ではもっとすごい22bitや24bitリマスター、高速標本化1bit信号処理という根本から発想の違うものまで出てきました。しかしながら、現在一般のオーディオCDでは16bitのPCM(パルス・コード・モジュレーション)方式を採用しているために、どうやっても音質向上はそろそろ限界に近づきつつあります。そのため、今度はハードを変えてしまえばもっと良い音になるよ!というメディアも出てきています。現時点で一般CDプレイヤーに対応している最高音質と思われるXR-CDと一般CDプレイヤー非対応の高音質メディアの代表的なものを下にあげておきます。
HDCD(High
Definition Compatible Digital)
HDCDは、20bitの高音質な音楽情報を16bitのCDフォーマットにエンコードする技術で、通常の16bitフォーマットと互換性を持っているため、非対応プレイヤーでも再生が可能ですが、非対応プレイヤーで再生すると破綻した音になるそうです。HDCD対応機器を使えばかなり良い音で再生可能。
DVDオーディオ
パイオニアやパナソニックが推進するDVD技術を駆使した方式。一般オーディオ・プレイヤーでは再生不可能。24bitでそのまま再生でき、チャンネル数も通常のオーディオが左右2チャンネルなのに対し6チャンネルにまで対応している。ようするにサラウンド・スピーカーを増やせば、横や後ろからも音が聞こえ、立体感が出てくるわけです。
SACD(Super
Audio CD)
Sonyとフィリップスが中心に開発した方式で、非対応プレイヤーでは再生不可能。デジタル・コンバート方式がPCM方式ではなく、DSD(Direct
Stream Digital)方式になっていて、大量のデジタル・データを一度に処理するものです。この方式でレコーディング、ミキシング、マスタリング、カッティングされたものがSACDです。PCM方式では、一旦マルチビットのPCM信号に変換し、最終的には元に戻す作業が必要ですが、DSDの場合は1bitは1bitとしてそのまま記録するため原音に極めて近い音をそのまま再現。また、DVDオーディオと同じく、最大6チャンネルまでのトラックを記録できます。
XR-CD(20bit
K2 スーパーコーティング)
ビクターのK2技術を生かし、16bitの記録でありながら、限りなく20bitに近いクオリティまで、微小レベルの再現性を持たせた高音質CD。一般プレイヤーで再生可能。マスタリングからK2レーザーカッティングと呼ばれるカッティングまでの工程をすべて20bitで行う。通常はマスタリングされた音源を一旦カッティング用の16bitに変換してディスク製造工場に渡すのですが、XR-CDの場合は20bitのまま渡し、16bitにコンバートしながらカッティングします。また、電源、ケーブルに至るまで厳選し、各エンジニア達も聴覚を磨きあげた精鋭とのこと。ただし、価格は3,700円と高い!
このようにデジタル機器とメディアは日々進化しているわけですが、どうもデジタル・リマスター盤を買ったのに音が良くないということがありませんか?実際の所はどうなのか、次頁で例をあげて検証してみましょう。
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