YNGWIE MALMSTEEN DISCOGRAPHY


Trial by Fire
1989 Polydor

Collection
1992 Polydor

Inspiration
1996 Pony Canyon

Concerto Suite for Electric Guitar and Orchestra in E Flat Minor Op.1
1998 Pony Canyon

Double Live
2000 Spitfire


1984年 Rising Force(ライジング・フォース)
1985年 Marching Out(マーチング・アウト)
1986年 Trilogy(トリロジー)
1988年 Odyssey(オデッセイ)
1989年 Live in Leningrad: Trial by Fire(トライアル・バイ・ファイアー:ライヴ・イン・レニングラード)
1990年 Eclipse(エクリプス)
1992年 Collection(イングヴェイ・マルムスティーン・コレクション)
1992年 Fire & Ice(ファイアー・アンド・アイス)
1994年 The Seventh Sign(セヴンス・サイン)
1994年 I Can't Wait(アイ・キャント・ウェイト)
1994年 Power and Glory 
*高田延彦の入場テーマ曲
1995年 Magnum Opus(マグナム・オーパス)
1996年 Inspiration(インスピレーション)
1997年 Facing the Animal(フェイシング・ジ・アニマル)
1998年 Concerto Suite for Electric Guitar and Orchestra in E Flat Minor Op. 1
      (エレクトリック・ギターとオーケストラのための協奏組曲 変ホ短調「新世紀」 )
1998年 Live in Brazil 1998
1998年 The Best of Yngwie Malmsteen Live
1999年 Alchemy(アルケミー)
2000年 Young Person's Guide to the Classics, Vol. 1
2000年 Young Person's Guide to the Classics, Vol. 2
2000年 Double Live
2000年 War to End All Wars(ウォー・トゥ・エンド・オール・ウォーズ)
2000年 Best of Yngwie Malmsteen: 1990-1999
2000年 Anthology1994-1999(アンソロジー1994-1999)
2001年 Archives(アーカイヴス)
2002年 Concerto Suite Live with Japan Philharmonic
      (コンチェルト・ライヴ・イン・ジャパン・ウィズ・新日本フィルハーモニー交響楽団)
2002年 Birth of the Sun
2002年 Attack!!(アタック)
2002年 The Genesis
2004年 Instrumental, Best, Album(王者烈奏〜インストゥルメンタル・ベスト・アルバム)
2005年 Unleash the Fury(アンリーシュ・ザ・フューリー)
2005年 Live
2005年 20th Century Masters - The Millennium Collection: The Best of Yngwie Malmsteen
2006年 Complete Box: Polydor Years




Anthology1994-1999
2000 Pony Canyon

Archives
2001 Pony Canyon

Concerto Suite Live with Japan Philharmonic
2002 Pony Canyon

The Genesis
2002 Pony Canyon

Unleash the Fury
2005 Universal Japan


◆ Album Review ◆

エレクトリック・ギターとオーケストラのための協奏組曲 変ホ短調「新世紀」
Concerto Suite for Electric Guitar and Orchestra in E Flat Minor Op.1

イングヴェイ・ヨハン・マルムスティーン&チェコ・フィルハーモニー管弦楽団、指揮:ヨエル・レヴィ
Yngwie Johann Malmsteen & Czech Filharmonic Orchestra, Yoel Levi



ロック盤とクラシック盤(より高品位)が、ジャケットのデザイン違いで同時に発売された。(上のジャケットはクラシック盤)

ロック盤: 
98年 ポニーキャニオン PCCY-01211

クラシック盤:
98年 ポニーキャニオン PCCL-00424

1. Icarus Dream Fanfare イカロス・ドリーム・ファンファーレ

2. Cavalino Rampante キャヴァリーノ・ランパンテ

3. Fugue フーガ

4. Prelude to April プレリュード・トゥ・エイプリル

5. Toccata トッカータ

6. Andante アンダンテ

7. Sarabande サラバンド

8. Allegro アレグロ

9. Adagio アダージョ

10. Vivance ヴィヴァーチェ

11. Presto Vivace プレスト・ヴィヴァーチェ

12. Finale フィナーレ

クラシック音楽が退屈だなんて、誰が言ったんだ!

と言わんばかりの気迫が感じられる。イングヴェイ・ヨハン・マルムスティーンが長年抱いていた夢が遂に実現した。エレクトリック・ギターとオーケストラの共演。過去、ディープ・パープルやウリ・ジョン・ロート等も試験的にオーケストラと共演したが、ロック・バンドとオーケストラの合奏という域を出ていなかった。本作品では、イングヴェイはあたかも第1ヴァイオリン奏者のごとく、オーケストラの一部と化している点が他とは大きく違う。「前人未踏」という言葉が相応しいアルバムである。

近年、正統なクラシック音楽の教育を受けた高度な技術を持つ演奏者たちが、クラシック音楽をポピュラーなものにしようと意図的に本流から逸脱し、時には不必要に四肢を露出してお色気路線で名声を得ようとする潮流に真っ向から反するかのように、分類上はヘヴィ・メタル・ギタリストであるイングヴェイが、クラシックの殿堂に飛び込んでいったのが本作品である。全12曲を自身が作曲し、自由な即興部分を残している点では、バッハやモーツァルトの再来とも言える。過去のクラシック音楽の忠実な再生マシーンとしての役割しか担わないクラシック奏者たちの誰よりも、本気でクラシックしているのがイングヴェイである。本作品を超える本物のクラシック作品は、イングヴェイの次作を待つしかないであろう。

イングヴェイは、某ギター雑誌のインタヴューで語っている。「バロック時代には楽器の問題で実現できなかったが、バッハやヴィヴァルディの頭の中には、もっとラディカルな音が響いていたと思う」と。これらの偉大な作曲家の脳内を分析することは不可能であるが、イングヴェイの仮説が正しいとすれば、バッハやヴィヴァルディが求めていたのは、実はストラトキャスターとマーシャル・アンプ(注)が創り出す大轟音だったのかも知れない。アンプは単なる音量増幅器ではなく、これも含めて楽器となる。イングヴェイのストラトキャスターはアンプにほぼ直結され、エフェクター(ギターの音色を変える機器)類は、愛用のオーヴァー・ドライブ(DOD製250灰色)とノイズ・サプレッサー(BOSS製NS-2)の2つのペダル以外は一切用いられていない。

(注)イングヴェイは、本作品のエレクトリック・ギター用のアンプとして、オーケストラの生楽器との相性に鑑み、常用のマーシャル・アンプではなくフェンダーのROC PRO 1000を使用している。過去にウリ・ジョン・ロートが、オーケストラとマーシャル・アンプの相性で失敗したことから学んでいる。一方、クラシック・ギター・サウンドには、アルバム録音では、ガット弦が張られブリッジにピエゾ・ピックアップが内臓された特殊なストラトキャスター(STCL-140YMのプロトタイプ)が使用されたようである。また、ライブではOvationのヴァイパーが起用された。イングヴェイ使用の楽器や機材にご興味のある方は、イングヴェイ関連品コレクターでもある筆者のブログ「おぢさんとギター」をご参照頂きたい。

本作品の曲を聴きながら目を閉じると、勇壮で物悲しく美しい北欧の景色が浮かんでくる。イングヴェイのこれまでの数々の名作『イカルスの夢 組曲作品4』『アイ・アム・ア・ヴァイキング』『デーモン・ドライバー』『ファイア・アンド・アイス』『ブラザーズ』『ヴェンジェンス』等の決めフレーズが全12曲の随所に散りばめられており、某ギター雑誌のイングヴェイ特集で、これらのフレーズを弾きかじったギター・キッズ(筆者も含む)にとっては、「ここにも」「またここにも」と、思わず微笑んでしまう一面もある。オーケストラと交わることにより、これらの決めフレーズが新たな輝きを見せる。

アルバムの制作過程は、先ずチェコのプラハでオーケストラ部分のみを録音し、それをマイアミにあるイングヴェイの自宅スタジオに持ち帰ってギター・パートを重ねた。正真正銘の「カラオケ」にギターを合わせて出来上がったアルバムである。ロック音楽と違い、ドラムもクリック音もない「カラオケ」に合わせるため、王者イングヴェイも相当予行練習をしたと伝えられている。その点、01年6月に東京で行なわれた新日本フィルハーモニー交響楽団との共演は、イングヴェイのソロが主導であったため、アルバムよりも活き活きとした演奏が楽しめる。イングヴェイは、指揮者の竹本泰蔵氏を「コラ・パルテ(オーケストラ全体の演奏を、ソリストに合わせて指揮すること)」を理解していると大絶賛していた。

イングヴェイとオーケストラの共演ライブが日本で真っ先に行なわれたのは、日本にそうした演奏形態を受け容れ易い音楽文化があったからであろう。顧みれば、演歌も含めた日本の歌謡曲は、歴史的にオーケストラの伴奏で歌われ、そのオーケストラの中には通常、クラッシク・ギターかエレクトリック・ギターの奏者が入っていた。最近の若年層の嗜好は分からないが、概して長調よりも短調を好む傾向がある多くの日本人には、イングヴェイの「泣きのギター」は自然に溶け込むのであろう。やや唐突感があるかも知れないが、筆者は「古賀メロディが、日本におけるイングヴェイ人気の土壌を醸成したのでは?」と思うこともある。

現代の日本では、「ロックは不良の音楽、エレキ・ギターは不良の象徴。」等と後ろ指をさされることはなくなったが、それでもヘヴィなロック音楽は、隣近所の迷惑を考えるとヘッドホンで聴かざるを得ない。ドラムが一切入らず(打楽器はティンパニーくらい)、クワイアー(合唱団)が荘厳な空気を醸し出す本作品は、休日の午後にコーヒーを飲みながら、閑静な住宅街でも周囲に憚ることなく適度な大音量で楽しむことができる。そして、ご近所には「クラシック愛好家」だと嘯くのもよい。「一番のお気に入りは、20世紀最高の作曲家イングヴェイ・ヨハン・マルムスティーン、スウェーデン人です。」とでも語れば、少しは尊敬の眼差しで見られるかも知れない。本来、音楽のジャンルに貴賎はないのであるが。

(おぢさん記)