ICKY THUMP / WHITE STRIPES
2007年7月1日 23時25分
ホワイト・ストライプスはジャック・ホワイト(Vo、G、Piano)とメグ・ホワイト(Dr、Back-Vo)の2人による姉弟ユニットで、リード楽器(ギター)とドラムとヴォーカルだけ("3"の法則 と言うらしい)という異例のスタイルで新しいロックを作り上げ、商業的にも成功を収めてしまった画期的なデュオである。
私自身、本格的なバンド経験が無いので、「ベースが無くて、リズム・キープは大丈夫なのか」と素人の感覚で心配してしまうのだが、ホワイト・ストライプスの圧倒的な音の破壊力と緊迫感は、ベースが存在しないという常識に捉われない自由な環境の中で、創造性を最大限に発揮した結果なのだろう。
例えば、前々作の「エレファント」は僅か1週間の期間に100万円の制作費でレコーディングしたとか、前作の「ゲット・ビハインド・ミー・サタン」ではギターを捨ててマリンバ!をリード楽器に使うといった、既成概念を破壊するラディカルな発想とプリミティブな方向性が、とにかく斬新で革新的。
音の基本はブルースであるが、ハードでへヴィなギターとドラムというシンプルな構成に、ハスキーなヴォーカルが乗っかる事で、ブルースの重たさを排除してしまうのは「魔法」のよう。
今作品では、ホーンやバグ・パイプを導入し、意識的に"3"の法則 を破る実験も試みている。
@タイトル・チューン「イッキー・サンプ」を聴いてもらえれば、誰もが感じると思うが、レッド・ツェッペリン を彷彿させるブルース・ロック、ハード・ロックがこのバンドの魅力である。
ツェッペリンの3〜4枚目頃のアコースティックな音を想起させるB(この曲は後半の爆裂ギターが圧巻)があったり、他にもファズのかかったギター・リフやパワフルなドラミング等、随所にツェッペリンが見え隠れする。
また、音の多様性とか良質なコマーシャリズムといった部分にも、ジミー・ペイジとジャック・ホワイトの共通点が感じられる。
しかし、単にツェッペリンの物真似で終わらないのは、このバンドの異形なスタイルが生み出す緊張感と音の塊による破壊力が、ブルースというスタイルを全く新しい形の音に変化させてしまったところ。
それは、ニューウエーブ、オルタナティヴといった音を、彼らは経験している事が要因かもしれない。
アルバム・タイトル「イッキー・サンプ」とは「ワオ!」とか「マジかよ!」という意味。今回のアルバム製作は過去最長の"3週間"を費やしたとの事。(←ワオ!マジかよ!)
こんな凄いアルバムを3週間で作っちゃうなんて「もう、どんだけ〜」という感じ。
このアルバムも是非、大音量で聴きたい。文句無しの傑作。(OASI-Z)
追記
「イッキー・サンプ」のyoutubeを貼っておきます。メグ・ホワイトの揺れる(どこが)ドラミングに注目!
ttp://www.youtube.com/watch?v=1OjTspCqvk8
コメント(1) / トラックバック(0) |オルタナ・ブルース |
Robbers & Cowards / Cold War Kids
2007年3月18日 00時18分
北海道に住んでいた少年時代、TVで頻繁に「返せ!北方領土」というCMが流れておりました。
そのCMは「北方四島は日本固有の領土であるのだから、返還して欲しい」というものだったと思います。
ただ、当時は歴史的背景も分からず「とうきび」食いながら「早く返してくれればいいべやな」等と呑気に思っておりました。
少しずつ生活が豊かになっていった日本の昭和40年代、「戦後」も「冷戦」もリアリズムは欠如していたのです。
カリフォルニア出身の新人バンド「コールド・ウォー・キッズ」のデビュー・アルバム。
「冷戦時代の子供たち」というバンド名は、ベーシストのマット・モーストが冷戦末期に東欧を旅した時、新たな世代が台頭する光景にインスパイアされて思いついたもの。
(彼が手掛けたブルーノート風のアルバムジャケットもなかなか秀逸)
これはアメリカで今流行の「エモ」や「スクリーモ」といったメイン・ストリームでは有りません。一言で言えば、モダンでサイケなブルース・ロック。(←一言になってない)
ただ、そこに実験的で斬新なノイズがあったり、クールでブルージーだったり、オルタナティヴ・ガレージだったり…。歌詞もダークでへヴィな部分が多いのに、決してドロドロのアンダーグラウンドなブルースというのでは無く、絶妙なポップ・センスとアレンジが施されているので、大変聴き易い仕上がりになっております。
とにかく1曲目の「We used to Vacation」が圧巻です。この1曲だけで私は完全に打ちのめされました。
ノイジーで切れ味鋭いギターと、重くグルーヴするベースとドラム。
そして何よりもピアノの鍵盤を叩きつけながらテンションの高い中性的な声で歌うネイサン・ウィレットのカリスマ的なヴォーカルは、ロックの新しい夜明けを感じさせてくれます。
他の楽曲の完成度も非常に高く、モノクロームで冷たいハード・ボイルドなサウンドは「弥生寒波」の今にピッタリ。最近のバンドには無い可能性を強く感じる事が出来ました。
少し早いですがこのアルバムは、私自身の「今年のベスト3」に間違いなく入る作品になるでしょう。(OASI-Z)
追記
業界人の注目も非常に高く、2月に行われたロンドン公演ではメグ・ホワイト(ホワイト・ストライプス)、アレックス・ターナー(アークティック・モンキーズ)等がライヴを観に訪れたとの事。
日本公演も5月に決定し、評判のライヴ・パフォーマンスが今から楽しみなところです。
コメント(3) / トラックバック(0) |オルタナ・ブルース |