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(HINE) 2002.4 |
Eric Crapton RSO/Polydor |
461 Ocean Boulevard RSO/Polydor |
There's One in Every Crowd RSO/Polydor |
No Reason to Cry RSO/Polydor |
Slowhand RSO/Polydor |
Backless RSO/Polydor |
Another Ticket RSO/Polydor |
ディスコ・グラフィー 1970年 Eric Clapton(エリック・クラプトン)*初めて自ら全曲のヴォーカルをとった、ファースト・ソロ・アルバム |
Behind the Sun Warner/WEA |
August Warner/WEA |
Journeyman Reprise/WEA |
Unplugged Reprise/WEA |
From the Cradle Reprise/WEA |
Pilgrim Reprise/WEA |
Reptile Reprise/Warner |
E.C.Was Here Eric Clapton |
SIDE-A 1.ハヴ・ユー・エヴァー・ラヴド・ア・ウーマン 2.プレゼンス・オブ・ザ・ロード 3.ドリフティング・ブルース SIDE-B 1.マイ・ウェイ・ホーム 2.ランブリング・オン・マイ・マインド 3.ファーザー・オン・アップ・ザ・ロード |
デレク&ドミノスの後、ドラッグ中毒の療養中にレインボー・コンサートへ現れたクラプトンは、生気がなく、まともにギターが弾ける状態にはなかった。そして本格的なカムバック後も、やはりという感じで、すっかりヴォーカリストになってしまい、その後のレイド・バックしたサウンドには、かつての「ギターの神様」の面影はまったく感じられなかった。 ところが、ちょうどクラプトンが30歳になったこの年(75年)、オールド・ファンが驚喜する素晴らしいプレゼントをしてくれたのである。それがこのライブ・アルバムだ。タイトルも「E.C Was Here」とは泣かせるではないか! クラプトン自身、ブルースを愛し、長年それを追求し続けてきたつもりであったが、結果的には、ブルースでもロックンロールでもない独自の音楽を創り上げてしまったのである。そう、ブルース・ロックとはクラプトンが確立した新しい音楽ジャンルなのだ。このアルバムでは、そんなギタリストとしての自分を振り返り、今までやってきたことの集大成とすることで、区切りをつける意味もあったのだろう。もちろん、ヴォーカリストとしても成長し、すでに風格を漂わせるまでになっていたが、ここでのクラプトンは、間違いなくギタリストそのものだ。 曲を聴いてゆくと、まずは「レイラ」にも収録されていた1曲目、7分にもおよぶ弟子のジョージ・テリーとのギター・バトルは、あのレイラ・セッションでの、心の迷いのあったクラプトンとは比較にならないほどすばらしい。A-2はブラインド・フェイス時代の自作曲だが、イヴォンヌ・エリマンとのデュエット・ヴァーカルをじっくり聞かせつつ、途中のギター・ソロは、よりエキサイティングに、メリハリをつけた編曲が心憎い。この曲はお気に入りらしく、デレク&ドミノス時代のライブでもやっていたが、ここでの演奏の方が数段上だろう。A-3はアコースティックに持ち替え、ブルースの神髄に迫ったクラプトンのギター・プレイが光る。尚、LPでは後半ジョージ・テリーのギター・ソロでフェイド・アウトしてゆくのだが、なんと、CDではその後クラプトンがまたエレクトリックに持ち替え、ボトルネックを使ったソロを披露する。故デュアン・オールマンほど上手くはないが、デュアンお得意のフレーズも飛び出し、目頭が熱くなる。しかし、LPでは3分半しかなかったこの曲が、実際には11分半もあったとは・・・。 次の曲からがLPではB面にあたる。B-1は再びブラインド・フェイス時代の名曲をイヴォンヌとのハーモニーで聴かせる。他のオールド・ブルース・ナンバー中にあって、この曲は、まるでスタンダードのようにまったく違和感がない。改めて作者スティーヴ・ウィンウッドの天才ぶりに驚かされる。 そして、このアルバムのハイライトB-2は、「ギターの神様=エリック・クラプトン」の気迫あふれるプレイが堪能できる。この曲は、クラプトンの音楽ルーツの1つである故ロバート・ジョンソンの曲で、その心の師に向け、最高のプレイで敬意を表しているのだろう。最後のB-3はアップ・テンポなブルース・ナンバーで、ロックンロールとブルースの中間的プレイ。まさにクラプトンのギター・スタイルそのものを表すプレイで締めくくっている。面白いことに、すぐ後にロイ・ブキャナンも同じ曲をライブ盤に収めている。きっと同じブルース・ロック・ギタリストとしての強烈なライバル心の表われだろうが、曲の持つ雰囲気を壊さずに、流れるようなフレーズを繰り出すクラプトンの前には、いかにブキャナンといえども、比較すると子供同然に聞こえてしまう。 クラプトンは、「スローハンド」なる異名も持つが、このアルバムでもよく聴くと、ヴァイオリン奏法、フィードバック奏法、ピッキング・ハーモニクス奏法など、実に多彩なプレイを平然とやってのけている。オーバー・アクションや顔色一つも変えること無しに、淡々と弾いている姿が目に浮かぶようだ。 このアルバムを聴いて、まだ「今はただの人」なんて言っている人は、ギターを弾いたことのない人か、よっぽど下手な人なのだろう(笑)<HINE> |