お薦め名盤Vol.4(JAZZY)
ジェントル・ソウツ/リー・リトナー&ジェントル・ソウツ
GENTLETHOUGHTS/LEE RITENOUR & GENTLETHOUGHTS
1977年 VIDC-1◆Vivtor
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SIDE-A
1キャプテン・カリブ
Captain Caribe
2.ゲッタウェイ
Getaway
3.シャンソン
Chanson
4.瞑想
Meiso
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SIDE-B
1.キャプテン・フィンガーズ
Captain Fingers
2.愛のためいき
Feel Like Makin' Love
3.ジェントル・ソウツ
Gentle Thoughts
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パーソネル
リー・リトナー Lee Ritenour(ギター)
アーニー・ワッツ Ernie Watts(サックス)
デイヴ・グルーシン Dave Grusin(キーボード)
パトリース・ラッシェン Patrice Rushen(キーボード)
アンソニー・ジャクソン Anthony Jackson(ベース・ギター)
ハーヴィー・メイソン Harvey Mason(ドラムス)
スティーブ・フォアマン Steve Forman(パーカッション)
このアルバムがリリースされた1977年頃は、ちょうどロック界の偉大なギタリスト、ジェフ・ベックのアルバム大ヒットによって、世界中でジャズとロックのクロスオーヴァー化が急加速的に進んだ。ジャズ界からも続々とロック的アプローチを持ったアルバムが出されるようになり、ついにはフュージョンというジャンルまで確立してしまった頃だ。
そして、このリーリトナーはロック界からでもジャズ界からでもなく、最初からフュージョン界のホープとして登場した新世代のギタリストであった。
そもそも、リーリトナーは、今考えるとどうみてもフュージョン・バンド、当時はロック界の異端児的であったスティーリーダンというバンドのレコーディング用セッション・ミュージシャンとして、注目を集め出した。やはり同バンドでセッション・ミュージシャンをしていた、ラリー・カールトンもフュージョン界を代表するギタリストとして、同時期に名をあげている。
また、それまでもリトナーは南カリフォルニア大学のギター・コースの教師をする傍ら、数え切れないほどのアーチストとのセッションやレコーディングに参加していた。
その中には、ミッシェル・ポルナレフ、ジョージ・デューク、クインシー・ジョーンズ、ケニー・ロギンスなどの大物もいる。この経験が彼の幅広いジャンルに対応するギター・スタイルを作り出していったに他ならない。
このアルバムは、彼が2枚のソロ・アルバムをリリースし、ノリに乗っている時に出された、ダイレクト・カッティングによるセッション・アルバムだ。
ゲスト・ミュージシャンには、ジェントル・ソウツと名付けられた、リトナーのアルバムではお馴染みの面々達。
サウンドについて
ダイレクト・カッティングとは、通常マスター音源をテープに録音したものをミックス・ダウンし、レコードの原盤を作っていくところを、テープへの録音を省いて、演奏しながら直接レコード原盤へカッティングしてしまうという、選ばれた凄腕プレイヤー達だけができる、一発録りのレコーディング技術だ。
むろん、テープのように、一部の楽器のチャンネルだけを取り直したりはできない。クラシックのような、いつも同じものを繰り返し演奏しているものなら、いざしらず、こういったアドリブの多い音楽でのダイレクト・カッティングというのは、非常に珍しいし難しい。
しかも、新曲までやっていて、ドラムのハーヴィ・メイソンなどは、時間ギリギリに来て、ほとんど譜面を初見で見ながら演奏してしまうという凄さだ。いつも耳と体で覚えて演奏するロック界などでは、譜面を見ながら演奏してしまうことだけでもまったく考えられないのだが・・・。
そして、さらに驚くのは、その演奏内容。
普通に考えれば、間違えないようにと守りには入り、緊張気味に演奏しそうなものだが、ここでの彼らには、そういったことなど全く感じられない。それどころか、彼らの演奏はいつになく攻撃的でさえある。
圧巻は「キャプテン・フィンガーズ」。リトナーのアルバム曲なので、リトナーが巧いのはわかるが、ハーヴィー(ds)とアーニー(sax)の完璧なまでの掛け合いは見事の一言に尽きる。
彼らはこの後もう1枚、ダイレクト・カッティングのアルバムをリリースしているが、このアルバムのようなエキサイティングな演奏はもうみられない。後にも先にも、ダイレクト・カッティングの名盤はコレ1枚だ。他のアーチストを眺め回しても、おそらくこのアルバムが最高の出来映えだと思われる。
ちょうどフュージョンという音楽自体がノっている時期に、気心が知れて息がピッタリ合い、しかも凄テクという仲間達が集まり、1回だけの凄い演奏をしてしまった奇跡の名盤。それがこの「ジェントル・ソウツ」なのだ!
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