Hit The Right Button

Heavy Metal Kids

2003年 Heavy Metal Records

Produced and Engineered by Marco Barusso
10.Gest Vocals:Isabelle Lemauff
Design&Concept:Matteo Pederzini

1 . Message
  
(Thomas-Peyronel-Boyce-Guarnerio)
2 . Girl of my dream
  
(Thomas)
3 . Blow it all away
  
(Thomas-Peyronel-Boyce-Guarnerio)
4 . Hit the right button
  
(Thomas-Peyronel-Boyce-Guarnerio)
5 . Wildlife
  
(Thomas-Peyronel-Boyce-Guarnerio)
6 . NY streetlife
  
*インストゥルメンタル曲。作曲者クレジット無し
7 . Viva New York
  
(Ranno-Thomas-Peyronel-Boyce-Guarnerio)
8 . I walk alone
  
(Thomas-Peyronel-Boyce-Guarnerio)
9 . Crool world
  
(Thomas-Peyronel-Boyce-Guarnerio)
10. Whisky
  
(Thomas-Peyronel-Boyce-Guarnerio)
11. Hundred skeletons
  
(Thomas-Peyronel-Boyce-Guarnerio-Barusso)
12. Gotham City
  
(Thomas-Peyronel-Boyce-Guarnerio)
13. Voices
  
(Thomas-Peyronel-Boyce-Guarnerio)

For English

このアルバムは、ヴォーカルのゲーリーとギタリストを除く3人のオリジナル・メンバーと、2人の若いイタリア人ギタリストを加えて再結成したヘヴィ・メタル・キッズの復活第1弾だ。当初HMKの看板ヴォーカリストがいないということで、どうなるのかとても心配していたが、このニュー・アルバムは、そんな不安も吹き飛ばすに充分なほど新しい魅力に満ちている。
1曲目は小気味よいキースのドラムから入る、ちょっとパンク〜ニューウェイヴ風なポップでノリの良い曲。ダニーはほとんどヴォーカルに専念し、ギターを前面に出した新しいヘヴィ・メタル・キッズ・サウンドを強く印象づける。エンディングのコード展開もなかなかいい。
2曲目もそのままのノリを維持し、さらにポップにヴォーカル・ハーモニーを効果的に使っている。この曲でギター・ソロを弾いているのはBarussoの方。ちなみにBarussoは「Wisky」と「Hundred skeletons」でもソロを弾いているが、風貌に似合わずかなりアグレッシヴだ。一方のGuarnerioは比較的オーソドックスなギター・スタイルで、HMKのオリジナル・ギタリストであるミッキー・ウォーラーにも近い。3曲以外はすべてGuarnerioがリードをとっている。

3曲目はさらにハイテンポ。ディープ・パープルを想わせるギター・リフとハモンド・オルガンの音が、70年代ブリティッシュ・ハードのムードを醸し出す。こういった演出はおそらく意図してやった音づくりなのだろうが、歌詞にもLondon bridgeとかLondon townなど出てきて、ブリティッシュ・イメージをさらに盛り上げる。
つづいてエレベーターのSEから入る4曲目、このアルバムのタイトルにもなっている「Hit The Right Button」
。ギターがなんとなくチープトリックのリック・ニールセン風。ここでもダニーのハモンド・オルガンが入り、クラシック・ロックの香りが漂う。エンディングはエレベーターの扉が開き、「Well Come !」という声で終わるというドラマ仕立ての曲だ。
5曲目はハードポップ風。往年のHMKもお得意だったサウンドだ。
6曲目と7曲目はメドレーになっていて、このアルバムの1つのハイライトとも言える。6曲目はアコースティックギターとラテンの雰囲気がするSEで構成された心安らぐ小作品で、いきなりアップテンポで明るい7曲目へとつながる。この曲は個人的にも一番彼らに期待していたタイプの曲で、ダニーの軽快なピアノがオリジナルHMKを連想させる。ダニーのヴォーカルもこういったポップな曲にとてもよくマッチしているのではないだろうか。
一転して8曲目はスローなナンバー。しっとりと聞かせるダニーのヴォーカルとGuarnerioのフレーズ重視のギターソロがなかなかいい。じっくり聴いて欲しい曲だ。
9曲目は80年代ポップスを想わせるダンサブルな曲。ここでも彼らのポップ・センスがいかんなく発揮されている。
10曲目と11曲目は、彼らの新境地であるヘヴィ&パワフルなナンバーで、こういったヘヴィなギター・リフは、90年代後半以降のアメリカン・ロックのトレンドとも言える。おそらく若い2人のギタリストの影響だろう。しかし、彼らの手に掛かればヘヴィな中にもポップ・センスにあふれ、この手のサウンドにしてはかなり聞きやすくなっている。特にこの2曲のジェフ・ベックを徹底的にヘヴィにしたようなBarussoのギター・ソロはとてもカッコイイ!付け加えておくと、10曲目にゲスト・ヴォーカルとして加わっているIsabelle Lemauffは、フランスでは有名な女性歌手ということだ。11曲目の「Handred Skeltons」ではロニーのベースとキースのドラムもかなり頑張っている。
12曲目は、これまたお得意のストレートなロックンロール・サウンド。
そして最後の1曲目唯一のバラード。スティーヴン・タイラーをアク抜きしたようなダニーの声も、やはりなかなかいいと再確認できる。後半またもラテン語で会話しているようなSEが入るが、それをバックに聞き覚えのある声で、「Rock'n'Roll〜〜!」という叫ぶ声が入る。これは彼らのファースト・アルバムB面4曲目に入っていた「ロックンロール・マン」のイントロのゲーリーの叫びだ。ダニーの話しによれば、何かゲーリーに贈り物をしたかったとのことだ。
とにかくすべてが、ストレートなロックンロール・フィーリングを持った名曲ばかり。だからと言って決して懐古趣味的なものではなく、新しさと懐かしさが同居する進歩的な内容でもある。古くからのファンにも、新しいロック・ファンにもきっと受け入れられるサウンドだろう。ヘヴィ・メタル・キッズが本気で再結成しということが、このアルバムを聴けばよくわかるはずだ。(HINE)