ASIA エイジア


Written by KEN


 キング・クリムゾンなどの活動で知られるベーシスト/ヴォーカリストのジョン・ウェットンは、80年にポップなソロ・アルバムを発表した頃に、「ポップでいながらプログレッシヴなグループ」を作ろうとしていた。元イエスのリック・ウェイクマンを誘うなどしたが、構想はなかなかうまくまとまらず、しかし、強固なメンバーが集まった。
 そのメンバーとは、バグルスやイエスのキーボーディストだったジェフ・ダウンズ、イエスを去ったばかりだったギタリストのスティーヴ・ハウエマーソン、レイク&パーマーが空中分解にあったドラマーのカール・パーマー。いずれも、かつてのプログレ黄金時代を築いたメンバーだった。4人は全員、大活躍しておきながらポップ・ミュージックに染まっていった音楽業界から追い出されたメンバーだった。
 ウェットンの構想に意見の合致した4人は、結成当初からスーパー・グループとして脚光を浴びた。そのなかで82年、『詠時感〜時へのロマン』でデビューを果たす。プログレのエッセンスを散りばめながら、ポップに爆発するアルバムは頭の固いプログレ・ファンには失望を買うが、時代の風潮に乗って大ヒット。全米ナンバー・ワンを9週連続キープし、全世界で1,500万枚ものセールスを達成する快挙を成し遂げた。
 翌年にはセカンド・アルバム『アルファ』を発表、ウェットン/ダウンズの作曲チームが確立し、その反面、ファーストでは活躍していたハウが影をひそめる形になった。シングル・ヒットはあったものの売り上げは前作ほど伸びず、初の日本公演ではウェットンが一時解雇され、代打グレッグ・レイクの生硬い参加で穴を埋められた。
 ほどなくしてウェットンが復帰、その代わりにウェットンと意見の食い違っていたハウが脱退し、85年にはマンディ・メイヤーをギタリストに迎えて『アストラ』を発表。しかしプログレッシヴな姿勢のなくなった作品はセールスに繋がらず、メイヤーも本作限りで脱退。エイジアは解散寸前の状態に陥った。
 89年に様々なギタリストをゲストに迎えた編集盤『ゼン・アンド・ナウ』を発表し、やがてギタリストはパット・スロールに決定する。モスクワでのライヴを収録したライヴ盤などを発表するが、今度は本格的にウェットンが脱退。エイジアはダウンズが主導権を握ることになる。
 ダウンズが新たなパートナーとして選んだのは、声質の渋さがウェットンに似ている元エレクトリック・ライト・オーケストラPartIIジョン・ペイン。以後ふたりが中心となり、メンバーが入れ替わり立ち代わりで数枚の作品が発表されるが、いずれもウェットン時代のエイジアほどのセールスには及ばず、ツアーも小規模なものになっていった。
ハウがゲスト参加するなどもあったが、パーマーもほどなくして脱退し、オリジナル・メンバーはダウンズのみとなった。ベスト盤も何枚かリリースされたが、多くがウェットン時代中心のものだった。
 そんな中、2000年頃にウェットンとダウンズは復縁し、「ウェットン/ダウンズ」名義でのアルバムを数枚発表。来日公演を含めた大規模なツアーを行う。この頃から急速にオリジナル・エイジア復活の兆しが見え始めた。ふたりを中心にオリジナル・メンバーでのエイジア再結成に向けた話し合いが行われ、2006年4月にはダウンズがペインとのパートナーシップを解消する旨を発表。同時にオリジナル・ラインナップでのアルバム製作、コンサート・ツアーを実施する方向であることも正式に発表された。ペインはGPSというユニットを結成、独自に歩むこととなった。
 そしてオリジナル・ラインナップでの大規模なツアーを経て、2008年、オリジナル・メンバーでは25年振りとなる待望の新作『フェニックス』を発表。今後もその活躍が期待されるグループとなった。

(KEN) 2008.3 「KENの生悟り



DISCOGRAPHY

1982年 Asia(詠時感〜時へのロマン)
1983年 Alpha(アルファ)
1985年 Astra(アストラ)
1990年 Live in Moscow 1990(ライヴ・イン・モスクワ 1990)
1992年 Aqua(アクア)
1994年 Aria(天空のアリア)
1996年 Arena(アリーナ)
1997年 Now Nottingham Live
1997年 Live in Osaka
1997年 Live in Koln
1997年 Live in Philadelphia
1999年 Live Acoustic
2000年 Live at the Town and Country Club
2001年 Aura(オーラ)
2001年 Asia Live
2001年 Alive in Hallowed Halls
2002年 Bedrock in Concert
2002年 Rock and Roll Dream *ライヴ
2002年 America - Live in the USA
2002年 Live at Budokan
2003年 Live in Buffalo(ライヴ・イン・バッファロー)
2003年 Dragon Attack
2003年 Live in Nottingham
2004年 Live in Hyogo
2004年 Live in Massachussettes '83(ライヴ・イン・マサチューセッツ1983.08.19)
2004年 Silent Nation(サイレント・ネイション)
2005年 Different Worlds Live
2006年 Night of the Rising Sun
2007年 Fantasia: Live in Tokyo
2008年 Scandinavia *ライヴ
2008年 Live in the USA
2008年 Phoenix(フェニックス)


ALBUM GUIDE



1982年 Geffen/MCA

『詠時感〜時へのロマン』
Asia


 82年発表。それぞれバンドを追われた/棄てたジョン・ウェットン、ジェフ・ダウンズ、カール・パーマー、スティーヴ・ハウといった豪華メンツが組んだスーパー・グループがエイジアだった。彼らは究極の「3分間プログレ」を編み出し、ポップ・シーンに踊り出た。そんな彼らを「プログレの裏切り者」と呼ぶきらいもあったが、本作は英米ともにチャートをかけあがっている。のちにジョン・ウェットンがソロになってからも歌う曲が多数収録されているのもポイント。ポップなプログレを味わいたければ、まず本作を。ロジャー・ディーンのジャケも秀逸。(KEN)





1983年 Geffen/MCA

『アルファ』
Alpha


 83年発表。前作に引き続き、同じ4人で製作されたセカンド。路線は同じく「3分間プログレ」だが、やや長尺の曲も含む。A面/B面が動と静で分けられているという試みも見られる。ファーストに続く傑作だが、しかし本作ではスティーヴ・ハウの分担がかなり減り、それを不満にした彼は本作をもって脱退することになる。(KEN)





1985年 Geffen/MCA

『アストラ』
Astra


 85年発表。新ギタリストにマンディ・メイヤーを引き入れたエイジアのサード。だが必殺の「3分間プログレ」もいい加減万策尽きたか、ここで聴かれる曲は普通のポップ・ソングがほとんどになってしまっている。良い曲もあるのだが、いかんせん全体の整合性が低く、低迷感が拭えない。その後、ウェットンの一時脱退などバンド内部も穏やかでなくなり、エイジアはいったん活動を停止することになる。(KEN)