RHAPSODY ラプソディ


音源提供協力:HIROさん




Symphony Of Enchanted Lands
Limb/ビクター

Dawn Of Victory
Limb/ビクター

Rain Of A Thousand Flames
Limb/ビクター

Power Of The Dragonflame
Limb/ビクター

ディスコ・グラフィー

1997年 Legendary Tales(レジェンダリー・テイルズ)*壮大さに度肝を抜かれたシンフォニック・メタルの名盤
1998年 Symphony Of Enchanted Lands(シンフォニー・オブ・エンチャンテッド・ランズ)*前作よりさらにクラシック音楽に接近
2000年 Dawn Of Victory(ドーン・オブ・ヴィクトリー)*メタル色が強くなり、現在のラプソディ・サウンドをほぼ確立
2001年 Rain Of A Thousand Flames(レイン・オブ・ア・サウザンド・フレイムス)*未発表曲を集めた、彼らにしては普通のアルバム
2002年 Power Of The Dragonflame(パワー・オブ・ザ・ドラゴンフレイム)*エメラルド・ソード・サーガは本作を持もってついに完結
2004年 Tales From The Emerald Sword Saga(テイルズ・フロム・ジ・エメラルド・ソード・サーガ)*彼ら初のベスト
2004年 Dark Secret(ザ・ダーク・シークレット)
*映画俳優クリストファー・リーがナレーションで参加したEP



★★★名盤PICK UP★★★

レジェンダリィ・テイルズ
Legendary Tales

ラプソディ
Rhapsody

1997年 Limb/ビクター

1 .イーラ・テーナックス
 
Ira Tenax

2 .ウォリアー・オブ・アイズ
 Warrior Of Ice

3 .レイジ・オブ・ザ・ウィンター
 Rage Of Winter

4 .フォレスト・オブ・ユニコーンズ
 Forest Of Unicorns

5 .フレイムス・オブ・リヴェンジ
 Flame Of Revenge

6 .ヴァージン・スカイズ
 Virgin Skies

7 .ランド・オブ・イモータルズ
 Land Of Immortals

8 .エコーズ・オブ・トラジディ
 Echoes Of Tragedy

9 .ロード・オブ・ザ・サンダー
 Lord Of The Thunder

10.レジェンダリィ・テイルズ
 Legendary Tales

 おそらく音楽的完成度から言うと後のアルバムの方が上だろう。近年のアルバムでの、オーケストレーションからメタル・サウンドへの自然なつながり方は見事としか言いようがない。しかし、本デビュー作での荒削りなサウンドは、それを上回るほどの魅力をもち、混ざり切らない不完全さや危うさが、聞き手に静と動のスリリングな快感と、忘れかけたロックの本質(新しいサウンドを生み出そうとする力)を思い起こさせる。
 最初に断っておくが、個人的にはヘヴィ・メタルはあまり聞かないし、スラッシュ・メタルともなると苦手と言ってもいいくらいだ。だが、中にはそれらの音楽と他の音楽とを融合させ、その存在を無視できないほど素晴らしいサウンドを創り出すものもいる。このラプソディーもまたスラッシュ・メタルにバロック音楽やトラッド・ミュージックなどを融合させ、壮大でドラマティックなプログレ・メタルを完成させた偉大なるバンドの1つだろう。
 スラッシュ・メタルでよく使われる速いギター・リフ、これはスウィープ・ピッキングと呼ばれるギター奏法らしいが、ラプソディのほとんどの曲にこれが使われている。そこにメタル独特の絶叫ハイトーン・ヴォイスが絡み、普通ならもう後ずさりしたくなるようなヘヴィさなのだが、随所に入るアナログ楽器によるバッキングやシンフォニックな曲構成が、異次元の世界へとリスナーを導く。
 まずは序章にあたる1曲目〜実質的な曲の始まりである2曲目。これだけでもう完全にメロディック・メタル・ファンならメロメロだ。ファンタジー系映画の挿入歌のような仰々しいオーケストレーション。ここへオペラ歌手のようなファビオ・リネオの伸びやかなヴォーカルが絡む。そして、まもなくルカ・トゥリリのハードなギターで一気にヒート・アップし、これから始まる長い長いストーリー(エメラルド・ソード・サーガ)の幕開けにふさわしいファビオの絶叫。それは「俺たちはメタル・バンドだぜ!」とはっきり宣言するような雄叫びでもある。だが、メタル・ファンのみならず、すべてのロックファンをも惹き付ける彼らの魅力がこの中に凝縮されている。途中の転調やワンパターンではないドラムのリズムもメチャメチャかっこいい。終盤、弦楽器によるバロック音楽のようなフレーズが入り、一瞬の安らぎをもたらした後、今度はギターでもそのフレーズを弾きはじめ、アナログとエレクトリックの弦楽器バトルが繰り広げられる。ひとつ間違えば、ディープ・パープル1期のような、へんてこな音楽(実は結構好きだが)
を生み出してしまいかねないが、ラプソディのそれは、1つの流れとして自然に絡んでいるところがすごい。
 このアルバムの聞き所は他にもいっぱいある。激しい曲どうしの間にアコースティックな小作品を入れる事によって、静と動のメリハリをいっそう際立たせていることも特筆すべき点だ。4曲目のトラッド・ミュージック風小作品は、叙情派プログレの代表ルネッサンスをも思い起こさせるし、6曲目のハープシコードやフルート、セロなどを使った室内管弦楽のような曲は、まるっきりバロック音楽そのものだ。8曲目はピアノとストリングスの静かな出だしからムーディー・ブルース風の分厚いコーラスで締めくくられる。それらの曲すべてが連動し合い、組曲として壮大な音絵巻を形成している。
 彼らの出身地イタリアには、P.F.M.やニュー・トロルスなど技術的にも音楽的にもズバ抜けたプログレ・バンドの先輩たちがたくさんいるが、ラプソディもまたそういったイタリアン・ロックの伝統に恥じない技術と伝統を持った素晴らしいバンドであることは紛れも無い。
 語り尽くせぬほど緻密でアイデアに満ちたこのサウンドは、実際に聴いて確かめていただくほか無い。1曲づつ解説していると膨大な量の文章になってしまうので省かせてもらうが、他のメタル・バンドたちとはスケールがまったく違うと言っておこう。
 尚、サード・アルバム以降の彼らは、オーケストレーションとメタル・サウンドを1曲の中で自然に調和させることに成功する。個人的にはあまりにもスムーズになり過ぎて、魅力を失ったように感じるが、メタル・ファンには、5作目の「パワー・オブ・ザ・ドラゴンフレイム」などもお薦めだ。(HINE)