ジャケットの名盤を手がけた著名アーチスト・ファイル

File No.11
STANLEY MOUSE  スタンリー・マウス

1940年アメリカ生まれ、本名はStanley Millerスタンリー・ミラー。ディズニーのカリフォルニア・スタジオで働く父を持つスタンリーは、ジュニア・ハイスクール時代に「マウス」のニックネームがついたという。その頃から音楽好きだったマウスは、すでに16歳の時にはR&Bを聞くため飲み屋へ入り浸っていた。ある日その店のビルが塗り替え予定だというので、そこへ仲間達と共にロゴをペイントしたらしい。それはかなりの傑作品だったが、ついついサインを入れてしまったため、学校(ハイスクール)に見つかり退学になったことがあるという。その後デトロイトのアートスクールへ通いエアブラシを習得したマウスは、Tシャツにエアブラシでレタリングやペイントをするようになり、しだいにそれで生計を立てるようになっていった。その後1965年、サーフィン・ブームに沸き、ペイントTシャツがよく売れるサンフランシスコへと向かったマウスは、その後の人生を変えさせられる2人の重要人物と出逢う。その1人は以降仕事のパートナーとして、共にこの世界で活躍する写真をメインにしたデザイナーAlton Kelleyアルトン・ケリー、もう1人は、サーファーTシャツの世界では既ににMurphというキャラクター・イラストで大人気だったRick Griffinリック・グリフィンである。その後66年シスコで起きたサイケデリックのムーヴメントの中で、グリフィンが大きな成功を収めてゆくと、マウスとケリーも後を追うようにケリー・マウス・スタジオを設立し、ロック・ポスターの製作を始めた。そして60年代はグリフィンと共にサイケデリック・アートの第一人者としてその名を馳せたのであった。この頃、マウスが描いたクリームのポスターをエリック・クラプトンがいたく気に入り、自分のロールスロイスにペインティングさせたという話は有名だ。またケリーとは70年代以降もたびたびコラボレートし、79年に共作したスティーヴ・ミラー・バンドのカヴァー・アートでは、見事グラミー賞を受賞している。マウスは現在でも手作業によるイラストを描き続け、92年には「Freehand: The Art of Stanley Mouse」という本も出版した。


Grateful Dead/The Golden Road(1965-1973)
2001年 Rhino/Warner

Blind Faith/Blind Faith
1969年 RSO/Polydor

The SteveMiller Band/Book Of Dreams
1977年 Capitol

Journey/Escape
1981年 CBS/Sony

The Doobie Brothers/Sibling Rivalry
2000年 Atrantic/Victor

Starship/ Greatest Hits(Ten Years And Change 1979-1991)
1991年 BMG

Skyfish/Skyfish
1995年 Global Pacific

マウスの作風は、一貫した手作業によるエア・ブラシで描き出される架空の世界だ。それは時に写真と組み合わされることもあり、その場合には、彼の良きパートナー、ケリーと共同で作業が進められる。上にある代表作のうち、一番古いブラインド・フェイスのものは、まだ本名のスタンリー・ミラーでクレジットされている。これ以前には、サイケデリック・ブーム期のポスターやグレイトフル・デッドのジャケットをリック・グリフィンから引き継ぎ「American Beauty」などの名作も生んでいる。しかしながら、やはりマウスのオリジナリティが最大限に発揮されたのは、「インフィニティ」「エヴォリューション」「ディパーチャー」といった、いわゆるジャーニー出世3部作や上にもある同大ヒット作「エスケイプ」などに見られる古代の神や伝説、宗教などをモチーフにしたイラストであろう。ちなみに「エスケイプ」に描かれているのはScarabスカラベで、古代エジプト人が崇拝したコガネムシの一種(フンころがし)。別名神聖コガネムシとも言い、お守りとして宝石にこの虫の形を彫って持ち歩いたと伝えられている。
マウスの作品には、その他にもグラミー賞を受賞したスティーヴ・ミラー・バンドなど、名作はいくつもあるのだが、印象深い一連のジャーニー作品の前には、どれも霞んでしまう。また近年では、故リック・グリフィンに成り代わり、サイケデリック系アーチストのコンピレーション・アルバムなどでも大活躍している。上のグレイトフル・デッド12枚組BOXセットのカヴァーは、グリフィンの作品で有名になったガイコツと名作「American Beauty」で自らが描いたバラを組み合わせた近年の名作だ。