アウト・オブ・ザ・ブルー
Out Of The Blue
E.L.O
Electric Light Orchestra
1977年 CBS/Sony
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(SIDE-A)
1.ターン・トゥ・ストーン
Turn To Stone
2.哀愁の果て
It's Over
3.スウィート・トーキン・ウーマン
Sweet Talkin' Woman
4.国境の彼方
Across The Border
(SIDE-B)
5.ナイト・イン・ザ・シティ
Night In The City
6.スターライト
Starlight
7.ジャングル
Jungle
8.ビリーヴ・ミー・ナウ
Believe Me Now
9.ステッピン・アウト
Steppin' Out
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(SIDE-C)
-雨の日のコンチェルト-
-Concerto For A Rainy
Day-
10.雨にうたれて
Standin' In The Rain
11.ビッグ・ウィールズ
Big Wheels
12.サマー・アンド・ライトニング
Summer And Lightening
13.ミスター・ブルー・スカイ
Mr. Blue Sky
(SIDE-D)
14.スウィート・イズ・ザ・ナイト
Sweet Is The Night
15.ザ・ホエール
The Whale
16.バーミンガム・ブルース
Birmingham Blues
17.ワイルド・ウェスト・ヒーロー
Wild West Hero
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E.L.O.の絶頂期の3作、つまり「オーロラの救世主」「アウト・オブ・ザ・ブルー」「ディスカバリー」は、どれも甲乙つけがたいほどの名作だが、中でも特にお薦めしたいのが、当時2枚組LPであるにも関わらず予約だけで400万枚を超えていた超ビッグ・ヒット・アルバムの本作だ。
「オーロラの救世主」では、オーケストラとしてはおそらく最小のユニットで、どこまで壮大なサウンド効果が得られるかという実験の完成型が聞けたし、「ディスカバリー」では、それをシンセサイザーに置き換え、新たな新境地を切り開いた。
その中間にある本作では、前作の成功を受けて、余裕と貫禄さえ感じさせるほど自身に満ちあふれ、それまでのサウンドの集大成的に仕上げている。通常のアーチストの場合、ヒット作の後はプレッシャーから畏縮するか、才能枯れで良い曲がかけなくなるものだが、このELOのリーダー、ジェフ・リンは、1人で作詞、作曲、プロデュースまでこなしているにも関わらず、前作以上に良い曲を書き、さらに多彩なサウンドを目指して様々な仕掛けを施している。まったく恐ろしいほどの才能と驚異的な精神力だ。しかも、そのやる事なす事がすべてが的中、まさにジェフ・リンがノリにノリまくっていた時期と言えるだろう。
曲のキャッチーさではおそらく「ディスカバリー」の方が上に感じるであろうし、確かにあちらも名曲ばかりだが、やはり本作には、エレクトロニクスではなく、本物のストリングスを導入しているという強みがある。サウンドの厚みや繊細さがまるで違う。
前置きが長くなったが、まず本作「アウト・オブ・ザ・ブルー」を初めて聞いてすぐに惹きつけられるのは、とてもポップでキャッチーな1曲目の「ターン・トゥ・ストーン」や5曲目(LPではB-1)の「ナイト・イン・ザ・シティ」あたりだろう。実際このアルバムを手にした当時も、この2曲が入っているLPの1枚目ばかりを聞いていた記憶がある。だが、数あるELOのアルバムの中でも、本作をその後一番長く愛聴している理由は、LPでは2枚目に当たるコンセプト・サイドのC面や、バラエティに富んだD面の構成に何度聞いても感心させられるからに他ならない。
-雨の日のコンチェルト-と題されたC面(10〜13)は、3人だけのストリングスが、あたかも大きなオーケストラで演奏しているような迫力を出し、ポップで分かりやすいメロディーにも関わらずスケール感と深みのある組曲にしている。
その他の注目曲もあげておこう。まるで映画のサントラでも聞いているような、めずらしいインストゥルメンタル・ナンバーの15「ザ・ホエール」は、海中や海のゆったりとした大きさうねりを感じさせるヒーリング(いやし)系サウンド。
ELO風ブルースとでも形容したくなる16.「バーミンガム・ブルース」は、ブルースにストリングスを加えるという、普通では考えられない手法をとりながらも、絶妙なアレンジで、これがまったく自然に解け合って聞こえてしまうから不思議だ。
最後を締めくくるバラードの17.「ワイルド・ウェスト・ヒロー」も名曲。さまざまな趣向をこらしたサウンド・コラージュ(張り合わせ)のような作品だ。緩急も自由自在、こういうサウンドは、ビートルズなき後、もう彼らの独壇場と言ってもいい。
全体を通して、その多彩な曲構成、アレンジ、メロディーの良さに圧倒される。そして、とてつもない才能をもったジェフ・リンには、ただただ驚かされるばかりだ。
このアルバムについて、もう1つ付け加えておくと、ジャケットと内ジャケットは共に日本が世界に誇るイラストレーターの長岡秀星(ながおかしゅうせい)が手がけている。秀星氏にとっても代表作の1つとしてこのアルバムは忘れることのできない作品だろう。(HINE)
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