Written by Newk

ウォー・ダンス
WAR DANCE

1977年 MCA/Warner

1. ウォー・ダンス
 WAR DANCE

2. メイジャー・キーズ
 MAJOR KEYS

3.プット・イット・ザット・ウェイ
 PUT IT THAT WAY

4. キャッスルズ
 CASTLES

5. ファイティング・トーク
 FIGHTING TALK

6. インクイジション
 THE INQUISITION

7. スター・メイドゥン/ミステリォーソ/クエイサー
 STAR MAIDEN/MYSTERIOSO/QUASAR

8. ラスト・エグジット
 LAST EXIT
 前作からわずか数ヶ月で録音されたにもかかわず、非常に内容の濃い作品である。メンバー全員が更に技術的、音楽的に成長をしたこともあり恐ろしく高度な演奏が繰り広げられている上、楽曲もより構成の完成度が増している。また前作よりロック色を強めにし、所々にオーバーダビングでサウンドを補強したりと、サウンド面の強化も図られている。前作と比較すると楽曲の構成に力を入れた分、ソロパートが短くなってしまったのは否めないが、それでも十分に彼等の魅力が伝わってくる。バンドはこのアルバムを最後に解散するが、メンバー各自はコロシアムIIで磨いたテクニックとセンスを持って後のブリティッシュロックシーンで活躍することになる。

[1]はハイズマンの超絶技巧とモールのグルーブ感によってクロスオーバー色の強い曲調に仕上がっている。エイリー〜ムーアのソロが展開するが、両者とも前作より一段レベルを上げたテクニックと表現を見せる。
[2]もやはりハイズマンの跳ねるリズムとモールのグルーヴィーなリフ、ムーアの軽快なコードカッティングによるフュージョンチックな曲。ここでのムーアは珍しくボトルネック奏法を行っている。ボトルネックの使い方はジェフ・ベックの影響であろう。しかし自分のものにし、見事なメロディを奏でる。
[3]はムーア〜エイリーによるテーマ演奏後、これまた2人のソロが繰り広げられる。
[4]は唯一のヴォーカルナンバー。ムーアがストレートにバラードを歌い上げる好ナンバー。ここでバックの演奏に注目すると、主としてベースがバッキングをリードし、キーボードが飾りをつける。この手法はロックではほとんど使われることがなかったアンサンブルであるが、実に奥行きの深いサウンドに仕上がっている。
[5]はご機嫌なロックナンバー。テーマメロディがしっかりした聴き易さがあり、ソロありバトルありの好演。
[6]はハイズマンの破壊的ドラミングに後押しされたアップテンポナンバー。ここでのムーアはアコースティックギターでソロを取る(後でエレクトリックギターをオーバーダブで重ねて分厚いサウンドに仕上げている)。このメロディ感覚、奏法はアル・ディ・メオラから学び取ったものと思われるが、ロックナンバーでこれだけ弾きこなすムーアの才能に感嘆。
[7]は組曲構成でエイリーが指揮をとって作曲されたと推測される。「Star Maiden」はモールのベースをフューチャーしたパート。このメロディと音色、そう史上最高のエレクトリックベーシスト、ジャコ・パストリアスとそっくりである。彼もまたコロシアムIIにおいてフュージョンサウンドの導入に対して重要な役割を担っているのである。「Mysterioso」はマハビシュヌ・オーケストラ風のアレンジでムーアが弾きまくる。曲調はマハビシュヌでも、ムーアのギターにより、強力なロックサウンドに仕上がっている。「Quasar」はフュージョン的味付けのテーマでエンディングを飾る。
[8]はミディアムテンポの重い曲調でムーアのみソロを取る。タイトル通りアルバムの、延いてはグループのエンディングを飾る。ムーアのソロはコロシアムIIで学び取った様々なスタイルを消化し、新たなブルーススタイル(=ロック奏法)を創り上げたことを証明している。
(Newk)