CULTURE CLUB カルチャー・クラブ


(HINE)2004.5




Kissing To Be Clever
Virgin/東芝EMI

Waking Up With the House on Fire
Virgin/東芝EMI

From Luxury to Heartache
Virgin/東芝EMI

VH-1 Storytellers
Virgin/東芝EMI

Don't Mind If I Do
Virgin/東芝EMI

ディスコ・グラフィー

1982年 Kissing To Be Clever(ミステリー・ボーイ)
1983年 Colour By Numbers(カラー・バイ・ナンバーズ)
1984年 Waking Up With the House on Fire(ウェイキング・アップ・ウィズ・ザ・ハウス・オン・ファイヤー)
1986年From Luxury to Heartache(フロム・ラグジャリー・トゥ・ハートエイク)
1978年 This Time(ディス・タイム)
*ベスト盤
1998年 VH1 Storytellers(ストーリーテラーズ〜帰って来たカルチャー・クラブ)

1999年 Don't Mind If I Do(ドント・マインド・イフ・アイ・ドゥ)



◆◆◆名盤PICK UP◆◆◆

カラー・バイ・ナンバーズ
Colour By Numbers

カルチャー・クラブ
Culture Club


1983年 Virgin/東芝EMI

1 . カーマは気まぐれ Karma Chameleon

2 . イッツ・ア・ミラクル  It's A Miracle

3 . ブラック・マネー  Black Money

4 . チェンジング・エヴリ・デイ  Changing Every Day

5 . ザッツ・ザ・ウェイ  That's the Way (I'm Only Trying to Help you)

6 . タイム  Time (Clock Of The Heart)*(注)

7 . チャーチ・オブ・ザ・ポイズン・マインド  Church of the Poison Mind

8 . ミス・ミー・ブラインド  Miss Me Blind

9 . ミスター・マン  Mister Man

10.ストーム・キーパー  Stormkeeper

11.ヴィクティムズ Victims

(注)6は、シングルのみのリリースでオリジナル・アルバムには未収録

 カルチャー・クラブの存在は、彼らのデビュー当時、姿を見る前に「音」で知ったため、自分の場合当初からそれほど偏見は無く、またイギリスならではのハイセンスなグループが出て来たものだと感心していた。ところが、ちまたではボーイ・ジョージ(vo)の奇抜なファッションや女装・メイクばかりが話題となり、音楽的評価は二の次のような状態だった。しかし彼らはそれを逆手に取り、セカンド・アルバムである本作では、よりポップでキャッチーな曲作りを心がけ、自ら道化的な存在の中に身を置くことによってヒットを連発した。
 だが、もともとはパンク出身のボーイ・ジョージとジョン・モス(ds)が中心となっているだけあって、社会批判などを歌詞に盛り込んだり、音楽性もますます広く、深く、ハイレベルなものになっている。(尚、オリジナル・アルバムは全10曲で、6曲目の「タイム」は入っていない。この曲は、1st.アルバムと本作との間にシングルとしてリリースしたもので、再発のときに本作に追加された。そのため、なんとなくサウンド的には違和感がある。この曲はどちらかというと1st.アルバム寄りのサウンド・アプローチなのだ。)
 彼らのもくろみ通り、本作は売れに売れ、全英1位/全米2位を記録。シングルでも「チャーチ・オブ・ザ・ポイズン・マインド」が英2位/米10位、「カーマは気まぐれ」全英6週1位/全米3週1位、「ヴィクティムズ」英3位、「ミス・ミー・ブラインド」米5位、「イッツ・ア・ミラクル」英4位/米13位のヒットを生み出した。(ちなみに「タイムは」全英3位)
 もちろん本作を名盤としてピックアップするからには、ヒット曲以外もすばらしいのは言うまでもない。全体的な唄と演奏力のレベルアップも特筆すべきところだろう。ボーイ・ジョージのヴォーカルは、タイプは違えど、クイーンのフレディ・マーキュリーのような繊細さを持つに至り、さらにソウルフルさにも磨きがかかっている。特に3.「ブラック・マネー」や4「チェンジング・エヴリ・デイ」、5.「ザッツ・ザ・ウェイ」、11.「ヴィクティムズ」などのスロー・ナンバーでその素晴らしさを発揮している。
 サウンド面では、前作からの見事なレゲエ・アレンジに加え、R&Bやゴスペルからの影響が強く出ている5.や7.「チャーチ・オブ・ザ・ポイズン・マインド」、11.などが新しい魅力として加わった。またこれらの曲でバック・ヴォーカルとして迫力のある声を聞かせる女性、ヘレン・テリーの存在も見逃せない。
 4.はジャズ・テイストを漂わせ、10.「ストーム・キーパー」では、ブラック・ファンクからの影響も感じられるが、ここではゲスト・プレイヤーのフィル・ピケット(key/元セイラー)、スティーヴ・グレインジャー(sax)、テリー・ベイリー(Trumpet)らと共に、ベースのマイケル・クレイグが緩急を使い分けたとてもいい仕事をしている。
 個人的に最も好きなナンバーの8.「ミス・ミー・ブラインド」では、ギターのロイ・ヘイも大活躍。普段はあまり目立たないが、この曲ではバッキングに回ったカッティングはシックのナイル・ロジャース(g)風でかっこいいし、ソロではディストーションを効かせ(歪ませた)、ドライヴのかかったノリの良いフレーズで存在感を主張している。また、この曲でバック・ヴォーカルを努めているのは、後にソロ・アーチストとして成功を収めるジャーメイン・スチュワートその人だ。

 1曲目のあっけらかんとしたポップ・ソング「カーマは気まぐれ」から、最後のじっくり聴かせるタイプのスロー・ナンバー「ヴィクティムズ」まで、本作に捨て曲など無いのはもちろんのこと、曲構成にもまったくスキがない。当時は「ただの流行」扱いされていた彼らだが、今こそもっと見直されるべきなのではないだろうか。また、あまりも露骨にアメリカ批判(War Song)をして反感を買った次作も、セールスは下降したが、内容的には劣らず素晴らしいものであったことも付け加えておこう。(HINE)