THESE DAYS / BON JOVI ジーズ・デイズ / ボン・ジョヴィ 1995年6月12日発売 プロデューサー:ピーター・コリンズ、ジョン・ボン・ジョヴィ、リッチー・サンボラ 全米9位 全英1位 |
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再び5人の結束力を高め“信念を貫く”との魂の想いのもとにリリースされたアルバム「キープ・ザ・フェイス」から約3年、さらにベスト・アルバム「クロス・ロード」から約8ヶ月のブランク後に発表された通産7枚目のオリジナル・アルバム。(ベスト盤含む) まずアルバム全体から受ける印象は、今までのボン・ジョヴィがやっていた力強く“勢い”のあるサウンドとは一線を画すと言うのが第一印象で、一癖も二癖もあるそんなアルバムなのだ。 バンド結成10周年を向かえ、バンド・アンサンブルも充分と熟成し、ある意味“ボン・ジョヴィ”も大人になったということか。 “勢い”に任せず、じっくりと練られたソングライティングやサウンドは、「ワイルド・イン・ザ・ストリーツ」や「ニュー・ジャージー」の頃のを期待すると、おもっいきり裏切られる! その”裏切り”を聴き手が良しとするか、そうでないかでこの「ジーズ・デイズ」の評価は変わる。 個人的には「ジーズ・デイズ」を“裏”名盤とみているが、そこは聴き手のあなたに任せるとして、まずはじっくりと聴いて頂きたい。 ジョン曰く、“「We」的なアルバム”を表現したそうで、バンド全員でアイデアを出し、詞的にもより人生観の強く反映された内容とみることが出来る。 その詞の方は、神様、宗教という言葉があったり、希望の見えない孤独な叫びのようなものだったりと、どこか寂しさがある叙情性の高い内容で、社会性の強いメッセージ・ソングである。 俺たちが“生きてることをロックで表現するぜっ”的な'80年代的陽気なロック・サウンドは影を潜め、バンドと共に熟成された感の強い、大人に成長したロック・サウンドに出会うことができる。 サウンドは派手に装飾が成されていない分ストレートかつシンプル(ライブ感のある音が強調された)に仕上がり、'80年代を生き抜いてきた男たちの余裕なのか、変な小細工が少ない。その分、彼らが伝えたいものが実にシンプルに心地よく、耳に、そして心に、じわじわ伝わってくるのだ。 やはり彼らが創り出すロックは、サウンドと共に、その卓越された“ソングライティング”(見たままの詞を含め、その詞から感じる取れる情熱や魂)を楽しむのが実によい。 この頃からバンド内のメンバー脱退を含め、周りの環境もかなり変わり(時代はグランジ・オルタナティヴ・ロックの真っ只中)、それまでの全米での人気に陰りが見え始めた。このアルバムは全米9位、全英1位と、ヨーロッパでは好セールスを挙げているものの、アメリカでは今ひとつの反応だった。 しかし、新しいムーブメントとして大きな波になりつつあった、その“オルタナティヴ”に真っ向から勝負を挑み、いわゆる“HR/HMバンド”のボン・ジョヴィが生き抜いてきたことは、たいへん有意義なことで、彼らのバンドとしての成長と、貫禄さえ感じとれるものであった。 ここでの音楽的成長が、次作へと確実に繋がっているのは間違いない。 |
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1.ヘイ・ゴット Hey God いきなり親しみやすく力強いギター・リフから始まる、オープニング曲。 「一人の人間が幸せになれるのに、隣の人間は何故不幸になるかを自問した」と言う、メッセージ色の濃い曲。 2.サムシング・フォー・ザ・ペイン Something for the pain アルバム中、一番曲作りに苦労したそうで、出来上がるまでに6ヶ月は掛かったらしい。 シングル・カットされ、日本では車のCM曲にも使用された。 3.ディス・エイント・ア・ラヴ・ソング This ain't a love song 今までのアルバムには必ず最高なラヴ・ソングが収録されているが、この曲もそんな1曲。 そして個人的には、バンド史上でも1,2位を争うと思えるほどのパワー・バラード。 4.ジーズ・デイズ These days タイトル曲であり、このアルバムを代表する力強いメッセージが込められた容で、曲の終盤まで来くと何か胸にグッとくる・・・そんな曲。 この曲は最近のライブでは聴けないのだが、いずれはまた聴きたいと思う隠れ名曲。 5.ライ・トゥ・ミー Lie to me ジョン曰く、「トミーとジーナ」のその後(リヴィン・オン・ア・プレイヤーに続き)の物語だそうである。 さらに次作にもこの続き(?)の話しが出てくる。 6.ダムド Damned ザ・アズベリー・ジュークス(ホーン・セクション)を使用し、曲全体にシャッフル感のある、ビートが前面に出た、前作収録の「キープ・ザ・フェイス」に近い曲調。 7.マイ・ギター・ライズ・ブリーディング・イン・マイ・アームス My guitar lies bleeding in my arms リッチーの弾くギターが渋くR&Bしていて、このアルバムを象徴しているかのようなサウンド。 ここでのギターソロは、このアルバム中でも最高レベルの名演であり、是非聴いて頂きたい。 8.(イッツ・ハード)レッティング・ユー・ゴー It's hard letting you go 元々はジョンの出演した映画に用意された曲。 ジョン、リッチーとロビー・ブキャナンの3人でプレーしたらしく、ジョン自らキーボードを弾き、生で歌って完成させている。 9.ハーツ・ブレイキング・イーヴン Hearts breaking even 珍しくジョンとデズモンド・チャイルドの2人だけの共作。 ここでもリッチーのギターはブルージーに弾き鳴らし、キマっている。こういうプレーが出来るからこそバンドの成長を強く感じるのだ。 10.サムシング・トゥ・ビリーヴ・イン Something to believe in このアルバム用に最初に書いた曲で、詞には神、宗教、天使が出てきて、マリファナやヘロインまでもあり、曲調も含めどこかネガティブな印象を受ける。 ジョン曰く、とても“内省的”な歌だそうだ。 11.イフ・ザッツ・ホワット・イット・テイクス If that's what it takes サウンドにライブ感のある(このアルバムは全体的に感じるが)音作りと、ジョンが描く詞がどことなく合っていると思わせるような曲。 R&B的なギターと乾いた感じのドラムの音が余計に生っぽく聴こえ、ボン・ジョヴィ・サウンドの中でも何か新鮮な気持ちにさせられる。 12.ダイヤモンド・リング Diamond ring アルバム「ニュー・ジャージー」でも「キープ・ザ・フェイス」でも入り損ねた曲だそうで、アンプラグド的な曲調。 ジョンもしっとりと歌いあげている。 13.オール・アイ・ウォント・イズ・エヴリシング All I Want is Everything (日本盤&USデジタル・リマスター盤ボーナス・トラック) ジョンらしい、“新人類”(若い世代)に向けた、ボーナス扱いが勿体なく思うメッセージ・ソング。 「俺たちには何もない」と言う若者に対して、「いや、君だって何か持っているんだ!」ということらしい。 14.ビター・ワイン Bitter wine これもボーナス曲。 ピアノ、アコギの音がしっとりと心地よく、しかも余計なアレンジが少ない分“ジョンっていい声してるし、歌うまいなぁ”と思わせる・・・でも失恋・ソング。 |