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○レビュー内容
キャピトル移籍後の第一段で、ハートにとっては復活作となる。80年代前半ハートは解散説すらささやかれるほどの低迷状態であったが、この作品のヒットにより完全にシーンの第一線に復活した。このアルバムをぬきにしてハートは語れないだろう。またこのアルバムがなければハートはとっくに消滅していたかもしれない。現在のハートの地位はこのアルバムによって作られたといっても過言ではない。
内容は、今までとはかなり変わっている。サウンドはキーボードやシンセサイザーを前面に出し、よりメロディアスでポップとなっている。プロデューサーに当時売れっ子であったロン・ネヴィソンを起用し、また外部ライターによる曲を多く取り上げ(10曲中6曲が外部ライターの曲)、売れるアルバムを意識して取り組んだことがわかる。
デビュー10年目にして、アルバムタイトルにバンド名をもってきた所が、起死回生の気合や意気込みを感じさせる。その努力のかいあって、アメリカで500万枚以上のセールスを記録し、グラミー賞を受賞するという快挙を成し遂げ、初の全米1位となった。シングルカットした曲も初の全米1位を含む4曲がトップ10にチャートインした。とにかく名曲、佳曲ぞろいのアルバムで捨て曲がいっさいなく、どの曲もシングルカットできそうである。
また、アルバム全体もコンパクトにまとまっており、どの曲を聴いても適度にハードで適度にポップな洗練されたサウンドが魅力だ。まさに上品でノーブルで洗練されたハートのイメージに一番しっくり来る名作である。80年代を代表する名盤といっていいだろう。このアルバムの成功により80年代後半の路線が確定され、本作品と「バッド・アニマルズ」「ブリゲイド」で全盛期ハート3部作となっている。
ハートのオリジナルアルバムを初めて聞く場合、ハードロックファンなら「ブリゲイド」を薦めるが、それ以外の人にはまずこの「ハート」を薦める。
○曲紹介
1.IF LOOKS COULD KILL
アルバムの冒頭を飾るのにふさわしいハードロックナンバー。当然音が軽めだがハードエッジな曲でコンサート向けである。シングル5弾としてカットされ、チャートは米54位である。
2.WHAT ABOUT LOVE ?
ハートが得意とするパワーバラード。1STシングルカットの曲で全米10位とハートとしては久々のヒット曲となる。アンのヴォーカルがホントに冴え渡っている。アンは女性ロックボーカリストの最高峰であることがこの曲で証明されている。ビデオクリップでの熱唱する姿も印象的だ。日本でも浜田麻里がこの曲をカバーしている。なおコーラスにはグレース・スリックとミッキートーマスが参加している。
3.NEVER
ホリー・ナイト作のキャッチーなポップバラード。キーボートサウンドの音が心地よい。これもまたメロディが印象的で一度聴くと頭から離れない。チャートは米4位を記録し、ハートの復活を決定づけた。
4.THESE DREAMS
ナンシーがリードボーカルをとったメロディアスで美しいバラード。3RDシングルで初の全米No.1を記録。ビデオ・クリップでのナンシーの姿、本当にあでやかだった。あまりの美しさにクラクラっときた人もいるのではないか。またメロデーも一度きいただけで覚え頭から離れないのだ。問答無用の名曲である。「アローン」が失恋ソングNo.1ならこの曲は失恋癒しソングNo.1なのではないだろうか。
初の全米No.1の曲のリード・ヴォーカルがナンシーということでアンとしては少し複雑な心境だったに違いない。しかしアンがバックでサポートしているところを見ると、あ−やっぱり美しい姉妹だなとほほえましく思ってしまうのである。
5.THE WOLF
ハートのメンバーの共作。洗練された作品の多い当アルバムなかで荒削りさがやや感じられるハードロックナンバー。歌詞も「しつこく付きまとう男にたいして、ひじてつを食らわせる」内容で、ウイルソン姉妹らしいなと思ってしまう。
6.ALL EYES
ギターイントロが美しいハードロックナンバー。ハードな中にもメロディアスでコーラスが美しい。
7.NOBODY HOME
キードードをフィーチャーしたバラード。ほのぼのとしていて癒される曲である。ギターソロの美しさも印象的である。作曲はウイルソン姉妹自身である。
8.NOTHIN' AT ALL
軽快なポップロックナンバー。アンが気持ちよさそうにのびやかに歌っているのが印象的である。コーラスもGOOD。シングル第4弾としてカットされ、全米10位にチャートイン。
9.WHAT HE DON'T KNOW
作曲はウイルソン姉妹自身である、ポップナンバー。このアルバム中一番イマイチな曲のような気がする。
10.SHELL SHOCK
アルバム最後を飾るにふさわしいハードエッジのきいたナンバー。ギターが全面に出ておりソロもかっこいい。アンのヴォーカルもパワフル。このような曲もやるから、ハートは単なるポップバンドと甘くみてはいけない。作曲はウイルソン姉妹自身である。(まっちゃん）
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