★今回のスペシャル企画CD-R内容
テーマ「PROGRESSIVE POP(PROGRESSIVE "TASTE" ROCK)」
70年代後半〜80年代にかけて、既存のロックはみなポップ化の一途をたどっていました。プログレッシヴ・ロックも例外ではなく、一様にポップな路線へと転向していきましたが、ほとんどのバンドは酷評を受け、衰退、あるいは解散に追い込まれていったのです。
しかし、それらのサウンドは本当にダメだったのでしょうか?結構良かったのにオールド・ウェイブの刻印を押されたり、初期からのファンに愛想をつかされたりしたバンドも多かったのではないでしょうか!?
邪心を捨て今聞くと、もしかしたらけっこうイケてるかもしれません。
今回はそういった「ポップ化したプログレ」や「プログレッシヴ・テイストを加味したロック」にスポットを当て曲を選定してみました。
1. Two Weeks In Spain/Gentle Giant 1977年
英の超技巧派プログレ集団であったジェントル・ジャイアントは、アメリカへ渡りポップ路線へ転向してからシングルを連発。これもその中の1つで、アルバム「The Missing Piece」の1曲目に入っていたもの。ポップな中にも彼らの個性を生かしたテクニカルな曲。
2. Invisible Touch/Genesis 1986年
フィル・コリンズ主導のもと、なんとか生き残っていたジェネシス末期の大ヒット曲。一応はメンバー3人の共作ですが、この曲が収録されている同名タイトルのアルバムでは、フィルが連れてきたプロデューサーやバック・ミュージシャンを起用し、もはや完全にフィル・コリンズのソロ・アルバムと化しています。
3. No Easy Answer/Camel 1982年
70年代の終わりには元キャラヴァンのメンバーが3人も加入し、もうキャメルだかキャラヴァンだか分からなくなっていました。その後、その3人も相次いで脱退すると、オリジナル・メンバーでギタリストのアンディ・ラティマーが実権を握り、豪華ゲストを迎えながらソロ色の高いアルバムを連発します。
この曲はアルバム「The Single Factor」より、ゲストに元パイロット〜アラン・パーソンズ・プロジェクトのデヴィット・ペイトン(ベース兼バック・ヴォーカル)を迎えた曲。
4. Real Man/Todd Rundgren 1975年
すでにプロデュサーやエンジニア、コンポーザー、マルチプレイヤーとして成功を遂げていた「ロックの神童」トッドが、自らのバンド「ユートピア」を引き連れ、プログレっぽいアプローチを始めていた頃のアルバム「未来神(Initiation)」より、トッドらしいポップな曲。
5. Desiree/Curved Air 1976年
初期には前衛的プログレ・サウンドだったカーヴド・エアーは、後期にはレコード会社に操られ、どんどんポップな方向へと突き進んで行きました。この曲はラスト・アルバムとなった「Airborne」より、シングルとしても出した1曲目。ドラマーは後にポリスを結成するスチュアート・コープランド。
6. When The Heart Rules The Mind/GTR 1986年
元イエス〜エイジアのスティーヴ・ハウ(g)と元ジェネシスのスティーヴ・ハケット(g)が手を組んだということで話題になったGTR。当然、こんな2大巨頭体制が長続きするはずもなく、アルバム1枚を残し解散。しかも、エイジアとあまり変わらない内容でした。それでもこの曲は全米14位まで上昇。
7. Supersonic/Jamiroquai 1999年
アシッド・ジャズから、自ら生み出したエレクトロ・ファンク・ロック・サウンドへと変貌を遂げ、大成功を収めたジャミロの4枚目のアルバム「Synkrobized」より、リーダーのJKの構想をついに実現させた自信作。
それまでも度々アボリジニ(オーストラリアの先住民)の民族楽器ディジリドゥを使い、プログレ的なアプローチを覗かせていましたが、ここでは彼らの主流であるファンキーな曲調とうまく一体化することに成功しています。
8. You're On Your Own/Journey 1976年
まだアメリカン・プログレと言われていた頃のセカンド・アルバム「未来への招待状(Look Into The Future)」より。ヴォーカルは元サンタナのグレッグ・ローリー、ドラムはジェフ・ベック・グループ〜フランク・ザッパ&マザーズのエインズレー・ダンバー。
9. Jack and Jill/Caravan 1976年
彼らのアルバム中もっともセールス的に成功したアルバム「聖ダンスタンス通りの盲犬」は、キャラヴァンのメンバー中、一番ポップなセンスを持っていたパイ・ヘイスティングが、他の主要メンバーの脱退により、自らの才能を存分に開花させた名作でもあります。その中でも、最もポップさとユーモアにあふれた曲。
10.Diamonds And Pearls/Kansas 1982年
主要オリジナル・メンバーであり、リード・ヴォーカリストでもあったスティーヴ・ウォルシュの脱退は、彼らの人気を大幅にダウンさせましたが、その時期のアルバムも内容的には決して悪くはありません。この曲はアルバム「Vinyl Confessions」の収録曲で、TOTOを想わせるサウンド・アプローチが時代を象徴しているものの、複雑な曲構成やコーラス・ワークなどはとてもカンサスらしさを感じるナンバーです。
11.Cover My Eyes(Pain And Pain)/Maillion 1991年
ネオ・プログレッシヴの旗手マリリオンが、初代ヴォーカリストのフィッシュを欠き、迷走していた頃のアルバム「楽園への憧憬(Holidays In Eden)」より、シングル・カットしたヒット・ナンバー。この時期はかつてないほどシングルを連発しましたが、これらのヒットにより、バンドの勢いは継続し後期の名盤「ブレイヴ」を生むきっかけとなりました。
12.The Logical Song/Roger Hodgson 1997年
オリジナルは、ご存じスーパートランプが79年に放った大ヒット曲。アルバム「ブレックファースト・イン・アメリカ」に収められていました。
ここではスーパートランプ脱退後、一時はイエス加入も噂されたロジャー・ホジソン(vo,g)が、息子のアンドリューを含んだ自身のバンドで行ったカリフォルニアでのライヴからの録音。スーパートランプはデビュー当時から一貫してポップであり、70年代末期には時代が彼らに追いついて自然に大ヒットしたとも言えます。
しかし、スーパートランプはやはりこの声でないと・・・。
13.Aladdin Sane/David Bowie 1973年
70〜80年代、あらゆる音楽をクロスオーヴァーさせ、常にロック界のサウンドをリードしてきたボウイ。当然のごとくプログレ的アプローチの曲も存在します。この曲は、アルバム「アラジン・セイン」のタイトル・ソング。前衛的なピアノが印象的です。
14.Steel Monkey/Jethro Tull 1987年
アルバム「Crest Of A Knave」より。
アメリカでは昔から、ジェスロ・タルはハードロック・バンドという認識がなされていたらしく、このアルバムでのハードなアプローチに、タルがロックシーンの表舞台に戻ってきたと歓迎し、グラミー賞第一回ヘヴィメタル部門賞を贈りました。
15.Put Me On/Styx 1976年
トミー・ショウ(g,vo)加入後初のアルバム「Crystal Ball」のオープニングを飾るデニス・デ・ヤング、ジェームス・ヤング、トミー・ショウの共作ナンバー。バラードの名手デニス、ハードロック好きなジェームス、ポップなトミーの個性がうまく合体した名曲。その後のスティクス・サウンドを凝縮したような曲でもあります。途中に入るSweetのパクリはご愛敬。
16.Return To Fantasy/Uriah Heep 1975年
アルバム「幻想の回帰(Return To Fantasy)」のタイトル曲。元キング・クリムゾンのジョン・ウェットン(b)が加入して話題騒然の中放ったヒット曲。当のウェットンは、曲を書くでもなく、すごいプレイをするでもなく、ほとんどバンドに貢献することなくアルバム2枚で脱退。彼がヒープにもたらしたものは、バンド内の人間関係を悪化させたただけでした。