ジャケットの名盤を手がけた著名アーチスト・ファイル

File No.3
HIPGNOSIS ヒプノシス

1960年代半ば、イギリスのロンドンで、Storm Thorgerson(ストーム・トーガソン)とAubery Powell(オーブリー・パウエル)によって結成されたデザイン・チームがヒプノシスだ。はじめは本のカヴァーなどを手がけていたが、ちょうどピンク・フロイドがデビューしたばかりで、そのセカンド・アルバム「神秘」を手がけることになる。トーガソンはハイスクール時代ロジャー・ウォーターズ(b,vo)とは同級生であり、トーガソンとパウエル共に、シド・バレット(vo,g)とはいっしょに住んでいたこともある仲間であった関係から依頼を受けたらしい。その後のフロイドのアルバムは毎回担当するようになり、「原子心母」の牛のジャケットで一躍注目される。それ以降イエスとロジャー・ディーンの関係同様、ピンク・フロイドといえばヒプノシスというイメージが完全に定着している。一時ロジャー・ウォーターズとの確執からフロイドのジャケット担当を降りたが、ロジャー脱退後はまた、ストーム・トーガソンが個人でフロイドのジャケットを手がけている。また、彼らは写真を使ったデザインが主流であったことから仕事のペースが早く、これまでに膨大な数の作品を残している。78年には、画像処理のコンピュータ化に対応するためピーター・クリストファーソンも加え3人体制になった。しかし、MTVなどの影響でミュージック・クリップが盛んに制作されるようになると、83年ヒプノシスを解散してグリーン・バック・フィルムズという会社を設立する。ところが、すでに映像関係では優秀な会社がたくさんあり、後から参入した彼らの会社はうまく軌道に乗れず倒産。その後、元々映像の方に興味があったオーブリーは完全にそちらの方へ転向した。ストームはそのままカヴァー・アートの仕事をつづけ、今でも超売れっ子アーティストとして、名作を創りつづける。


Pink Floyd/Dark Side of the Moon
1973年 東芝EMI

Scorpions/Love Drive
1979年 EMI/マーキュリー

Montrose/Jump On It
1976年 Werner

Wishborne Ash/Argus
1972年 MCA

Led Zeppelin/House Of The Holly
1973年 Swan Song/Atlantic

10cc/Deceptive Bends
1977年 Mercury

Peter Gabriel/Peter Gabriel(3)
1980年 geffen

UFO/No Heavy Petting
1976年 Chrysalis/東芝EMI

気持ち悪いものやら、エッチなものやら・・・多種多様であるが、とにかくインパクトが大きく一度見たら忘れないようなジャケットが多い。中でも70年代半ば頃はものすごい量の仕事をこなし、なおかつ名作揃い。特に印象に残るっているのは、上に挙げた他、ピンク・フロイドの「原子心母」「炎」、UFOの「現象」「フォース・イット」「宇宙征服」、レッド・ツェッペリン「プレゼンス」、クォターマス「クォターマス」、キャラヴァン「ロッキン・コンチェルト」、ブラック・サバス「テクニカル・エクスタシー」、スコーピオンズ「電獣」などだ。
ヒプノシスのデザインは、奇抜な視覚効果を狙っただけのものではなく、人間の持つ欲望や内面をも描き出し、ある種のメッセージが込められたものも多い。また、彼らはロジャー・ディーンとは親しい間柄で、一時期イエスのアルバムを替わりに手がけたり、逆にロジャー・ディーンがフロイドのアルバム・カヴァーを担当した異色モノもある。