STING スティング


Written by KEN


 ゴードン・マシュー・トーマス・サムナー、芸名スティングは51年10月2日、イギリスのニューカッスル・アポン・タインに産まれる。ジャズ・バンドなどのベーシスト/ヴォーカリストとして活動したのち、77年にポリスを結成。84年に活動を休止するまで旺盛に作品を発表し続ける。ポリス結成以前のライヴなどで、蜂を連想させる黄色と黒の縞の上着を愛用していたことから、スティング(sting=「ちくりと刺す」の意味)と呼ばれるようになった。

 ポリス活動停止後、85年にソロ活動を本格的に開始。ジャズ・ミュージシャン(ケニー・カークランド、オマー・ハキム、ブランフォード・マルサリス他)を多く起用してソロ・デビュー・アルバム『ブルー・タートルの夢』を制作し、注目を浴びた。
 その後もライヴではポリス・ナンバーを歌ったり、順調に作品を発表していくスティングだったが、その実、活動の裏には作品発表に先駆けての両親の死など、哀しい出来事もあった。しかしジャズやAORに根ざした音楽性が注目を浴び、ソロ作品やサウンドトラック、オムニバス盤への参加など、ポリス以上の成功をソロでおさめることになる。特に映画の主題歌や挿入歌をよく手がけ、映画『レオン』で使用された「シェイプ・オブ・マイ・ハート」は「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」とともに代表曲になった。日本のファンにとっては嬉しいことに、94年には宮崎シーガイアのテーマ・ソングも手がけている。質の高い作品を発表し続け、99年には最高傑作『ブラン・ニュー・デイ』で第42回グラミー賞を2部門受賞。ほかにも熱帯雨林の保護活動家、国際的な人権保護運動家の側面も持つネイティヴな活動家となった。

 2007年、まさかの活動再開を告げたポリスで活動を開始。ポリス時代の楽曲もスティングのソロ活動と相俟って、再評価の兆しを見せている。なお、息子のジョー・サムナーはフィクション・プレインというバンドのヴォーカルとして活動中。

(KEN) 2008.3 「KENの生悟り



DISCOGRAPHY

1982年 Brimstone & Treacle [Original Soundtrack] A&M
1985年 The Dream of the Blue Turtles(ブルー・タートルの夢)
1986年 Bring on the Night [live] A&M
1987年 Nothing Like the Sun(ナッシング・ライク・ザ・サン)
1991年 The Soul Cages(ソウル・ケージ)
1991年 Live in Newcastle Alex
1991年 Peter and the Wolf Deutsche Grammophon
1993年 Ten Summoner's Tales(テン・サマナーズ・テイルズ)
1996年 Mercury Falling(マーキュリー・フォーリング)
1997年 Strange Fruit [live] ITM
1999年 Brand New Day(ブラン・ニュー・デイ)
2001年 All This Time [live] A&M
2003年 Sacred Love A&M
2006年 Songs from the Labyrinth [live] Deutsche Grammophon
2007年 The Journey and the Labyrinth: The Music of John Dowland Deutsche Grammophon


ALBUM GUIDE



1985年 A&M/ポリドール

『ブルー・タートルの夢』
The Dream of the Blue Turtles


 ポリス在籍中(実質的に解散状態)の85年に発表されたソロ・デビュー・アルバム。スティングが音楽活動初期に志し、その中途でポリスを結成したため進みたくとも進めずにいたジャズ方面へのアプローチを強調した仕上がりとなっており、ブランフォード・マルサリスやオマー・ハキムなど豪華な演奏陣の貢献もあって「まるでジャズ」な瞬間も多くない。最もジャジーながら代表曲も多く含み、数ある代表作のひとつと言える。(KEN)





1987年 A&M/ポリドール

『ナッシング・ライク・ザ・サン』
Nothing Like the Sun


 母親の闘病生活に裏打ちされた本作(87年発表)にはしばしば、生を求める希望の光が見える。それゆえに優しげな女性性あふれる音色と叙情的な音像が沁み、時に生々しく響くのだろう。そうして実質的に本作は、ミックス中にこの世を去った母親に捧げられた作品となった。名曲「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」を筆頭にソロ代表曲を多く含み、間違いなく彼のソロ代表作となった。盟友アンディ・サマーズやエリック・クラプトンもゲスト参加。(KEN)





1991年 A&M/ポリドール

『ソウル・ケージ』
The Soul Cages


 前作制作中に死を迎えた母親に次ぐ、父親の死。それが、スティングを本作(91年発表)への創作に動かした。原点回帰とばかりに少数精鋭で録音された本作はいつになくシリアスで、父性(男性性)みなぎる仕上がりとなっており、垢抜けたサウンドよりも渋味あるナンバーが多くを占める。中でも「アイランド・オブ・ソウルズ」や表題曲は、父親への愛情を語ったものとしてしみじみと聴けるはず。地味ではあるが、前作『ナッシング・ライク・ザ・サン』と対を成す重要作。(KEN)





1993年 A&M/ポリドール

『テン・サマナーズ・テイルズ』
Ten Summoner's Tales


 両親との死別を作品に昇華することで振り切り、習得した多くを詰め込んだ傑作(93年発表)。10粒(+イン/アウトの2粒)の物語風に描いた佳曲たちはジャズへの劣等感も血縁へのプライドも消した、肩の力が抜けた仕上がりとなっている。寓話的なスタンスを選択することで音色は垢抜け、ソロ作中でも最も親しみやすく、ヴァラエティ豊か。なかでも「シェイプ・オブ・マイ・ハート」は哀しい音色が異彩を放ち、映画『レオン』のエンディング曲にもなった。(KEN)





1996年 A&M/ポリドール

『マーキュリー・フォーリング』
Mercury Falling


 スティングが最も「演奏」を楽しんだのは、96年発表の本作ではあるまいか? これまでの彼の足跡をまとめるかのようにクロスオーヴァーな仕上がりには、さまざまな意味で「折衷」という言葉が似合う。ゆえに音世界のバランスは秀逸なものがあり、ユーモアとシリアスが両立して成熟を見せた出来。旋律は美しくもはかなく、聴く者を感嘆させる。「魂の再生」という当時の売り文句が、今にして意味を持つ傑作。かさねて聴ける渋い愛聴盤です。(KEN)





1999年 A&M/ユニヴァーサルインターナショナル

『ブラン・ニュー・デイ』
Brand New Day


「再出発」とでも言うかのようなタイトルの本作(99年発表)には、一聴して「生歌とデジタルな音色の融合」という指針がうかがえる。その甲斐あって、歌心とエレクトロニクスの融合という順応性の強さを見せ付けた秀逸作。その後の彼の、リズムを強調しだした活動を見やるに、ターニング・ポイントとも言える重要作。当時の彼が打ち出した「ハイブリッド」という言葉が定着している現在では、むしろ新鮮に響くだろう。あいかわらず演奏陣が豪華なこと豪華なこと。(KEN)