KAJAGOOGOO カジャグーグー



君はTOO SHY
White Feathers

1982年 EMI/東芝EMI
EXTRA PLAY
Extra Play

1984年 EMI
カジャ3
Crazy Peoples Right To Speak


1985年 EMI/Perlophone


★★★名盤PICK UP★★★

アイランズ
Islands
カジャグーグー
Kajagoogoo

1984年 EMI/東芝EMI

SIDE-A

1.ライオンズ・マウス
The Lion's Mouth

2.ビッグ・アップル
Big Apple

3.パワー・トゥ・フォー・ギヴ
The Power To Forgive

4.メルティング・ザ・アイス・アウェイ
Melting The Ice Away

SIDE-B

1.バック・オン・ミー
Turn Your Back On Me

2.アイランズ
Islands

3.二人のプレイン
On A Plane

4.パート・オブ・ミー
Part Of Me Is You

5.ザ・ループ
The Loop

 リード・ヴォーカルのリマールを辞めさせてまで、彼ら(正確にはニック・ベッグスだけかもしれない)がやりたかったこと。それがこのアルバムにはいっぱい詰まっている。もともとカジャグーグーの前身バンド「Art Nouveau」ではニックがヴォーカルもとっていたため、ヴォーカリストを補充しなくてもまったく問題はない。しかも、リマールよりさらに特徴のあるニックの声は、好き嫌いはあるにせよ、なかなか上手いのだ。
 彼らはファースト・アルバムの時から、全編ファンキー・ビートを効かせながらも、わりと多彩な曲調で、悪く言えば散漫な印象があった。しかし、本作では音楽的な方向性に統一感があり、まったく迷いがない。もちろん売れたことによる自信というものもあるのだろうが、それ以上に全曲の作曲・作詞、プロデュース(共同)、ヴォーカル、ベースを1人でこなすニック・ベッグスを中心に、メンバー全員が一丸となって全精力を注いだということが、結果的にこういう統一感を生み出しているのだろう。
 サウンドはまさにファンキー&ソウルフル。ホーンをほぼ全曲に投入するなど、アレンジ面でもリマール時代より少し大人っぽい感じに仕上がった。
 全英8位まで上昇したA-2の「ビッグ・アップル」や同25位のA-1「ライオンズ・マウス」こそ比較的リマール時代のサウンドに近いが、それでもよく聞くとA-2はイントロやサビ部分に大胆なホーン・アレンジをとり入れてみたり、A-1もチャイナっぽいメロディーを取り入れていたりと、これまでにない魅力を積極的にアピールしている。だが、新生カジャグーグーの真の魅力はそれ以外の曲に顕著に現れる。特に驚いたのはB-3「二人のプレイン」。これはもうはっきり言ってフュージョンだ。しかもファンキーでソウルフルな個人的にも最も好きなタイプのフュージョン・サウンド。エレピ(エレクトリック・ピアノ)の音や後半に入るホーンもかなり効果的。ニックのチョッパー・ベースも全快だ!話のついでにニックのベースについて少し触れておくと、本作の中で彼は実に多彩ベース・サウンドを聴かせる。楽器自体も「スティック」と呼ばれるフレットが短いギターとベースの間の子のような楽器や、「フレットレス・ベース」を効果的に使い分け、同じ曲中でも途中から持ち替えたりしている(ライヴでは無理だろうが)。
 前作ではあまり目立たなかった他のパートのメンバーたちも、今回はかなり頑張っている。ギターのスティーヴは積極的にジャズ寄りの奏法を取り入れているし、ドラムのジェズもエレクトリック主体のドラミングから、今回はあくまでアコースティックなドラムを主体にしながら効果的にパーカッションやエレクトリックも使うという方向へ転換している。
 楽曲面では、リマールを欠いたことでポップさが弱まっているが、別に曲が悪くなった印象はまったくない。聞き込むほどに良くなる曲が多く、かえって新生カジャグーグーにとっては好結果だろう。
特にクインシー・ジョーンズあたりが押し進めていたR&Bベースのフュージョンからかなり影響を受けているようで、バック・コーラスの入れ方や、時にはファルセットも使うニックのヴォーカル、ほぼ全曲で使われているホーン・セクションなどがそれと感じさせる。A-3やB-2などが一番わかりやすいだろう。

 本作は結果的には全英35位と、ファースト・アルバム(全英5位)から比べると売り上げは伸び悩んだ。しかし、内容的には確実に前作を上回るすばらしさだと断言できる。
 だが、当時のレコード会社の思惑はアルバム内容の充実ではなく、ヒット曲を増産して「売れる」アルバムを作るということだけだ。それは80年代あたりから今に続く変わらない音楽業界の悪循環で、目先のことばかりを優先させることが将来の自分たちのタメにならない(黙っていても売れるような本物の大スターを育てられない)ということがよく分かっていないらしい。何より、いまだにこんな名盤が埋もれたままCD 化されないという事実がそれを物語っている。(HINE)