MOVIES / Holger Czukey
2008年1月26日 23時48分
ホルガー・シューカイの1981年に発売された「Movies」が、紙ジャケ・リマスター仕様で昨年発売されました。
廃盤になっていた数年前迄は、かなり高額な金額がついたプレミア盤でしたが、こうして通常価格で買えるようになった事は、本当に嬉しい限りです。
ホルガー・シューカイ(私が持っているアナログ盤ではホルガー・チューカイとカタカナ表記されていた)は、シュトックハウゼン門下のベーシストでドイツのクラウト・ロックの代表格バンド「カン(CAN)」のオリジナル・メンバーとして活躍しておりました。カンは70年代後半のパンク、ニュー・ウエーブ、エレクトロ・ミュージックに多大な影響を与えたバンドですが、実は私自身カンのアルバムは1枚しか聴いた事が無いのです(汗)。
手元にあるアルバムは「Ege Bamyasi〜エーゲ・バミヤージ」というジャケットが「オクラの缶詰」のデザインのもので、このアルバムには“ダモ鈴木”という日本人がヴォーカリストとして参加をしており、実に「日本語的な英語」を披露しております。我々日本人からは、とても違和感を感じるのですが、外国の方からは「東洋の神秘的な英語」に聞こえたのかも知れません(笑)。
そもそも、この「Movies」を知ったきっかけは、このアルバムのM-3に収録されている「Persian Love」という曲が当時の「サントリー角瓶」のCMに使われていた事がきっかけでした。三宅一生が外国のどこかの川?で船に乗って揺られているBGMに使われていたのですが、桃源郷を思わせる景色に見事にマッチングしたこの曲は、当時私の周りのロック好きの間でも、かなりの話題になりました。(因みに「Persian Love」は1982年に発表されたスネークマン・ショウのアルバム「死ぬのは嫌だ、恐い。戦争反対!」にも収録されております)
この「Persian Love」はホルガーが外国の短波ラジオにチューニングを合わせていたところ、男性ヴォーカルの民族音楽が聴こえてきたので慌ててマルチ・レコーダーに録音し、今ならデジタル処理出来るテープの切り貼りを手作業で丁寧に時間をかけて行い、エディットを何度も繰り返しながら、やっとの思いで完成した楽曲です。それは「サウンド・コラージュの芸術品」と呼ぶに相応しい作品で、特にギターの音が上質に響き、サンプリングされた男性ヴォーカル(イランの歌手らしい)との絶妙な絡みは見事としか言いようが有りません。
(例えるならペンギン・カフェ・オーケストラにサンプリング・ヴォーカルを加えた感じとでも言いましょうか・・・)
もう1曲お奨めは、M-1の「Cool in the Pool」。このキャッチーな曲は、「アヴァンギャルド・ポップ」と表現するのが相応しい、とてもお洒落なダンス・ナンバー。曲間にラジオのサンプリング音を効果的に使ったファンキーな作品になっており、とにかく気持イイの一言。
ただ、今回リマスター処理で格段に音は良くなったものの、アナログ盤の音源に比べて少し加工し過ぎた感も。
原曲自体、完成度がかなり高かったので「何もここまでしなくても・・・」と思ってしまったのは私だけでしょうか。
カンの時代から民族(環境)音楽に傾倒していたホルガーは、カン解散後、約2年をかけて自分の作りたかったこのアルバムを完成させました。
(カンの解散の原因は、ホルガーと他のメンバー間の音楽的志向の違いも要因の一つに数えられている)
このアルバムを作っている時のホルガーは、まるで「オタクのおじさん」のような様だったんだろうなと想像するだけで、少し笑えてきます。
追記.
ボーナス・トラックにM-1の「Cool in the Pool」のインストゥルメンタル・ヴァージョンが入っているのですが、Jポップのシングル盤じゃないんだから、こんなカラオケみたいのじゃなくて別の曲を入れてくれたら良かったのに・・・。
(OASI-Z)
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