Written by RICK

STRAIGHT BETWEEN THE EYES 1982年発売 Polydoor/Universal
闇からの一撃/レインボー

Joe LynnTurner(vo), Ritchie Blackmore(g), David Rosenthal(Key), Roger Glover(b),
Bobby Rondinelli(ds)

Produced By Roger Glover

<サウンドの変化。第7期レインボー>
 レインボーNo.1キーボーディストと名高いドン・エイリーが脱退(クビ?)になり、第7期レインボーが始動した。ドンの脱退の理由はファッションセンスのなさとロンディネリとの確執であったと「リッチー・ブラックモア レインボー編」に掲載されている。さて、ドンの代わりに加入したキーボーディスト、デイヴイッド・ローゼンタルについて軽く紹介しておこう。
 トニー・カレイやドン・エイリーなどスーパープレイヤーの後釜としてレインボーに加入したデイヴはクラシックからロックンロールなど様々なジャンルに対応できるプレイヤーで、そのポップセンスに関してはドンにも負けず劣らずの実力者である。また、デイヴはリッチーと同じくバッハを尊敬しているので、リッチーとの音楽的な相性もかなりよかったそうだ。そして歴代キーボーディストの中ではライヴを観てもらうとわかるが、リッチーの指示にもっとも反応できているようだ。ドンと同じく、とてもライヴに強く、そこそこルックスも良いので"魅せる"こともできるプレイヤーなのだ。ジョーの加入によって、レインボーは聴かせるだけでなく、魅せるバンドへと進化していったので、まさに理想のプレイヤーなわけだ。
 新生レインボーは、このメンバーでレコーディングを開始。今回はロジャーとリッチー以外に、ジョーとデイヴも曲作りに積極的に参加している。そして、ついに完成したアルバムが「闇からの一撃」だ。このアルバムでは、ジョーがかなり意欲的に(時にはリッチーに文句を言って意見を変えたらしい)取り組んでいて、今までとはちょっと変わったアルバムとなった。このアルバムにはブリティッシュな雰囲気がある曲と、もろにアメリカンな雰囲気がある曲が入り交じっていて、正直、統一性はほとんどない。せめてブリティッシュサイドと、アメリカンサイドに分ければよかったと思うのだが・・・
 一般的にこのアルバムは駄作とされている。だが、曲ごとにみると非常に良い曲ばかりだ。アルバム後半の曲、「ロック・フィーバー」などは、完全に今までのレインボーとは異なったサウンドになってしまっているが、広い目で見ればかなりカッコイイ曲なのだ。こういった曲があるため、このアルバムはレインボーの中でも本当に異色作になってしまっている。昔からのレインボーファンからは批判がかなり多かったらしい。ますますジョーが嫌われるワケで・・・(笑)
 また、楽曲それぞれのまとまりだけでなく、バンド演奏としてのまとまりにも欠けている気がする。レインボーは元々個々の能力が非常に高いのと、エゴの激突が激しいために、まとまりに欠けがちなバンドではあるのだが、ジョーが加入してからは楽曲のコンパクト化も手伝って、このアルバム以外ではさほどそれは感じない。しかしこのアルバムでは、どこかバラバラな演奏になっている気がする。2曲目の「ストーン・コールド」はとてもよくまとまっていてバンドらしい楽曲になっているのだが・・・。
 それから、前作に引き続き、リッチーのやる気がハンパではない。基本的にこの人は、スタジオではあまりノラない人だと私は思っているのだが、ジョーがいるときのレインボーから再結成パープル脱退までのスタジオでのリッチーのプレイは素晴らしい。「リッチー・ブラックモア レインボー編」によると、リッチーは「昔のプレイは未熟だった、今はだいぶよくなってきているよ」というようなことを言っているので、自分でも何かを得たのだろう。

<演奏力の低下!?リッチー、ジョーの異変>
 ロニー・ジェイムス・ディオやコージー・パウエルなど、様々な超強力メンバーが去ったとしても、レインボーは不死鳥のごとくよみがえり、前と変わらない、非常にレベルの高い演奏力で常にファンの心をつかんできた。また、この演奏力こそレインボー最大の武器であり、特にロニー時代においては、多少楽曲が長くなろうと気にせずに存分に各メンバーの持ち味を生かした作曲法が多く取り入れられていた。そしてライヴにおいては、なが〜いリッチーのギター・ソロやキーボーディストによるソロ、また、メンバー同士の絡みや掛け合いなどがレインボー本来の持ち味。ところがこの「闇からの一撃」ツアーではどうだろう!?「治療不可」ツアーよりもさらにコンパクト化されてしまっているセットリストに、上で書いたような本来の持ち味というものはほとんどない。掛け合いで言えば「オール・ナイト・ロング」、また、ソロでいえばギリギリ「治療不可」が当てはまるのだが、なんにしても質がよくない気がする。そして特にこのときのジョーは、悲しいくらい声が出ていない。リッチーもはっきりと「ライヴでのジョーは力不足だ」と言っているように、この頃が彼の最低期だったのではないだろうか。 フェイクでごまかしすぎなのと、高音部分で女性コーラスに頼りすぎている。となると、見せ場はMCくらいになってしまうわけで(笑)・・・サスガにそれは冗談です。ちなみにこのツアーから「スポットライト・キッド」のサビの歌い回しが変わっているので要チェック!(?)
 上でジョーに対し文句を言っているリッチーさん、じゃあ自分はどうなのかというと・・・ 正直、私から見るとリッチーもかなり荒れているように見える。過去に比べてライヴのパフォーマンスはかなりド派手になっているが、演奏はかなり荒く、フレーズが昔に比べてテキトーで、手癖を多用。また、バッキングをサボるなどいろいろな変化が見える。そして一番大きく変わったのがギターサウンドだ。ライヴの「16世紀のグリーンスリーヴス」や「レイジー」などを聴いてもらうとわかるが、ギター側のヴォリュームをしぼると、限りなくクリアに近い音が出るのだが、このときはドライヴがかなりキツくなっていて、ヴォリュームをしぼっても歪んだままなのだ。これによって音の輪郭をなくしてしまい、何を弾いているのか分かりづらくなってしまっていたのだ。また、かなりトーンもあげているようで、耳が痛いサウンドになっている。リッチーといえば、かなり太いストラトサウンドというイメージがある人が多いだろう。しかしこの時は、エフェクターのせいで、細くキンキンした音になっている。それで余計に荒く聴こえてしまうのだ。それともう一つ、楽曲のスピードがかなり上がりだしたのだ。スタジオの約1.2倍〜1.4倍(自分で比較しました)の速度にもなる曲が現れだした。速いほうがカッコイイ曲もあるのだが、これによってロジャーのプレイが少し不安定になる。実際に音数が減ってしまっている曲が数曲あるのだ。
 この3つの要素のせいでレインボーの演奏力が一気に低下してしまったと思う。最も演奏が上手かったのは、トニー・カレイがいた頃だろうか。そのときと比べると全く別のバンドのような演奏になっている。演奏力が低下したためなのかは分からないが、この頃のパフォーマンスはかなりのもので、リッチーがステージ上を駆け回ったり、ジョーがエア・ギターで大暴れしたり、ロンディネリやデイヴが観客を煽りまくったり、ロジャーまでもハジけてかなり見栄えはよくなった。加えて、アルバムのジャケットのような大きな目玉と花火のセット、また、リ ッチーのギター・クラッシュではお決まりのSEが入って、昔の演奏のように「聴かせる」というタイプより、「魅せる」感じのバンドになってしまった。リッチーはピート・タウンゼンドからの影響も垣間見れるので、確かにこうなってもおかしくはないのかもしれないが・・・・・。ちなみにこの様子は「LIVE BETWEEN THE EYES」で確認できる。
1.Death Alley Driver
 
最初からハードなナンバーだ。ロジャーが言うとおり、まさに80年代のHighway Starである。この曲の歌詞は、ジョーの哲学「人生は死からの逃避レース」をもとに作られている。これを元にPVも作られているのだが、これがなんとも笑える。ジョーがバイクに乗ってリッチーが乗る車から逃げるというものだが、リッチーが死神役になっている。変なボウシとサングラスをかけて全身真っ黒なカッコをして、顔はなぜか青白い、そして、なぜか手には愛用のストラトキャスターが・・・(笑)なぜか私はこれだけで爆笑してしまった。
 曲の方は、サビが結構ポップで軽快な疾走ナンバー。途中に入る、バッハの「トッカータとフーガ ト短調」を大胆に取り入れたリッチーのソロは、彼のキャリアの中でもトップクラスのデキだ。ちなみに私はこの曲でのリッチーのアーミングが大好きだ。このアーミングはいつか極めたい・・・と思っている。 

2.Stone Cold
 一転してバラードになる。このような曲がジョー期レインボーの武器でもある。非常にキレイなメロディのバラードで、実は結構お気に入りだ。この曲でもリッチーはちょっと力を抜いた感じの、良いソロを弾いている。バッキングは薄いが、キーボードがたくさんフューチャーされているので、良しとしよう。また、この手の曲でのロジャーのベースラインはなかなよいのではないだろうか。私は彼を評価したい。が、ちょっと音質の面ではよくないかな!? ちなみにこの曲のPVもよくわからないもので、金色のジョーが鏡の部屋をうろつくというものだ。

3.Bring On The Night
 
Death Alley DriverとStone coldで結構イイカンジのアルバムかな?と思った人はかなりいたのではないだろうか。しかし、この曲はかなりアメリカンな曲で、従来のレインボーサウンドとは全く異なったものだ。サビメロなどはかなりキャッチーですごくいいと思うのだが、世間的にはあまり評価されていない曲のようだ。

4.Tite Squeeze
 
Bring On The Nightのあと、またもアメリカンな曲。楽曲としてはそこまで悪くはないのだが、どうしてもレインボーという一種のブランドのようなものに惑わされて「なんだこの曲は」と思ってしまう。ロンディネリのパワフルなドラミングが気持ちよい曲だ。

5.Tearin' Out My Heart
 
次はバラードになるが、Stone Coldのようにキレ味よいバラードではなく、正直私でもダレてしまう。ライヴになると後半がスピードアップしてなかなかカッコよくなるのだが・・・。

6.Power
 
とてもポップでよい曲だ。このアルバムを聴きだした頃から私はこの曲がお気に入りで、今でも結構聴いている。リッチーには珍しいコードカッティングによるリフで、この頃のリッチーはバッキングの腕もさらに上達したのか、切れ味鋭いバッキングをしている。

7.Miss Mistreated
 
曲名をみるとパープルの名曲Mistreatedを思い浮かべてしまうが、全然違うタイプの曲だ。ライヴでは、この曲はSpotlight Kidに続くナンバーとして、セットリストに入り続けた。リフとサビメロの絡みがとても良い曲で、結構ヘヴィなナンバーだ。リッチーのソロもなかなか良質のメロディを奏でている。

8.Rock Fever
 
またまたアメリカンな曲。しかもやたらサミー・ヘイガーっぽい。彼がこの曲をカヴァーしたら名曲になるのでは・・・。しかし、この曲の歌メロはかなりの出来で、アメリカンロックとして聴くなら、かなりカッコイイ。私も結構お気に入りである。

9.Eyes Of Fire
 
正直アルバム中もっともインパクトがない曲である。なんか無理矢理Gates Of BabylonとEyes Of THe Worldを合わせたような感じの曲で、中途半端になってしまっている。リッチーのソロはなかなか良いと思うのだが・・・。どうもしまらないアルバムになってしまった。

(RICK) 2005.4