第4章 ロックの多様化と様式美の追求(60年代末期〜70年代初期)

1.プログレッシヴ・ロック
 
サイケデリック以降、ロックはさまざまな実験と融合を繰り返しながら多様化していったが、それらは、ある2つの大きな方向性に分けることができた。その1つは精神的・観念的なものを重んじ、それを先進テクノロジーを駆使しながら表現していくという方向性だ。これらは「進歩的」と言う意味でプログレッシヴ・ロック(通称プログレ)と名付けられた。
 プログレと思われる音楽が、初めてロック界で注目されたのは、67年にデビューしたピンク・フロイド(右写真)。たまたまビートルズのレコーディングと隣り合わせのスタジオに彼らがいて、それを見たビートルズのメンバー達は、サイケデリック・フォークとでもいうような斬新なサウンドに度肝を抜かされたという。また同じ頃、カンタベリー・ミュージックの祖、ソフト・マシーンもデビューを果たし、プログレの中でも特にジャズ傾向の強い、ジャズ・ロックへと発展していくことになる。
 プログレの人気が決定的になったのは、69年にデビューするキング・クリムゾン(通称クリムゾン)のデビュー・アルバム「クリムゾン・キングの宮殿」が、UKチャートでビートルズの名盤「アビイ・ロード」を抜き去り、1位になってからのことだろう。
 プログレは、壮大なコンセプトや実験を表現方法として全面に出していたため、あらゆるジャンルの音楽とのクロスオーヴァー性、変拍子や転調など複雑な曲調、最新技術に対応した優れた演奏能力などを売り物にした。多くのメンバーチェンジによって、それらをすべて兼ね備え、群を抜く演奏能力を持つに至ったイエスの台頭で、さらにプログレ人気は高まり、一大ブームを巻き起こすのである。
 70年代初頭〜半ばにかけて、このピンク・フロイドキング・クリムゾンイエス、それにクリムゾンを脱退したグレッグ・レイク(b)がスーパー・キーボディストのキース・エマーソンと組んだスーパー・グループ、エマーソン・レイク&パーマー(EL&P)らが大活躍し、プログレは全盛を極めるのである。
 このプログレの代表格ともいえる4グループをいつしか、「プログレ四天王」と呼ぶようになった。

2.ハードロック
 ビートルズの「アビイ・ロード」をチャートから引きずり降ろしたのは、実はキング・クリムゾンだけではない。ヤードバーズ解散後、新しいメンバーで再出発したジミー・ペイジ(g)のバンド、レッド・ツェッペリン(通称ツェッペリン、左写真)のセカンド・アルバムもまた、ビートルズを押さえ彼ら初のチャート1位に輝いている。
 このツェッペリンのサウンドは、ブルースを基調としながらも、ブリティッシュ・トラッド、ケルト・ミュージック、カントリー、フォーク、ファンクやあらゆる民族音楽などを取り入れながら、大音量、重低音のドラム、ハイトーンのヴォーカル、独特のギター・リフなどヘヴィメタルの基礎とも言える様式を確立し、サイケデリック以降のロックの方向性において、もう一方の核となっていった。
 その後70年代にはいると、これにつづけとばかり、大音量で派手なパフォーマンスを繰り広げるロック・バンドが急増し、プログレと双璧の一大ブームを形成する。このハードなサウンドのロック全体をハードロックと呼ぶ。
 なかでもクラシック・ミュージックを大胆に取り入れ、スピード感のあるサウンドで絶大な人気を獲得したディープ・パープル、黒魔術や悪魔崇拝などダークな世界観を強調し、宗教的人気を獲得していったブラック・サバスが、群を抜くカリスマ性を持ち、先のツェッペリンと併せてハードロック御三家と呼ばれるようになっていった。

3.その他のロック
 70年代前期は、まさにプログレとハードロックの時代と呼べるロックの発展期であったが、この時代を生き抜くには、オリジナリティが最大の武器であったことから、主流になり得ずとも注目されたサウンドが数多く存在した。
 代表的なものでは、ラテン・ミュージックのリズムとパーカッションを導入したラテンロック(代表アーチスト=サンタナ)や、ジャズ・ロックから発展し、ホーンセクションを多用したブラス・ロック(代表=ブラッド・スエット&ティアーズ)、ロックにカントリー&ウエスタン(C&W)の要素をプラスしたカントリー・ロック(代表=ニッティ・グリッティ・ダート・バンド)、アメリカ版ブルースロックとも言えるサザン・ロック(代表=オールマン・ブラザーズ・バンド)などがある。
 また、ハードロックとは対極的なポップス的ロックは、ソフト・ロックと呼ばれるようになった。
(右のアルバム・ジャケットはサンタナのデビュー・アルバム)

4.叙情派プログレの登場

 初期にはテクニック至上主義の傾向が強かったプログレだが、しばらくすると、楽曲自体のドラマ性や世界観をメインにして、各プレイヤーのソロ・パートなどに重きをおかないサウンドを打ち出すバンドも現れだした。その代表的バンド、ジェネシス(左写真)の72年の出世作「フォックストロット」や同72年ルネッサンス「燃ゆる灰」の成功によって、ますますプログレの世界は広がりをみせはじめた。
 また、プログレのサウンド特徴として、インストゥルメンタル部分が多いことから、言葉の壁が存在しにくく、世界各国からも優秀なプログレ・バンドが次々と現れた。これらはイギリスのプログレと区別され、ユーロ・ロックと呼ばれることもある。中でもイギリスのプログレに影響を受けず、独自の進化を遂げたドイツのテクノロジー追求型プログレをジャーマン・ロックと呼び、区別する風潮が強い。

(ピンク・フロイド=写真提供協力MIZOさん)