ERIC CLAPTON エリック・クラプトン


(HINE) 2002.4


Eric Crapton
RSO/Polydor

461 Ocean Boulevard
RSO/Polydor

There's One in Every Crowd
RSO/Polydor

No Reason to Cry
RSO/Polydor

Slowhand
RSO/Polydor

Backless
RSO/Polydor

Another Ticket
RSO/Polydor

ディスコ・グラフィー

1970年 Eric Clapton(エリック・クラプトン)*初めて自ら全曲のヴォーカルをとった、ファースト・ソロ・アルバム
1973年 Eric Clapton's Rainbow Concert(レインボー・コンサート)*ドラッグ中毒の療養中に集まった友人達による励ましのライブ
1974年 461 Ocean Boulevard(461オーシャン・ブールヴァード)*全世界のロック・ファン見守る中カムバックした初のスタジオ盤。全米1位
1975年 There's One in Every Crowd(安息の地を求めて)*基本的には前作と同路線のレイドバック・サウンド。
1975年 E.C. Was Here(エリック・クラプトン・ライヴ)*「ギターの神様」を改めて思い起こさせるギタリスト・クラプトン最後の名作ライブ
1976年 No Reason to Cry(ノー・リーズン・トゥ・クライ)*ボブ・ディランやロビー・ロバートソンをゲストにした和気藹々の録音
1977年 Slowhand(スローハンド)*ソロになってからの最高傑作との評価が多い名盤。「コカイン」「ワンダフル・トゥナイト」収録
1978年 Backless(バックレス)*461からのバック・バンド最後のアルバム。「プロミセズ」がスマッシュ・ヒット
1980年 Just One Night(ジャスト・ワン・ナイト〜ライヴ・アット武道館)
*アルバート・リー(g)を迎えたニュー・バンドでのライブ
1981年 Another Ticket(アナザー・チケット)*オール・イギリス人バック・バンドでの唯一のアルバム「I Can't Stand It」がトップ10ヒット
1983年 Money and Cigarettes(マネー・アンド・シガレット)*自らDUCKレーベルを設立しワーナーへ移籍したが、セールスは近年最悪だった
1985年 Behind the Sun(ビハインド・ザ・サン)
*フィル・コリンズがプロデュース&ドラムで参加し、久しぶりに大ヒット。「フォーエバー・マン」収録
1986年 August(オーガスト)*再びフィル・コリンズが参加した大ヒット作。YMOの曲にマイケル・ジャクソンが歌詞をつけた「ビハインド・マスク」収録
1989年 Journeyman(ジャーニーマン)*久しぶりにブルースを感じさせるシブイ仕上がり。「オールド・ラヴ」収録
1991年 24 Nights(24ナイツ)
*87年ロイヤル・アルバート・ホールでのライブ。クリーム時代の代表曲「ホワイト・ルーム」「サンシャイン・ラヴ」も披露
1992年 Rush(ラッシュ〜オリジナル・サウンド・トラック)*映画「ラッシュ」のサントラ。「ティアーズ・フォー・ヘヴン」が大ヒット
1992年 Unplugged(アンプラグド〜アコースティック・クラプトン)*MTVアンプラグド・ブームを巻き起こすきっかけとなった名盤。
1994年 From the Cradle(フロム・ザ・クレイドル)
*全編ブルースのカヴァー・ソングというシブ〜イ作品
1998年 Pilgrim(ピルグリム)*日本盤には、ボーナスで「ティアーズ・イン・ヘヴン」「チェンジ・ザ・ワールド」を収録しているのでお得
1999年 Best Of Eric Clapton(ベスト・オブ・エリック・クラプトン)*ニュー・シングル「ブルー・アイズ・ブルー」を含むベスト
2000年 Riding with the King(ライディング・ウィズ・ザ・キング)*E.C.の音楽ルーツでもあるB.B.キングとのコラボレーション
2001年 Reptile(レプタイル)*R&Bやフュージョンにまで挑戦した意欲作。まったく年齢を感じさせない好印象盤



Behind the Sun
Warner/WEA

August
Warner/WEA

Journeyman
Reprise/WEA

Unplugged
Reprise/WEA

From the Cradle
Reprise/WEA

Pilgrim
Reprise/WEA

Reptile
Reprise/Warner


◆◆◆名盤PICK UP◆◆◆

エリック・クラプトン・ライヴ
E.C.Was Here

エリック・クラプトン
Eric Clapton



1975年 RSO/Polydor

SIDE-A

1.ハヴ・ユー・エヴァー・ラヴド・ア・ウーマン
 Have You Ever Loved A Woman

2.プレゼンス・オブ・ザ・ロード
 Presence Of The Lord

3.ドリフティング・ブルース
 Drifting Blues

SIDE-B

1.マイ・ウェイ・ホーム
 Can't Find My Way Home

2.ランブリング・オン・マイ・マインド
 Rambling On My Mind

3.ファーザー・オン・アップ・ザ・ロード
 Further On Up The Road

デレク&ドミノスの後、ドラッグ中毒の療養中にレインボー・コンサートへ現れたクラプトンは、生気がなく、まともにギターが弾ける状態にはなかった。そして本格的なカムバック後も、やはりという感じで、すっかりヴォーカリストになってしまい、その後のレイド・バックしたサウンドには、かつての「ギターの神様」の面影はまったく感じられなかった。
ところが、ちょうどクラプトンが30歳になったこの年(75年)、オールド・ファンが驚喜する素晴らしいプレゼントをしてくれたのである。それがこのライブ・アルバムだ。タイトルも「E.C Was Here」とは泣かせるではないか!
クラプトン自身、ブルースを愛し、長年それを追求し続けてきたつもりであったが、結果的には、ブルースでもロックンロールでもない独自の音楽を創り上げてしまったのである。そう、ブルース・ロックとはクラプトンが確立した新しい音楽ジャンルなのだ。このアルバムでは、そんなギタリストとしての自分を振り返り、今までやってきたことの集大成とすることで、区切りをつける意味もあったのだろう。もちろん、ヴォーカリストとしても成長し、すでに風格を漂わせるまでになっていたが、ここでのクラプトンは、間違いなくギタリストそのものだ。
曲を聴いてゆくと、まずは「レイラ」にも収録されていた1曲目、7分にもおよぶ弟子のジョージ・テリーとのギター・バトルは、あのレイラ・セッションでの、心の迷いのあったクラプトンとは比較にならないほどすばらしい。A-2はブラインド・フェイス時代の自作曲だが、イヴォンヌ・エリマンとのデュエット・ヴァーカルをじっくり聞かせつつ、途中のギター・ソロは、よりエキサイティングに、メリハリをつけた編曲が心憎い。この曲はお気に入りらしく、デレク&ドミノス時代のライブでもやっていたが、ここでの演奏の方が数段上だろう。A-3はアコースティックに持ち替え、ブルースの神髄に迫ったクラプトンのギター・プレイが光る。尚、LPでは後半ジョージ・テリーのギター・ソロでフェイド・アウトしてゆくのだが、なんと、CDではその後クラプトンがまたエレクトリックに持ち替え、ボトルネックを使ったソロを披露する。故デュアン・オールマンほど上手くはないが、デュアンお得意のフレーズも飛び出し、目頭が熱くなる。しかし、LPでは3分半しかなかったこの曲が、実際には11分半もあったとは・・・。
次の曲からがLPではB面にあたる。B-1は再びブラインド・フェイス時代の名曲をイヴォンヌとのハーモニーで聴かせる。他のオールド・ブルース・ナンバー中にあって、この曲は、まるでスタンダードのようにまったく違和感がない。改めて作者スティーヴ・ウィンウッドの天才ぶりに驚かされる。
そして、このアルバムのハイライトB-2は、「ギターの神様=エリック・クラプトン」の気迫あふれるプレイが堪能できる。この曲は、クラプトンの音楽ルーツの1つである故ロバート・ジョンソンの曲で、その心の師に向け、最高のプレイで敬意を表しているのだろう。最後のB-3はアップ・テンポなブルース・ナンバーで、ロックンロールとブルースの中間的プレイ。まさにクラプトンのギター・スタイルそのものを表すプレイで締めくくっている。面白いことに、すぐ後にロイ・ブキャナンも同じ曲をライブ盤に収めている。きっと同じブルース・ロック・ギタリストとしての強烈なライバル心の表われだろうが、曲の持つ雰囲気を壊さずに、流れるようなフレーズを繰り出すクラプトンの前には、いかにブキャナンといえども、比較すると子供同然に聞こえてしまう。
クラプトンは、「スローハンド」なる異名も持つが、このアルバムでもよく聴くと、ヴァイオリン奏法、フィードバック奏法、ピッキング・ハーモニクス奏法など、実に多彩なプレイを平然とやってのけている。オーバー・アクションや顔色一つも変えること無しに、淡々と弾いている姿が目に浮かぶようだ。
このアルバムを聴いて、まだ「今はただの人」なんて言っている人は、ギターを弾いたことのない人か、よっぽど下手な人なのだろう(笑)<HINE>