SYD BARRETT アルバム・レヴュー Written by KEN  ページ構成責任者 : HINE



帽子が笑う…無気味に
(オリジナル邦題:幽玄の世界)
The Madcap Laughs

1970年 Harvest/EMI/東芝EMI

1. カメに捧ぐ詩 Terrapin
2. むなしい努力 No Good Trying
3. ラヴ・ユー Love You
4. 見知らぬところ No Man's Land
5. 暗黒の世界 Dark Globe
6. ヒア・アイ・ゴー Here I Go
7. タコに捧ぐ詩 Octopus
8. 金色の髪(ジェイムス・ジョイス作の一篇より) Golden Hair
9. 過ぎた恋 Long Gone
10. 寂しい女 She Took a Long Cold Look
11. フィール Feel
12. イフ・イッツ・イン・ユー If It's in You
13. 夜も更けて Late Night

<BONUS>
14. タコに捧ぐ詩(テイク1&2) Octopus [Take 1 and 2]
15. むなしい努力(テイク5) It's No Good Trying [Take 5]
16. ラヴ・ユー(テイク1) Love You [Take 1]
17. ラヴ・ユー(テイク3) Love You [Take 3]
18. 寂しい女(テイク4) She Took a Long Cold Look at Me [Take 4]
19. 金色の髪(テイク5) Golden Hair [Take 5]

 伝説の男、シド・バレット。彼のピンク・フロイド脱退後のファースト・アルバムは、狂気と背中合わせの静寂に満ちている。再生していきなり「ズゥン」という重たい響き。続くは、危うげなコードを押さえるギターと幽玄のヴォーカル……シドのソロ・デビュー作にして、最高傑作と言えるアルバムだ。狂気性ばかりが話にのぼる彼ではあるが、そのメロディ・センスも抜群。散文詩的な歌詞も天才と狂人の紙一重。彼岸の華が美しく咲き、散らんとする儚さを全面に称えたサイケデリック・ブルースの名作。「蛸」と「亀」だけでもこのアルバムは「買い」だ。あらゆるミュージシャンの1stソロ作の中でも別格に値するだろう。
 現行盤には、ドキュメント性の強いアウトテイクを収録。こと「タコに捧ぐ歌」の聴き比べは『オペル』の「クラウンズ・アンド・ジャグラーズ」と相俟って面白い。(KEN)



その名はバレット
(オリジナル邦題:
シド・バレット・ウィズ・ピンク・フロイド)
Barrett

1970年 Harvest/EMI/東芝EMI

1. ベイビー・レモネード Baby Lemonade
2. ラヴ・ソング Love Song
3. ドミノ Dominoes
4. あたりまえ It Is Obvious
5. ラット Rats
6. メイシー Maisie
7. ジゴロおばさん Gigolo Aunt
8. 腕をゆらゆら Waving My Arms in the Air
9. 嘘はいわなかった I Never Lied to You
10. 夢のお食事 Wined and Dined
11. ウルフパック Wolfpack
12. 興奮した象 Effervescing Elephant

<BONUS>
13. ベイビー・レモネード(テイク1)
14. 腕をゆらゆら(テイク1)
15. 嘘はいわなかった(テイク1)
16. ラヴ・ソング(テイク1)
17. ドミノ(テイク1)
18. ドミノ(テイク2)
19. あたりまえ(テイク2)

 「陰」の部分が強過ぎた1stに比べ、幾分「陽」の場面が垣間見えるセカンド・アルバム。そして永遠なる「シド・バレットの最新作」。リック・ライトの活躍が目醒ましく、キーボード・プレイのソフトな感じがアルバム全体を包んでいる。その中で、リズムを崩しそうになる場面が多々見受けられるのは、シドが狂気の淵にいたことを物語る。シドのギターとヴォーカルを録音してから、デヴィッド・ギルモアとリックが中心となって肉付けをしていったらしい。つまりは、シドの演奏にバックが合わせる、という方法で録音されている。現に「ベイビー・レモネード」などは何度もリズムが崩れそうになるのを、ドラミングがどうにかキープしている。そのうえ最初に(間違いなく後から入れられた)ギター・ソロが危なっかしいコトと言ったら……。
 本作は1stと比較され、過小評価を戴いている不幸な盤である。そりゃあ1stの危うさとは比べるべくもないが、この「ソフトな狂気」は、これはこれで楽しめる内容となっている。1stよりポップだし、「ドミノ」や「ジゴロおばさん」「興奮した象」など、曲のカラーが明るいので、初心者にはこちらの方がとっつきやすいかも知れない。ついでに言うならば、再発盤にボーナス収録された「ベイビー・レモネード」のテイク1を、完成版と比較するなどしても楽しいかも。
 個人的に、わたしはコレがシドのアルバムの中で一番好きです。(KEN)



オペル
(オリジナル邦題:
オペル〜ザ・ベスト・オブ・シド・バレット)

Opel

1989年 Harvest/EMI/東芝EMI

1. オペル Opel
2. クラウンズ&ジャグラーズ(タコに捧ぐ詩) Clowns & Jugglers (Octopus)
3. ラット Rats
4. 金色の髪(ジェイムス・ジョイス作の一篇より) Golden Hair (Vocal Version)
5. ドリー・ロッカー Dolly Rocker
6. ワード・ソング Word Song
7. 夢のお食事 Wined and Dined
8. スワン・リー Swan Lee (Silas Lang)
9. バーディー・ホップ Birdie Hop
10. レッツ・スプリット Let's Split
11. ランキー(パート1) Lanky (Part 1)
12. 僕がいなくてさみしくないの(暗黒の世界) Wouldn't You Miss Me (Dark Globe)
13. 銀河 Milky Way
14. 金色の髪 Golden Hair

<BONUS>
15. ジゴロおばさん(テイク9)
16. あたりまえ(テイク3)
17. あたりまえ(テイク5)
18. クラウンズ&ジャグラーズ(テイク2)

 一体何がベストなんだよ、とオリジナル邦題に突っ込みたくなる、未発表曲集。「オペル」のような淋しげな曲から、何度もテイクを重ねた「スワン・リー」、夢を描いたかのような「銀河」など、決して駄曲の詰め合わせではない、幻のサード・アルバムの代用品。
 現行盤にはさらにアウトテイクが収録されており、楽しむにはちょいと時間がかかるが、堪能できれば至上の悦楽。なお、これら3作のボーナス・トラックは殆どがアコースティック・ギター1本のデモ・トラックといった趣で、楽曲の出来云々よりもドキュメント性の方が強い。(KEN)



僕がいなくてさみしくないの?
〜ザ・ベスト・オブ・シド・バレット
Wouldn't You Miss Me:
The Best of Syd Barrett


2001年 Harvest/EMI/東芝EMI

1. タコに捧ぐ詩 Octopus
2. 夜もふけて Late Night
3. カメに捧ぐ詩 Terrapin
4. スワン・リー Swan Lee [Silas Lang]
5. ウルフパック Wolfpack
6. 金色の髪(ジェイムス・ジョイス作の一篇より) Golden Hair
7. ヒア・アイ・ゴー Here I Go
8. 過ぎた恋 Long Gone
9. むなしい努力 No Good Trying
10. オペル Opel
11. ベイビー・レモネード Baby Lemonade
12. ジゴロおばさん Gigolo Aunt
13. ドミノ Dominoes
14. 僕がいなくてさみしくないの(暗黒の世界) Wouldn't You Miss Me [Dark Globe]
15. 夢のお食事 Wined and Dined
16. 興奮した象 Effervescing Elephant
17. 腕をゆらゆら Waving My Arms in the Air
18. 嘘は言わなかった I Never Lied to You
19. ラヴ・ソング Love Song
20. トゥー・オブ・ア・カインド Two of a Kind
21. ボブ・ディラン・ブルース Bob Dylan Blues
22. 金色の髪 Golden Hair

 2001年編集、発売のベスト盤。ベストであるのだから、収録曲の殆どすべてはアルバム・トラックと同じである。しかし唯一、どのブートにさえも収録されなかった曲がある。そのタイトルや歌詞の一部は以前から流出していたものの、肝心の曲そのものはまったくもって秘蔵にされていた楽曲……それが「ボブ・ディラン・ブルース」だ。この曲が、このベスト盤の売りであることは、副題に“Includes‘Bob Dylan Blues’”とあることからも推察できるだろう。
 それも含め、収録曲もさしたる文句もない無難な選曲であるので、初心者には勧めておいても間違いはないかも知れない。シド研究者にとっては、正式に公開された採用テイク数や収録日の記述が喜ばしいことだろう。(KEN)



BBC RADIO ONE SESSIONS


2004年 Strange Fruit

1.Terrapin

2.Gigolo Aunt

3.Baby Lemonade

4.Effervescing Elephant

5.Two Of A Kind

6.Baby Lemonade

7.Dominoes

8.Love Song

 幸運なことに、ラジオ放送のライヴ音源がシドには残されている。それがBBCラジオ1での「トップ・ギア」という番組を収めたものと、「ボブ・ハリス・ショー」での演奏だ。本作は故ジョン・ピールがDJをつとめる「ピール・セッション」と、遅くなって発掘された「ボブ・ハリス・ショー」をカップリング収録したもの。現行盤でのシド唯一のライヴ・アルバム。
 狂気の噂やどこ吹く風、本作でのシドは実に落ち着いた、下手をすればアルバム以上に「こなれた」演奏をこなしている。「ピール・セッション」ではベースはデイヴ・ギルモア、ドラムはジェリー・シャーリー。なお、未発表曲の「トゥー・オブ・ア・カインド」はクレジットがシドになっているが、元同僚のリック・ライト作だというのが通説。
 「ボブ・ハリス・ショー」の3曲は、残念なのは、音質がブートレッグより数段劣り(ブート音源を基にしているのか? ってぐらい)、またDJのスピーチをカットするために無理なフェイド・イン/アウトが施されていることだ。これなら上質のブートの方がマシだ。
 あとは、オリンピアでの伝説的な演奏となった4曲が正式にリリースされることを望む!(ブート化はしてるけど)(KEN)