デジリマでホントに音よくなったの?


JOURNEY/ESCAPE


1993年Sony Record


2000年SME 22bitデジタル・リマスター盤

上の裏ジャケをよく見て欲しい。左の旧盤ではLP時代の裏ジャケットがすべて入るようにデザインされていて、余白になった右側を黒で塗りつぶし文字を集中させています。そして、右上にはトレード・マークのスカラベ(フンころがし)のマークが描かれていたのです。
ところが、最新盤ではイラスト全体を無理やり拡大し、右側いっぱいまでもってきているため、右上のスカラベがいなくなっています!!しかも、どうやら原画を使わずに旧CDのジャケットをスキャンニングしてそのまま拡大しているようです。その証拠に印刷の網点まで拡大されて、モアレまでおきています。拡大するともとよ〜くわかりますよ(左下部分をクリック)。だいたい、色もおかしいし、とてのプロの仕事だとは思えません。
サウンドの方も聞いてみましょう。1.のハイコンポ・セットでは、音量がかなり変わっていましたが、旧盤も同じボリュームまでをあげると、ほとんど聞き分けられません。さらに両方ともかなりボリュームをあげてみると、新しい方は不自然に音が分離され、ベースやピアノの音が硬いのがわかります。7曲目などはもうピアノがピアノの音をしていません。コチコチです。残響音も少し不自然な気がします。つづいて2.の安物セットですが、こちらでも旧盤はけっこういい音をしています。最新盤は音が軽く、高音はかなり派手な印象です。特にアコースティックな音が鮮明になっているようです。しかし、全体的にはやはり最新盤は軽くて安っぽい音になっています。
最後にウォークマンですが、ここでは最新盤の方も中音域がかなり出ていて、特にスティーヴ・ペリーのリード・ヴォーカルがクリアーで前に出てきている感じがします。これは好き嫌いの問題もありますが、スティーヴ・ペリー・ファンにはよいかも知れません(笑)  旧盤の方は、ほぼどのセットで聞いても変わらない印象を受けました。

全体を通しての感想>音は問題のあるほどではないですが、軽くなった感じがします。しかしながら、とりたてて良くなったというほどでもありません。問題はジャケットです。このヒドイ仕上がりが許せるか許せないかで、最新盤に買い換える価値があるかどうかが決まります。個人的には許せません!!
SONYさんの多大なる支援があったからこそ、ジャーニーは売れたわけですが、その後今まで存分に儲けさせて貰ったジャーニーに対し、このデジリマの仕上がりは失礼です。契約が切れたからそれで終わりですか?SONYさん、もっと自分たちが育てた素晴らしいアーチストと作品を大切にしてください。

すでに人間の耳で聞き分けられる範囲を超えるほど進化したCD、今後の課題は作り手の情熱と安易なものに騙されないリスナー達の選択眼を養うことになりそうです。これだけ普及してきたデジタル・リマスター盤、どれが良いものでどれが悪いのかを良く見極めてから買うようにすれば、おのずと作り手もそれに合わせ力を入れるはずです。最近話題のCCCD(コピー・コントロールCD)というコピー防止対策ディスクも同様です。あれはコンパクト・ディスクではありません。メーカー側の思惑で一方的に作られた、普通のCDより音の悪いディスクなのです。CCCDを使うとハードに悪影響があり寿命が縮むという報告もあります。コピー防止に反対だとは言いませんが、それ相応の対応をメーカーには期待したいところです。
この問題もいずれまた研究・報告をしたいと考えています。(HINE)
2003.8