お薦め名盤Vol.6(POP&FUNKY)

ホッター・ザン・ジュライ/スティーヴィー・ワンダー
HOTTER THAN JULY/STEVIE WONDER

1980年 VIP-6748◆MOTOWN/VICTOR

SIDE-A

1.愛と嘘
 Did I Hear You Say Love Me
2.キャンドルにともした愛
 All I Do
3.ロケット・ラヴ
 Rocket Kove
4.疑惑
 I Ain't Gonna Stand For It
5.目を閉じれば愛
 As If You Read My Mind

SIDE-B

1.マスター・ブラスター(ジャミン)
 Master Blaster(Jammin')
2.孤独のダンサー
 Do Like You
3.哀しい絆
 Cash In Your Face
4.レイトリー
 Lately
5.ハッピー・バースデイ
 Happy Birthday


スティーヴィー・ワンダーというと、古いロック・ファンならジェフ・ベックとの間のいざこざ(注)などを思い浮かべる人もいるかもしれない。
今はもう、2人共そんなことはとっくに忘れ、仲良くやっているようだが・・・
(注)ベックにプレゼントした曲「迷信」がなかなか名曲なのを知ったプロモーターが、勝手にスティーヴィーに唄わせてシングル・リリースしてしまったもので、この事情をよく知らなかったベックは怒ってスティーヴィーを批判。しかし後に誤解は解けてベックは大ヒットアルバム「ギター殺人者の凱旋」の中で再びスティヴィーがプレゼントした名曲「哀しみの恋人達」を名演奏している。尚、72年リリースのこの「迷信」が入ったスティーヴィーのアルバム「Talking Book」にもジェフ・ベックの名がクレジットされている。

スティーヴィーは幼少の頃から音楽業界で活躍し、その才能たるや凄まじく、音楽ジャンルや人種、年齢なども越え、世界中の全ての人たちに感動を与えてくれる音楽会のスーパーマンである。
彼の音楽には何人(なんびと)にも有無を言わさぬ説得力と表現力があり、加えて人類共通の弱点を刺激するようなメロディー、そして確かな歌唱力と演奏テクニックまでも兼ね備えていて、まったく文句の付けようがない。
しかし、世間(悪い社会のしくみ)をあまり知らないうちから活躍してしまった彼は、若年期は常に業界関係者からいいように利用され、なんと報酬はレコード・セールスの3%ぐらいしか貰っていなかったそうだ。
ジェフ・ベックとの件も、プロモーターがそんな世間知らずのスティーヴィーを利用した悪質なものだ。

さて、このアルバムだが、これはスティーヴィーがそういった社会経験や結婚、子供の誕生などを経て、音楽的にも3枚組の大作「キー・オブ・ライフ」や2枚組の映画音楽大作「シークレット・ライフ」を発表後、最も充実した時期にリリースしたもので、ちょうど彼が30歳の節目の時のものでもあった。
もう本当に名曲揃いで、1曲目から最後まで泣いたり笑ったりしてるうちに、あっという間に終わってしまうような内容だ。
つい先頃もSIDE-A4曲目「I Ain't Gonna Stand For It」をエリック・クラプトンがニュー・アルバムでカヴァーしている。
全体を通してスティーヴィーは、とにかくさまざまな「愛」について伝えたいのだな〜と言うことがはっきりとくみ取れる。時には楽しく、時には切なく、それらを適切なリズムとメロディーに乗せて語りかける。考えた末に作ったというよりは、自然にあふれ出てきたというような作品ばかりだ。このへんが、良い意味で肩の力が抜けて、自然体な感じで、それまでのスティーヴィーよりさらに一段と魅力アップしている。
Side-Aはメドレーのように繋がっていて、FUNKYビートにのせて軽快に進んでゆく、Side-Bに移っての1曲目「マスター・ブラスター」はレゲエ調に仕上げた、スティーヴィーにしては異色の曲、そして、なんといってもハイライトは4曲目の「レイトリー」、素晴らしすぎる!!
彼の数多くのバラードの中でも1,2を争うほどの名曲で、個人的には1番好きな曲だ。今でもこの曲を聞くたびに感動で涙が出ます。
本当にピアノ1本でこんなに素晴らしい感動を与えてくれる天才スティーヴィーには脱帽、素直に感謝したい。
最後は今でもあちこちで使用されている曲「ハッピー・バースデイ」。泣いて終わるのではなく、楽しく笑って終わるというアルバムの演出も心憎い。 (HINE)