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(HINE) |
Wouderwall Music Apple/東芝EMI |
Electtronic Sound Apple/東芝EMI |
All Things Must Pass EMI/東芝EMI |
The Concert For Bangla Desh Apple/CBSソニー |
Extra Texture EMI/東芝EMI |
The Best Of George Harrison EMI/東芝EMI |
Thirty Three & 1/3 DarkHorse/WEA |
DISCOGRAPHY 1968年 Wouderwall Music(不思議の壁)* |
George Harrison DarkHorse/WEA |
Somewhere in England DarkHorse/WEA |
Gone Troppo DarkHorse/WEA |
Cloud Nine DarkHorse/WEA |
Chant and Be Happy! XXI Records |
Live in Japan DarkHorse/WEA |
Brainwashed DarkHorse/東芝EMI |
リビング・イン・ザ・マテリアル・ワールド
Living In The Material World ジョージ・ハリスン 1973年 EMI/東芝EMI |
SIDE-A 1.ギヴ・ミー・ラヴ 2.スー・ミー,スー・ユー・ブルース 3.ザ・ライト・ザット・ハズ・ライテッド・ザ・ワールド 4.ドント・レット・ミー・ウェイト・トゥ・ロング 5.フー・キャン・シー・イット 6.リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド | SIDE-B
1.ザ・ロード・ラヴス・ザ・ワン 2.ビー・ヒア・ナウ 3.トライ・サム・バイ・サム 4.ザ・デイ・ザ・ワールド・ゲッツ・ラウンド 5.ザット・イズ・オール |
このアルバムは、ジョージがビートルズ解散後にリリースした第2弾のソロ・アルバムだが、実質は初の完全オリジナル作と言ってもよい。それというのも、プロデュースにはビートルズ時代から彼らをを支えてきたフィル・スペクターを起用せず(当初は起用する予定であったが)、初めてジョージ自らがプロデュースし、曲も前作「オール・シングス・マスト・パス」がビートルズ時代より書きためた曲であったのに対し、全曲71年以降に作った、まったくの新しい曲ばかりだからだ。しかも、アルバム全体を通して、「宗教っぽさ」「インド音楽」「神との対話」といった要素がちりばめられ、ジョージの全アルバム中、もっとも統一された雰囲気の内容になっている。 当時のジョージは、母の死、元ビートルズのメンバー同士の訴訟合戦、マネージャーの横領疑惑、妻パティのエリック・クラプトンとの不倫、チャリティであったはずの「バングラデシュ・コンサート」の収益からイギリス政府が税金を払うよう命じてきたりと、様々な問題を抱えていたにも関わらず、実に精力的な活動をこなし、アーチストとしても彼の生涯で一番充実していたのではなかろうか。もしかすると、この時期の彼はナチュラル・ハイ状態だったのかもしれない。 まったく1曲目からすばらしい!なんと良いイントロなのだろう。歌詞は「私に愛をください」と神にすがる、すこし情けない内容だが、これもまたジョージらしい。ジョージ・サウンドの個性として、すっかり定着した感のあるスライド・ギターの音も心に染み渡る。ちなみにこの曲は、ポール・マッカートニーの名曲「マイ・ラヴ」を蹴落として、2週連続全米No.1に輝やいている。 2曲目はジェシ・エド・デイヴィスというアーチストに提供した曲のセルフ・カヴァーで、ビートルズのメンバー間の訴訟問題をユーモラスに描いた内容。この曲の他、アルバム・タイトルでもある6曲目でも、物質社会と精神世界を対比しながら自分を含む元ビートルズのメンバー達への批判的な内容を歌詞にしている。 その他、A-4やB-5では、妻パティへの未練がましいラヴ・ソングを唄ってみたり、アルバム全体を通しての実にプライベートな内容に対し、「神へ懺悔」し、「救いの手を求める」ジョージのやるせない当時の心情をありのままに表現している。 尚、本作にはリンゴ・スター(ds)、ジム・ケルトナー(ds)、ジム・ゴードン(ds)、ニッキー・ホプキンンス(key)、クラウス・フォアマン(b)などの豪華メンバーが参加。アルバム自体もポール・マッカートニーの「レッド・ローズ・スピードウェイ」を抑えて5週連続全米No.1の大ヒットを記録している。 |
SIDE-A
1.ハリズ・オン・トゥアー 2.シンプリー・シェイディ 3.ソー・サッド 4.バイ・バイ・ラヴ 5.マヤ・ラヴ |
SIDE-B
1.ディン・ドン 2.ダーク・ホース 3.ファー・イースト・マン 4.イット・イズ・ヒー(ジェイ・スリ・クリシュナ) |
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近年、このアルバムやその前後のアルバム「リビング・イン・ザ・マテリアル・ワールド」「ジョージ・ハリスン帝国」を指し、暗くてコンディションも良くない駄作だと批評するファンがいる。時代は変わったものだ…。古くからのファンからすると、「君はホントにジョージのファンなの?」と疑いたくなる。 はっきり言って、ジョージの音楽は最初から暗いのだ。ビートルズ時代の名曲である「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」や「サムシング」は明るいだろうか? いや、希望はあるにせよ、湿り気を帯びた、決して明るいとは言えないサウンドだろう。 ジョージが元々シャイで精神的にもろいところは、親友であるエリック・クラプトンとも共通する。似た者同士が同じ人を好きになっても不思議はないし、クラプトンはドラッグに溺れ、ジョージは宗教に頼っていったのも、心の弱さをカヴァーするため、何かにすがりたいという同じような理由からだろう。 しかしまた、最悪の時期に最高の仕事をするというのも、彼らが共通して持つ天性の才能に他ならない。 本アルバムは、ジョージの作品中でも、最もそんなジョージらしさが出ているアルバムではないだろうか。これを傑作と感じない人は、昔ながらのファンではなく、「クラウド・ナイン」あたりから聞き始めたファンなのだろう。それが悪いとは言わないが、あの軽快なサウンドはジェフ・リン(プロデューサーであり、エレクトリック・ライト・オーケストラのリーダー)が作り出したマジックであり、ありのままのジョージでは決してない。本作は、ジョージ自らがプロデュースし、曲を作り(Bye Bye, Loveは歌詞のみジョージ)、唄い、演奏する、紛れもないジョージそのものの音楽作品なのだ。 プロデュースに関しては、前作「リヴィング・イン・ザ〜」で、フィル・スペクターがアルコール依存症により精神に異常をきたし(ジョン・レノンのアルバム・レコーディング中に発砲したり、マスター・テープを持ち逃げしたりしていた)、やむなくジョージ自らが引き継いだという状況とは違って、最初から完全にジョージ自身が担当した。そのため、より時間をかけ、各曲ともじっくりと練り上げられ、ジョージの思い描いたサウンドが今まで以上に具現化されているのでないだろうか。それはどういったサウンドかというと、シンプルでライヴ感があり、楽器や声の1つ1つが鮮明に聞こえてくるというものだ。ヴォーカルも曲によって声質や表情を変えている。まるでその場から語りかけてくるような印象を受け、説得力がずいぶん増している。ジョージが実に身近に感じられるのだ。 よくB-2の「ダーク・ホース」を聞いて、「この時はジョージの声の調子も悪かった」などと評しているのを目にするが、ジョージほどの一流ミュージシャンが、それをそのままにしてリリースするだろうか?それがもし仮に本当だとしても、意図してやったもので、こちらの声の方がこの曲に合っていると判断したからだろう。本作は2回に分けてレコーディングされ、間にインドでの2ヶ月に渡る休養までとっている。仕上がりに満足せず差し替えようと思えばいくらでも差し替えられたわけだ。しかもそんなできの悪いと思っている曲をシングルにするはずもない。個人的には、ジョージのそれまでにないタイプの曲でとても好きだ。しゃがれた声も、昔のブルース・メンのようでカッコよく、曲調にピッタリと合っている。 さらに本作を評価しない人の理由としては、「セールスも思わしくなかった」と必ずあるが、何を根拠に言っているのかまったくわからない。このアルバムは、堂々の全米4位を記録し、即ゴールド・ディスクにも輝いている。名作といわれる「慈愛への輝き」が全米最高位14位、「クラウド・ナイン」が同7位ということを考えれば、相当売れた部類に入るはずだ。もちろんセールスがアルバム内容のすべてと一致しているわけではないが…。ワールド向けのシングル「ダーク・ホース」は、大きなヒットをしなかった(全米15位)ものの、当時日本では「ディン・ドン」が、ラジオのヘヴィ・ローテーションになっていたのを記憶している。確か洋楽のヒットチャートでも長く上位に留まっていたはずだ。(全米チャートでは36位止まり) 他の各曲もすばらしい。A-1はインストゥルメンタルだが、それでもすぐにジョージと分かる個性は、他のビートルズのメンバー以上に独特だ。ロックにジャズやブルース、インド音楽をフュージョンしたようなジョージ独自のサウンドは、前作よりは少し宗教的要素を減らし、ついに完成の域に達したようだ。 歌詞はかなりネガティヴで暗い。ほとんどが、妻パティを親友エリック・クラプトンに奪われ、失意のどん底にあるという悲痛な叫びだ。B-1「ディン・ドン」に至ってはもう、「鐘をならして古きを送り出そう〜♪」と、躁鬱(ソウうつ)の躁状態にも聞こえる。しかし、これがありのままのジョージであり、当時の素直な心の内をさらけ出したものなのだろう。そして、それらの歌詞が、メロディーの良さと相まってとても深く感動できる内容になっている。 最後に本作への主な参加メンバーも記しておこう。アルヴィン・リー(g)、ロン・ウッド(g)、ロベン・フォード(g)、リンゴ・スター(ds)、アンディ・ニューマーク(ds)、ジム・ケルトナー(ds)、ニッキー・ホプキンス(piano)、ビリー・プレストン(key)、トム・スコット(horn)、そして、エリック・クラプトンもA-4に参加している。 |